事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「教養としての世界宗教史」 島田裕巳著 宝島社

2020-08-04 | 本と雑誌

前書きにコロナへの言及があるくらい、バリバリの新刊です。

世界の宗教情勢がどんなものなのかを概括。いかに自分が外国の宗教について知らないかを痛感。カトリックとプロテスタントの違いは(なんとなく)知ってはいても、ヒンドゥー教が仏教を丸のみにすることでインドで広がったなんて話はまったく知りませんでした。

一神教と多神教のもっとも大きな違いが偶像崇拝を認めるか、だとか(だから仏教は仏像つくり放題)、スクのなかには“神”を示すものが何もないとか、たいがいの日本人は知らないのではないか。

思えば高校生のころに、大乗仏教と小乗仏教の違いなんて授業は受けたけれども、さっぱり理解できなかった。いまなら、歴史と宗教が密接に結びついていることが(さまざまな事件によって)想像はできる。

島田裕巳はオウムがらみで毀誉褒貶が激しい人だけれども、長寿化によって人間に宗教は不要になっていくのではないかという考察にはうなった。明日をも知れないからこそ人は神にすがるのであり、その覚悟がなくなれば確かに宗教を人は捨てるようになるのかもしれない。

わたしは最初から無宗教?島田はこうも指摘する。日本人は確かに一神教のたぐいには無縁な人が多いけれども、神道と仏教が奇妙に混合するこの国では、初詣や盆帰りなど、季節の習俗が密接に宗教とからんでいるのだと。

だからこそ、世界人口の30%を占めるキリスト教徒が、日本ではわずか1.5%しかいないし、イスラム教徒にいたっては、その信者と結婚でもしないかぎり入信する人はいないだろうというわけだ。

宗教が政治とも無縁ではない事情も語られる。モンゴル人による国家、元がなぜあれほど版図を広げることができたかの一因が、彼らが原始的な宗教しかもっていなかったので、他民族に自分の宗教を押しつけなかったからだと。そして、広大な国家のなかで、東西の宗教は混じりあうことになった……ああ本当にお勉強になったのでした。

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「濱地健三郎の幽たる事件簿」 有栖川有栖著 角川書店

2020-08-03 | ミステリ

前作「霊なる事件簿」よりもはるかに面白く読ませてもらった。

主人公は霊も事件の真相も視える名探偵なわけだが、そんなトリッキーな設定なのにきちんと本格、という色彩がグッと強まっているから。

作家アリス学生アリスに次ぐシリーズとして歓迎。同学年の有栖川ももう還暦。長生きしてもっともっと楽しませてください。わたしもがんばります(笑)

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勝手に人生相談Vol.41 コロナの怒り

2020-08-02 | 日記・エッセイ・コラム

Poco- Crazy Love

Vol.40「夢見る失楽園」はこちら

70代の無職男性。趣味で参加している団体が、新型コロナウイルスの影響で長い間、活動を休止しています。会費を払いたくありません。

NPOの童謡コーラスサークルで、仲間と楽しく活動していました。ところが、新型コロナウイルスの感染が拡大し始めた頃から、やむを得ず活動は休止となっています。

活動していない期間のうち、1か月分の月謝は無料になりました。それ以外の分についても、今後、何らかの形で埋め合わせをするとのことです。しかし、今後については、継続的に正規の金額の月謝を納入するようにとサークル側から言われました。納得できません。

月謝は会の運営のために必要なのだ、というのがサークル側の主張です。「意に沿わなければ、退会してください」とまで言われました。

なんの活動もしていないのに、無給の指導員を我々高齢者がサポートしなければいけないんでしょうか?アドバイスをお願いします。(S男)

……コロナの世の中で、コーラスという楽しみが制限されることが仕方のないことだとはご理解いただけているようです。飛沫が主な感染源だと考えれば当然ですよね。そのため、サークルの運営側はさぞや苦労しているはずです。1か月分の月謝が無料になり、なんらかの形で埋め合わせはするというのは最大の譲歩に思えます。

しかしあなたはそれを許せない。

あなた、ひょっとして道をマスクをしないで歩いている人に腹を立てていませんか。

“接待を伴う飲食業”で感染する人たちに激高していませんか。

外国人の入国を阻止したいと考えていませんか。

他県のクルマを汚らわしいと思っていませんか。

自粛警察に理解を示したりしていませんか。

現状を考えれば、わたしたちはみんな不安や不満をかかえて生きています。どこかでそれを吐き出さなくてはがまんできないのもわからないではありません。

しかし、無給で運営しているスタッフが退会をうながすような回答をするくらい、あなたは舌鋒鋭く口撃したようだ。

高齢者は若いものに守られるべき、という大前提があなたにはあるようですが、高齢者として、穏やかに若いものを支えてあげていただけないでしょうか。

本日の1曲はポコの「クレイジー・ラブ」そうかこのバンドにはジム・メッシーナやランディ・マイズナーやティモシー・B・シュミットもいたのかあ。それってロギンス&メッシーナとイーグルスの合体ってこと?

Vol.42「そばにいるだけで」につづく

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ほりぃ散歩Vol.19 丸池様

2020-08-01 | まち歩き

Vol.18「東沢バラ公園」篇はこちら

このシリーズ、二年ぶり。いかにわたしが観光に興味が無いか。Go To?行かねーよどこにも。

というわけにもさすがにいかず、米沢から帰ってきた娘を妻が焚きつけ、遊佐の丸池様に行こうと。丸池様?知らないなあ。

息子も「じゃー俺も行く」ということなのでナビらせる。

わたしは遊佐町に十年間勤務した。この丸池様も学区だった。でもその存在を誰も教えてくれませんでした(笑)。こんなに奇妙な色合いの池があったなんて。この地区は水が冷たいので米がうまいんですよ実際に。

池自体が信仰の対象。どうやらパワースポットとして高名になったらしく、県外車がいっぱい。

え。と思う。美しいのはもちろんだけど、なんか異様なの。もっと前から見たかったなあ。SNSで紹介したら

「梅花藻!」

と指摘が。バイカモって何?そんなことも誰も教えてくれませんでした。おれは十年間嫌われてたのか(T_T)

Vol.20「聖火ランナー」につづく

コメント (2)
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「ノッキンオン・ロックドドア」 青崎有吾著 徳間文庫

2020-08-01 | ミステリ

初めて読む作家。おやおや面白かった。不可能犯罪専門の探偵と不可解犯罪専門の探偵。このふたりが協力しあって……というわけでもないあたりが笑える。どちらがホームズでどちらがワトソンというわけでもなく、どちらも優秀なようでもあり、割れ鍋に綴じ蓋的でもある。

もちろんタイトルはボブ・ディランの「天国への扉」Knockin' on Heaven's Doorをいただいているわけだから、邦題にすれば「密室への扉」になる。どうやら続篇も出ている様子。そっちも読もう

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