5月4日、政府は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が終息状況にないとして、本日6日に期限を迎える「緊急事態宣言」を今月31日まで延長すると発表した。
「基本的対処方針」では、緊急事態措置を実施する必要がなくなったと認められる時は、期間内であっても速やかに解除するとしているが、東京や大阪など13の「特定警戒都道府県」では、これまでと同様の行動制限が求められ、引き続き、医療機関への通院、食料・医薬品・生活必需品の買い出し、必要な職場への出勤、屋外での運動や散歩など以外は外出自粛を要請し、「接触機会の8割削減」の目標を掲げている。それ以外の県では、「3つの密」を避け、手洗いや人と人の距離の確保といった基本的な対策の継続など「新しい生活様式」を徹底することを前提に、制限の一部を緩和するとしている。
「緊急事態宣言」の延長が与える影響は大きい。昨日は「こどもの日」であったが、鯉のぼりをほとんどみかけない寂しい日であった。学校は3月初めから休校で、自治体によっては更に延長で5月末までに。子供達はストレスとの闘いがまだ続く。親御さんも大変な日々を過ごしておられ、さぞご心労のことと拝察申し上げたい。
店舗や企業の経営者も困惑している。休業要請に従っても行政からの支援策は十分でなく、やむなく経営を継続する店舗には「自粛警察」と呼ばれる嫌がらせや中傷が多発するなど、周囲のから自粛圧力に悩まされている。私が以前、経営コンサルタントとして指導していた頃にクライアントであった企業は、法人破産の手続きを行ったところもあると聞いた。経営が成り立たない状況で緊急事態宣言の延長が報じられ倒産や自殺が増えてきているのは、「目の前の厳しい現実」である。
経営者だけではなく、当然働く人々にも影響が大きい。派遣切り、雇い止め、内定取り消、自宅待機・・・収入減どころか、まったく収入がなくなってしまった方々も大勢いる中での延長。国からの給付金もいつ貰えるかも分からない。明日の生活に困っている方々がたくさんいる。一方、様々な苦労はあっても給料が減ることなく在宅で勤務している方々もいる。私の妹は、外資系の企業に勤めるカリフォルニア州公認の会計士だが、3月からずっと実家でテレワークであり一度も出社していないと言う。同居する高齢の親を守ってくれていることに感謝したい。他の方々を含めて在宅勤務は、今後定着していくのではないかと思う。
私の本業は会社員である。一昨年の暮れに癌の手術をしていることから、感染すると重篤化する危険性があるとして、会社からの指示で4月1日から自宅待機になった。1日と4日は少々外出したが、それ以外の日はすべて犬の散歩とコンビニへの買い物だけに留め、このゴールデンウイークも STAY HOME を守り通した。新宿の動物病院に勤める長女と地元スーパーに努める長男は通常勤務で、私も心配しながらの毎日。霞が関の東京第二弁護士会に努める家内は、緊急事態宣言が出されてからは自宅待機になり、共に自宅で過ごした。夫婦がこれだけ長い時間一緒にいたことは、結婚29年で初めてかもしれない。一人より二人。二人より大勢。日本人は、他人がどうしようと自分は自分だという欧米人と違い、「一般的に他の人と同じ行動をとっていれば安心する」傾向がある。行動経済学における「バンドワゴン効果」とか「同調効果」等と呼ばれる心理現象だが、大勢が外出自粛をしていることに不安も和らいだ。
しかしながら私は、4月27日からは出勤要請があり、自宅から40km先の都内に出勤し通常業務に当たっている。デスクワークではないから、毎日一日中外である。40~50ほどのオフィスビルに出入りする。時にはコロナ患者が入院している病院にも行かねばならない。「密閉」「密接」「接触」が避けられず感染リスクが医療従事者に次いで高い職種と言われているが、社会的インフラとしての仕事をこなして、人々の生活を支えなければならない。私が自宅待機している間も懸命に仕事をしていた仲間がおり、他にも大勢頑張って仕事をしている方々がいる。医療従事者も含めて大勢の方々に敬意を表しながら、私自身もまた7日から仕事に行く。
「緊急事態宣言」の延長は予想されてはいたものの、やはり6日での解除を願っていた人々は少なくないと思う。延長の発表とともに落胆があっただろう。それは「ストックデールの逆説」に似ている。
ストックデールとは、ベトナム戦争時捕虜として8年を過ごしたアメリカの元軍人のことである。彼は生き残ったが、誤った楽観主義にしがみついていた捕虜たちは生き残れなかったという。捕虜たちは
「クリスマスまでに解放される」と言って、クリスマスが来て去っていった。すると「イースターまでには解放される」と言っていた。イースターも過ぎていった。次はサンクスギビング、そしてまたクリスマス。彼らは失意で亡くなっていったという。自分が生き延びられたのは、揺らがぬ将来への希望を、確固たる現実主義と組み合わせることができた能力のお陰だと言い、今日では「ストックデールの逆説」と呼ばれている。
もし、6日で「緊急事態宣言」解除されると信じていたなら、また解除後は以前と変わらない社会に戻れると信じていたなら、それは解放されると信じ続けた捕虜たちと同じで、延長とともに失望へつながる。「最後にはかならず勝つという確信を持ちながら、同時に自分がおかれている現実のなかでもっとも厳しい事実を直視すること」が重要であり、現実の直視から生まれた活力は、楽観視から生まれたそれよりもずっと長く続くというから、目の前の厳しい現実から目をそらさず、頑張るしかないのだろう。
とは言っても、新型コロナウイルスとの闘いは長期化することが確かであり、既に封じ込めることは困難だと専門家は言う。どんなに手を洗おうと、表面を除菌しようと、どれだけ自宅に籠っていたとしても、感染して死ぬ可能性はなくならないとも言っている。集団免疫率に到達すれば終息するが、新型コロナウイルスの基本再生産数(染した1人が何人に直接感染させるかという人数)は 1.4~2.5 と試算されているから、日本人の 29~60% が感染すれば終息に至ると理論上は考えられている。つまり、最低でもおよそ3,600万人が感染し、100万人が死ぬことになる計算だ。それを防ぐのは「ワクチン」しかない。今後は、ワクチンが開発されるまで、医療崩壊を防ぎながら高齢者や基礎疾患のある人たちを守っていくことが重要であり、その後はインフルエンザ同様に新型コロナウイルスとの「共生」となっていくだろう。
国と自治体には、十二分な対策を早急に講じてもらいたい。そして、我々は、各自に委ねられた「やるべきこと」をやらねばならない。
私の住む東京都は特定警戒地区であるから、これまで同様の自粛が求められるが、仕事をする以上、今後はこれまでと同じじっと耐え忍ぶ「自粛=我慢」はできない。そもそも自粛要請という「お願い」を強制すれば、営業の自由を法律の根拠なく不当に制限するものであり憲法違反になる。個人的に緊急事態を解除し要請を完全に無視して出歩いても法的には許されているが、倫理的・道義的にできない。そうかといってパラダイムシフトも不可能である。従って、政府に忖度してしまっている専門家会議が、制限が緩和された県に提言した「新しい生活様式」を参考にしつつ、実情に合わせた自分なりの「ライフスタイルの形態」を構築し、感染拡大防止を大前提とした具体的な基本事項を自ら決めて遵守していくのが良いと考える。
平日については、ここで明言することは止めておくが、私にとって会社業務同様に重要な「ホタル」に関して記しておきたい。ホタルの研究および保全指導はライフワークであり、NPO等団体役員でもある。また早急な自然保全・再生も必要なことから、それに関連するすべての活動(越境を含む観察・撮影・指導等)は自粛要請対象外の事業と位置づけ、基本事項を遵守しながら活動を5月16日(土)から再開するが、既に予約済の案件や5月下旬に予定している遠征を除き、私が休日に行う全ての活動は「緊急事態宣言」が解除されても今年1年は「3つの密」を避けるために、私的なものも含めて、例外なくパートナーを一切伴わない単独で行うこととしたい。
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浄連の滝
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F13 0.5秒 ISO 100 -1EV(撮影地:静岡県伊豆市湯ヶ島 2012.1.02)
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