3日間連続のフグ目・モンガラカワハギ科魚類の記事。今回はキヘリモンガラ属のイソモンガラ。キヘリモンガラは2日前にご紹介しており、これで日本産キヘリモンガラ属の全種がこのぶろぐに登場ということになる。
イソモンガラの分布は非常に広く、紅海・東アフリカ~ソシエティ諸島までのインド—中央太平洋に生息する。日本においては神奈川県以南の太平洋岸で見られるが、少なくとも九州以北においてはキヘリモンガラよりもかなり少ないように思われる。ただし四国や紀伊半島など、温暖な地域ではときに成魚に近いような個体が定置網などにより漁獲される。分布の中心はサンゴ礁であり、本種も熱帯性の種であると思われる。キヘリモンガラなどの幼魚は流れ藻などの浮遊物について広い範囲を旅するが、本種はそのように流れ藻について旅をしたなどという話は聞かない。キヘリモンガラより少ない理由はそこなのかもしれない。
イソモンガラの頭部
キヘリモンガラ属の種の特徴として、吻部には鱗がないことがあげられる。本種もやはり吻部に鱗がない。この仲間はサンゴ礁の死サンゴの上などに巣をつくり産卵するようで、巣の卵を守っている個体は攻撃的になり、ヒトにも向かってくる。さらに写真には写っていないものの、強い歯をもっており、咬まれるとけがをするおそれもあるなど、結構危険な魚であるので注意したい。この歯で魚や甲殻類、軟体動物、棘皮動物のほか、サンゴやカイメンなども食べるようである。
イソモンガラの尾鰭
色彩は写真ではグレーの残念な体色になってしまっているが、生きているとき、体色は鮮やかな青色となっている。そのため英語ではBlue triggerfishと呼ばれている。幼魚は非常に小さいうちはキヘリモンガラの稚魚に青い点を散らしたような色彩で、やや大きくなると黄色い体になり、体側に目立つ青い線が入るようになる。やがて体色は青い部分が多くなるが、黄色い斑点がちりばめられるような段階もある。そのため英語ではYellow-spotted triggerfishと呼ばれることもあり、Fishbaseでのコモンネームはこちらとなっている。この個体は黄色い斑点がちりばめられている段階のものである。なお、海外の画像サイトではBlue triggerfishとしている写真になぜかアカモンガラの写真が使用されていることがある。この場合は尾鰭を見たら簡単に見分けられる。イソモンガラの尾鰭は湾入し、尾鰭の中央が突き出る二重湾入形なのに対し、アカモンガラはルナーテールと呼ばれる三日月のような尾鰭をしている。イソモンガラは水族館ではよく飼育されているが、全長60cmくらいになるので、よほど好きなアクアリストでないと、家庭での飼育はできないだろう。食用となり市場でもまれにみられるというが、内臓は毒化する危険性もあり、注意が必要。
今回の個体は宮崎の「あらら」さんが石垣島の海人さんにいただいたものをお願いして入手したものである。ありがとうございます。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます