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以前このぶろぐでも紹介してきた魚。今回は久しぶりに入手したので、記念に。
最初に写真を見たときは、ウナギ目ホラアナゴ科のコンゴウアナゴという魚(ちなみにホラアナゴ科の魚は一度もこのぶろぐには登場していない)と思ったのだが、よく見るとソコギス目・ソコギス科・キツネソコギス科のクロソコギスであることが判明。
ウナギ目やソコギス目と近縁なソトイワシの仲間の鰭は軟条で構成されるが、このソコギスの仲間は立派な棘を有しているのである。
クロソコギスの背鰭
背鰭は5~12棘で、軟条はない。背鰭に軟条部がないことで近縁のタヌキソコギス属と区別できる。日本産キツネソコギス属は2種が知られており、キツネソコギスは背鰭棘数が12~15であることで本種と区別できる。では12棘の場合、どちらに同定すればいいのか悩むが、今回の個体は痕跡的なものを含め10棘であり、本種と同定できた。一方科の和名になっているソコギスは背鰭に26~40棘もあるというのだから驚きだ。
クロソコギスの臀鰭
臀鰭にも13~21の棘をもつ。なお、今回の個体は吻の部分を損傷しており、頭を右に向けて撮影したものを左右反転している。
分布は広く千島列島~房総沖までの太平洋岸、北太平洋、大西洋。しかし日本国内ではあまり暖かい海では見られないようで、そのような場所には同属のキツネソコギスが生息する。キツネソコギスは青森県~土佐湾までの太平洋岸と沖縄舟状海盆、太平洋に分布し、クロソコギスよりも南方系といえそうである。
ソコギス目の魚はほとんどが深海性。トカゲギスの仲間は深海底にいる様子を撮影したものが書籍やテレビなどでも見られるが、本種も水深3000mまでの深海に生息している。しかしながらクロソコギスは比較的浅い場所にも出現することもあるようで、検索図鑑によれば水深125mほどの場所でも漁獲されている。漁法は刺網や底曳網。
基本的に食用にされることがないソコギスの仲間。そもそも深海性でめったに出会えない種類の魚である。しかし、見た感じは安いアナゴのかば焼きに使われていることもある、イラコアナゴという魚にもよく似ており、今回は食してみることに。まずさばいてみる。この個体は雌であったのだが、卵の様子がゴテンアナゴなどのウナギ目魚類そっくりであった。ちなみにソコギスの仲間もウナギ目同様、レプトケパルス期を経て大きくなるらしい。
ウナギ・アナゴといえばかば焼きであるが、今回はあえて白焼き。
そして唐揚げ。
味は本物のアナゴに似た感じで極めて美味であったが、かなり脂っこくその辺は好き嫌いが分かれるかもしれない。次回また機会があったらほかの料理も試してみたいものだ。なお前回のツマグロカジカと一緒に煮て食べたのは本種ではなく、別の魚、北の海で細長い底生の魚といえば、あの魚だ。またのちの機会にご紹介したい。なお昨日月曜日にも素晴らしい魚が届いたのだが、これの紹介はまた後になるかもしれない。魚に触れるのは楽しいことだが、やらなければならないことも多いのだ。
今回のクロソコギスは坂口太一さんより。ありがとうございます。
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