サンゴには、色々な分け方ができます。分類学上は関係ない、一致しないものもありますが、骨格をもつ「ハード・コーラル」、骨格を持たない「ソフトコーラル」という分け方もできますし、体に「褐中藻」というものを共生させて光合成する「好日性サンゴ」、この褐中藻がなく、栄養を捕食にたよる「陰日性サンゴ」という分け方もできます。
陰日性サンゴには、イソバナ、トゲトサカ、イボヤギ、キサンゴ、などの類があります。先に述べました通り、これらのサンゴには褐中藻がありませんので、栄養は捕食によって得るしかありません。そのためにはサンゴに「餌やり」が必要です。わが家にある2種の陰日性サンゴ(トゲトサカと、イボヤギ・キサンゴ)はどんなものを食べてるのかご紹介しましょう。
●餌の種類
キョーリンの「クリーンワムシ」。稚魚やサンゴなどに向いているプランクトンフード。ワムシ自体は古くから養殖魚の初期飼料として使われてきた。
餌の種類は、両方のサンゴともに違いはありません。キョーリンの「クリーンワムシ」をメインに与えています。同社の「クリーンコペポーダ」はやや大きめの感がありました、両方、使えます。ほかにも、使える商品がありそうです。
独H&S社の液状サンゴフード「マリンデラックス」。日本ではMMC企画レッドシー事業部から出ているもの。写真は100mlで一番小さなサイズ。最大で1000mlまである。冷蔵で保存する。
ワムシやコペポーダなど、肉眼でもなんとか確認できる餌のほか、液状の餌もあります。代表的で手に入りやすいものとしてはドイツのH&S社製の「マリンデラックス」というのがあります。これはプランクトンの成分を抽出した餌で保存料も入っていません。
このほか、
魚卵・・・魚を食べる目的でさばくときに中に入っていたりすることがあります。フグは当然として、ギンポ(タウエガジなど)の仲間には卵に毒があるものもあるため使用できません。
ヒロキューから出ている「生イキくん」。基本的には釣り用のもの。
オキアミ・乾燥オキアミ・・・いわゆる「クリル」。臭いがきわめて強いため、イボヤギやキサンゴなどによい餌です。ヒロキューの「生イキくん」など。なお、この手の餌は釣り餌用で、防腐剤やそのほかの成分が入っている場合もあり、薦められないものもあります。あくまでも自己責任で!不安な方は、乾燥オキアミがよいでしょう。これもいろいろなメーカーから出ています。
●準備
下準備として小さなプラスチックの入れ物に海水を少々入れ、その中でコペポーダやワムシを入れて溶かします。この時点でマリンデラックスを入れることもあります。また、魚卵などを入れる場合は、コペポーダ、ワムシ同様にここで溶かします。
上記の「クリーンワムシ」「生イキくん」「マリンデラックス」を海水に溶いたもの。
●給餌・・・トゲトサカ
トゲトサカの場合、ポリプが小さくわかりにくいですが、サンゴを覆うようについている小さなぶつぶつがとじているか、ひらいているかでわかります。これがポリプでもちろん、開いているときに与えます。
ポリプが閉じていてサンゴ自体も縮まっている様子。このときには与えない
サンゴのポリプが開いている様子
従来は水槽の上に直接凍ったままのコペポーダやワムシを与えていましたが、今では入れ物内で溶いたコペポーダやワムシをスポイトでとり、ポリプにふきかけるようにして与えています。従来のやり方よりもロスが出にくいのです。
給餌の様子。スポイトでサンゴのポリプに吹き付けるようにして与える。ロスが出ても、サツキハゼやハタタテハゼ属の魚が食べてくれるはず。
しかしロスはどうしても出てしまいます。ハゼやエビなどはこのロスした餌を好んで食べるようで、給餌のあとにこれらのお腹がパンパンに膨れていたなんてこともあります
●給餌・・・イボヤギ・キサンゴ
イボヤギ・キサンゴともに陰日性のサンゴで骨格を有する、いわゆる「ハードコーラル」です。トゲトサカに比べてポリプが非常に大きく、餌を与えやすいサンゴです。この2種はトゲトサカの類より飼育は容易、陰日性サンゴを初めて飼うのであればこの仲間がよいでしょう。
この仲間はトゲトサカの類とくらべると、ポリプをなかなか開いてくれません。まず、オキアミなどの強い餌を水中、なるべくこのイボヤギ・キサンゴに近いところでほぐします。すると数分後にはだんだん開いてきますので、その時に餌を与えます。餌はトゲトサカと同様で構いませんが、この仲間はもっと大きな餌も食べられます。ミンチにしたイワシ類などの魚の切り身、あるいはエビなどを与えても良いと思いますが、食べすぎはよくありません、ほどほどに。
また、ハードコーラルでは好日性サンゴも餌をとるものがいます。キクメイシ、タバネサンゴなど一部のハードコーラルがそれで、イボヤギ・キサンゴ同様のやり方で餌を食べます。