“Light Jazz”をモチーフに行われた芝華士醇音樂會。金牌(Gold Label)所属の歌手がライブで歌った曲をスタジオ録音したCDと、ライブの模様を収録したDVDのセットで発売された。(心配していたDVDのカラー方式はNTSCだったのでご安心を)
予告編で「CDとDVDの曲順が違うのはなぜ?」と不思議に思っていたが、スタジオ録音とライブ、音源が全然違ってたわけだ。なかなか面白いアイディアかも。CDだけに収録されている「你是如此難以忘記」は、移籍した楊千[女華](ミリアム・ヨン)の金牌最後の録音となった。
収録曲は全て自身の持ち歌ではない、カバー曲(ライブでは各自持ち歌も歌ったが、DVDには収録されていない)。曲とオリジナルを表にすると:
1.愛變了這世界襯衣 古巨基(レオ・クー) ― 杜徳偉(アレックス・トー)
2.認錯 RubberBand ― 優客李林(ウクレレ)
3.你是如此難以忘記 楊千[女華](ミリアム・ヨン) ― 梁朝偉(トニー・レオン)
4.祝君好 側田(ジャスティン) ― 張智霖(ジュリアン・チョン)
5.夜不再來 蘇永康(ウィリアム・ソー) ― 陳奕迅(イーソン・チャン)
6.自作多情 傅穎(テレサ・フー) ― 周慧敏(ヴィヴィアン・チョウ)
7.没有你還是愛你 唐素(チェルシー・トン) ― 林憶蓮(サンディ・ラム)
8.幾分傷心幾分痴 小肥(テレンス・シウフェイ) ― 王傑(デイブ・ウォン)
9.傾心 梁漢文(エドモンド・リョン) ― Raidas
10.愛與痛的邊縁 麗欣(ステフィ・タン) ― 王菲(フェイ・ウォン)
11.飛女正傳 呉雨霏(ケイリー・ン) ― 楊千[女華](ミリアム・ヨン)
12.吻感 方力申(アレックス・フォン) ― 鄭伊健(イーキン・チェン)
13.女人的弱點 建明(ジョーイ・タン) ― 葉[イ菁]文(サリー・イップ)
14.紅豆 鄭中基(ロナルド・チェン) ― 王菲(フェイ・ウォン)
DVDのみに収録の「花與琴的流星」は、ミュージカル「雪狼湖」から。古巨基と新人の唐素が、なかなかうまく歌いこなしていた。
この選曲、このメンバーで“Light Jazz”をどこまで体現できてるか、というとなかなか難しいものがあるが
(特にライブでは厳しい
)、なんといってもバックの音が素晴らしいので、みんな歌い始めはなんとなく普通にポップスの感覚で入っても、後半うまくのせられてジャズのテイストが出てくる感じ。プロデューサーの雷頌徳(マーク・ロイ)は今回演奏には参加していない。メンバーはピアノ:Ted Lo、ベース:Sylvain Gagnon、ドラム:Anthony Fernandes、ギター:Eugene Pao(包以正)、パーカッション:D.C. Wijesinha、サックス/フルート:Paulo Leviほか。やはり、Ted LoのピアノとEugene Paoのギターは惚れ惚れ、、、Sylvan Gagnonのベースも優しい暖かい音。Paulo Leviという人は初めて聴いたが、これも素敵な音を聴かせてくれている。
ライブではトップを務めた鄭中基、最近は歌の仕事が少なかったせいか、ちょっぴり照れくさそうだが、譚永麟トリビュート「誰可改變」でスイングジャズを歌いこなしたセンスは健在。蘇永康は一人ラテンのアレンジでノリノリ
建明もブルースっぽい渋い味を出していて、ボーカリストとしても存在感(ライブではギターを持たずに出てきたので、手持ち無沙汰そうにしているのが可笑しかった)。傅穎の「自作多情」は元は日本の歌謡曲だったと思われるが、日本の歌謡曲にジャズの要素があったことがわかって面白い。(昔、歌謡曲の伴奏をしていたバンドは、戦後のジャズのビッグバンドからスタートしたわけだし)
この企画では3組の新人が紹介されている。唐素は先輩たちより美人
線が細いけどきれいな声。小肥も繊細な、独特のセンスが感じられる。Tedたちミュージシャンに負けない見事な音を聴かせたRubberBand、どこで見つけてきたのか知りたい・・・
金牌というレーベル全体のコンセプトを表しているような企画。香港ポップスの伝統を大事に引き継いでいこうという意欲もにじむ。大スターはいないけれど、実力で一大勢力となった金牌、蘇永康がいるからというだけでなく、これからも目が離せない。