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張繼聰(ルイス・チョン)「張繼聰」(香港)

2006年06月11日 12時00分00秒 | CD紹介

 広東語の授業で、芸能関係の話題の中で先生が使った「平均」[ping gwan]という単語の意味が、日本語のいわゆる平均とはちょっと違っていた。広東語では“いろいろなことができる、オールラウンド”という意味があるらしく、芸能人なら“歌えて踊れて演技ができてルックスも良く品行方正”みたいな感じらしい。先生の意見では、「本当に“平均”といえるスターはやっぱり張國榮(レスリー・チャン/チョン)」。なるほど~。劉徳華(アンディ・ラウ)あたりはかなり近いレベルまでいってるかな?
 05年の新人の一人、張繼聰(ルイス・チョン)。自分で作詞・作曲、MVではダンスも演技もこなすという点では、広東語の“平均”を目指してる感じだが、そのレベルはまだ日本語の平均かも・・・ お世辞にも歌唱力があるとは言えない。声量はないし、音域も狭い。ヘビロテで聴いたら細かいアラが見えてきてつらくなりそう。。。なのに、なんだか気に入ってしまったのはなんでだろう?
 自分で歌いやすいように作っているので、比較的易しいメロディ。カラオケでみんなが歌いそうだ。音を厚くしたら声が負けるから、必然的に音数少なめのシンプルなアレンジ。たぶん、何度も歌ってうまく歌えた部分をつなげてまとめているんだろうけど、全体に丁寧に作っている雰囲気が感じられる。
 歌詞は「古著」を除いて全曲自作(「古著」の作詞・火火との共作を含む)。北京語詞も含めてそれなりにちゃんと韻も踏んでるし、ラップに近いような口調だけど“粗口”(スラング)でもない自然な語り口。小さい頃から子役で活躍、役者志望で香港演藝學院で演技を学んでるので、「烏蠅鏡」には俳優の名前をさりげなく入れたりしている。春先にヒットした「K型」はそっとつぶやくようなラブソング。恋敵に逆立ちしても勝てない片思いをウサギと亀の亀にたとえた「烏龜」。今ヒットチャート上昇中の「囉唆」は「ぶつぶつ言う」という意味だが、忘れっぽい恋人のために、パスワードを覚え支払い期日を教えスーパーのスタンプを貯めて世話をやく。香港の男は女の子に尽くすと聞いてたけど、そこまでするか~ 最後は流行の語呂合わせ、「將...繼...衝」[jeung gai chung]は自分の名前とほぼ同じ発音。將…将来/繼…続ける/衝…ぶつかる・立ち向かう→これからもがんばるから応援してね!というファンに捧げる歌になった。
 彼を音楽の道に引き入れたプロデューサーは林健華(ジョーンズ・ラム)。POP ASIA No.62のインタビューによると、張繼聰は演藝學院を卒業するころに大失恋をして曲を書き始め、そのころに林健華と出会ったのだそうだ。2年ほど彼について音楽関係のいろいろな仕事を学びながら、ほかの歌手に曲を提供したりして、デビューのチャンスを待っていたらしい。「自作自樂」に収録されたデモを歌ったのもその時期。張繼聰の魅力を引き出した林健華の手腕はなかなかだ。
 たぶん、彼の魅力は歌の背景にあるものなんだろう。物語を作って語る力、人物を演じる力。“表演藝術”が大好きと言うルイスの、表現したい欲求がうまく歌にのったとき、人に気持ちにすっと入ってくる歌になる。歌そのものの上手下手の先にある部分が、彼の歌の真髄かもしれない。(とはいっても、多少は上達してよね~)
 謝辞を見たら、「05年の新人のみんな、特に同同と[艸/宛]之」なんて書いてある。方大同王[艸/宛]之、ほかの歌手に提供する曲も、自分で歌う曲も、今香港で確実に人気があるシンガーソングライターたち。同期がいい音楽仲間になったようだ。そういえば「烏蠅鏡」リミックスでフィーチャーしてる謝安(ケイ・ツェ)の名前がない。普通、フィーチャーした人の名前くらい謝辞に出すだろう、、、と思いながら最後まで読んだら、「感激支持我、幇助我、愛我的毎一個、同埋我愛的那一個。」とあった。YesAsiaの紹介には「社内恋愛中(?)」とあったし、、、あ、そういうこと
 音楽では自分が主役になれるところが好きというルイス、演技のほうもちょっと見てみたい。歌手がやたらと映画やドラマに出るのがいいのかどうかといつもは思うが、この人には挑戦してみてほしい。自分の歌のMVじゃなく、与えられた役で存在感が出せる役者になれたら、本当に“平均”になれる日がくるかも。
張繼聰 @YesAsia.com

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