NHK杯優勝でグランプリファイナル2014に進出を決めていた、女子シングルのグレイシー・ゴールド(アメリカ)が、左足の疲労骨折のため辞退。かわって補欠1番手の本郷理華が出場することになった。
英文記事によると、NHK杯のとき左足に痛みがあったが、"a strain"(筋違え)か"tendonitis"(腱炎)だと思っていたという。念のためにCTとMRI検査をしたところ、左足に"a stress fracture in the cuboid bone"(立方骨に疲労骨折)があることがわかったそうだ。
stressといえば、精神的なストレスを思い浮かべるけど、物理的に力が加わる圧力もそうなのか。なるほど
腫れやあざはなく、一番痛むのは歩くとき。スケーティングはそれほど痛くなく、ジャンプ抜きでプログラムの通しをやったり、プールで運動したり、ウォーキングブーツでリンクの周囲を歩いたりしているとか。
全米選手権、そして世界選手権に備えてこれ以上悪くしないための辞退。「(スケートアメリカでは1位2位がロシア勢だったから?)ロシア勢と戦って挽回したかった、グランプリファイナルのメダルも獲りたかった」そうだが、ここはしっかり治療してもらって、シーズン後半に万全の状態で出てくることを期待しよう。
本郷理華は「いただいたチャンスを生かせるよう精いっぱい頑張ります」とコメント。ジュニアでもファイナルに進出したことはなかったので、とてもいい経験になるだろう。のびのび自分の演技をしておいで
3年前に0.03点の奇蹟でファイナルへの切符を掴み取った羽生結弦。今回のファイナル進出は0.15点の拾いもの、とでも言えばいいだろうか。
NHK杯3位以内なら他の選手の順位・スコアに関わらず、自力でファイナル進出が可能だった。SP5位と出遅れたけど、3位狙いなら十分いけると思ったが、、、
フリー得点151.79、合計で229.80。4人を残してトップには立ったが、中国杯よりも低い得点に終わった。これは厳しい
ヴォロノフはロステレコム杯ほどの出来ではなかったが、フリー157.52、合計236.65。羽生は暫定2位。
村上大介がキャリア最高の演技でフリー166.39、合計246.07。暫定1位であと2人、表彰台を確定させる。羽生は暫定3位。
ジェレミー・アボットはSP得点81.51。フリーで148.29以下なら、羽生のほうが上になるが 今季はスケートアメリカで137.51だったが、つい8ヶ月前の世界選手権では166.68を出している選手だ。SPもよかったし、148なんて余裕だろう・・・
羽生がこの得点で5位となった場合、ポイントは2位13+5位7で20。ジェイソン・ブラウンが同じ2位+5位の20ポイントで、得点合計が469.73。羽生は467.35だから、5位では進出できない。
という状況で、アボットの演技。4回転予定が3回転になり、トリプルアクセル2本目がステップアウトでコンビネーションにできず+REP(基礎点0.7倍)、最後のルッツがダブルに。とはいえ転倒はないし、スケーティングは美しいし、まあ150点は出るだろうと思っていた。
148.14
最終滑走の無良崇人、フリー148.16、合計234.44、3位。1位15+3位11の26ポイントでファイナル進出確定。
そして羽生は4位となり、2位13+4位9の22ポイントで、ファイナルに滑り込んだ。
アボットは5位7ポイントを持ってNHK杯に臨んでいた。優勝すればファイナル進出の可能性もなくはなかったが、それをこの大会の目標としてはいない感じだった。SP後の会見でも「フリーで抜かれても仕方ないが、できたらこの位置をキープしたい」みたいな話だったし
フリーの演技構成点は83.86、11人中トップ(羽生は82.48で2番目)。しかし技術点が64.28、なんと11人中9番目。
ジャッジスコアを見ると、やはり多くの選手が4回転とトリプルアクセルをある程度決めていて、アボットは4回転なし・トリプルアクセル1本が+REPというあたりが弱い。ジャンプ合計では49.19点。羽生は52.58点、転倒の減点1.00を含めれば51.58点。転倒なくまとまったようでも、案外稼げていない。
奇特なことに、ステップとコレオシークエンスは、2人ともまったく同じ点数だった。ステップはレベル3でGOE0.93、コレオシークエンスのGOE1.00。
しかしスピンは大きな差がついた。羽生はフライング足換えコンビネーション3姿勢レベル3、フライング足換えシット・レベル4、足換えコンビネーション3姿勢レベル3で基礎点はどれも3.00、GOEは3つとも0.50、あわせて10.50点を獲得した。
一方アボットは、フライングアップライト・レベル3で基礎点2.40、足換えシット・レベル2で基礎点2.30、足換えコンビネーション2姿勢レベル2で基礎点1.80、GOEは0.43~0.50であわせて7.86どまり。
コンビネーションだとレベル3でも基礎点が3.0あるが、単一姿勢だとレベル4で2.90(フライングアップライト)とか3.0(足換えシット)。確実にレベルを取らないと高得点にならない。そしてコンビネーションで3姿勢が認められなかった分、また基礎点が下がってしまった。
最後のスピンで「なんかぎくしゃくしてる」と感じたけど、厳しく判定されてしまったようだ。
それにしても、0.03点だの0.15点だの、もう運としかいいようのない部分をつかむ力は、何なんだ あまりに出来すぎた展開に、ジャッジに疑問をもつ向きもあるようだが
それでもルッツがトリプルだったら、スピンが1つでもレベルが上がってたら、アボットが上だった。演技構成点も世界選手権ほどではなかったが、フリー160.12点だったソチ五輪よりは高いから、不当とは言えないだろう。
オリンピック、世界選手権と、羽生は大きな山の頂点に立った。今、いったん山から下りた。
思えば0.03点の差でグランプリファイナルに滑り込んだ頃から、ひたすら昇ってきたのだから、またその地点から昇っていくだけだ。
あわてずに一歩一歩、行けばいい