- - 生まれたときに突然、なぜだかわからないが、自分が富と権力のなかに据えられているのを見いだす。それらは、かれに由来したものでないから、本来のかれとはなんの関係もない。それは、他の人間、他の生物、つまりは彼の祖先の残した巨大な甲冑である。しかも、かれは相続者として生きなければならない、つまり、他の生に属する甲冑を鎧わなければならない。そこで、どういうことになるだろうか。世襲<貴族>は、かれの生を生きるのか、それとも、初代の傑物の生を生きるのか。そのどちらでもない。かれは、他人を演じる運命、したがって他人でもなく、かれ自身でもない運命をしょわされている。かれの生はいやおうなく、真実性を失い、他の生を演ずる生、あるいは他の生に似せた生となる。義務としてかれが扱わなければならない財産はあまりに多いので、かれは本当の個人的な運命を生きることをさまたげられ、かれの生は萎縮させられてしまう。 - -
オルテガ、『大衆の反逆』 11 <慢心した坊ちゃん>の時代
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世襲・貴族・初代の傑物・義務・演技・生の萎縮.... シンドイよ。