笠井尚著の『白虎隊探究』が話題になっているのは、崇高な価値に殉じた少年たちの死が、ようやく見直されつつあるからだろう。白虎隊といえば、悲劇の主人公として語られるのが戦後の風潮であった。戊辰戦争の悲惨さばかりが強調されてきた。しかし、『白虎隊探究』が世に出たことで、会津教学が取り上げられたことで、日本人の大事なものを取り戻そうとする動きが顕在化しつつある。どこの国であろうとも、祖国を守るために倒れた者たちに、哀悼の意を示すのが普通である。不幸なことに我が国の戦後はそうではなかった、先の戦争で亡くなった者たちは犬死にといわれ、靖国神社は「戦争神社」と呼ばれたりしている。会津教学を論じる必要性については、生前の小室直樹が絶えず主張していた。県立会津高校を卒業した小室は、会津の教学にも造詣が深く、その片鱗は『日本人のための宗教原論』からもうかがい知ることができる。笠井のような在野の研究家であっても、会津という大地に根をおろしていれば、会津教学を語ることができるのである。白虎隊の戦いを回顧するだけではなく、なぜに死ななければなかったかを、精神性の高さから探究することが、今ほど求められている時代はないのである。しかも、そこでは松永材の『白虎精神 明治維新の教訓』や葦津珍彦の『武士道「戦闘者の精神」』も参考にしている。三島由紀夫は「命よりも大切なもの」があるとの言葉を残して自刃した。「命より大切なもの」を考える上で『白虎隊探究』が一つのきっかけになるように思えてならない。
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