北海道で行方不明であった田野岡大和君が6日ぶりに保護された。小学二年生でよくぞ頑張ったものである▼柳田国男の『山の人生』では「村々の隣に遠く野山の多い地方では、取分けて比類の神隠しが頻繁で、哀れなることには隠された者の半数は、永遠に還って来なかった」と書いている。今回の場合は躾のためであったようだが、理由もわからないままに、突然姿を消した子供たちがいたのである▼柳田自身が幼い頃に不思議な体験をした。4歳というから大和君よりも年少である。弟が生まれたことで機嫌が悪い子供であったという。何かに憑かれたように家を飛びだしてしまい、神隠し一歩手前のことを行ったのである。道を歩いていて、たまたま顔見知りにばったり会って、連れ戻されたのである▼大和君は自衛隊の演習場内の小屋で発見された。マスコミ関係者は何をしていたのかを聞き出そうとして必死である。昔の日本人は、そうした子供の言葉に異常な関心を示した。幽界の話でもしてくれるのでは、と期待したのである▼平成の今の世にあってはそれはないと思うが、一躍スターになったことは確かである。親とはぐれてしまったらば、子供は泣き疲れるのが普通である。大和君には柳田と似た気質が備わっているのだろうか。警察は自衛隊が捜索をあきらめようとした矢先に、大和君は見つかったのである。ひょっこり出てきたような印象を抱いてしまう。大人にはうかがい知れないような何かが、子供にはあるような気がしてならない。
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