反岸田色を鮮明にした岩盤保守が岸田首相に引導を渡すのである。広島サミットがあったにもかかわらず、岸田内閣の支持率は急落し、当初予定していた解散総選挙も遠のいてしまったのでないか。
逆に左翼はおおむね岸田内閣に対して好意的であった。LGBT法案を成立させたことや、夢物語の「核なき世界」の主張には、一定程度の理解を示したのではないか。
しかし、岩盤保守は違う。裏切られたという思いから、反岸田の急先鋒と化したのである。この動きがいかに少数にとどまるにしても、自民党にしか投票したことがない人たちの離反は、自民党の泥船化に拍車をかけることになるだろう。
永田町の消息通は「あくまでも造反は自民党の一部だし、さらに国民の中では、さらに微々たる存在に過ぎない」と高を括っているようだ。
そんな御託を言っていられるのも、後わずかである。岩盤保守がこれほどまでに、自民党に反旗を翻したことがかつてあっただろうか。日本の政治は重大な岐路にさしかかってきているのではないか。
これからの日本の政治的な混沌を考え上で参考になるのは、エリック・ホッファーの「捨てられた人、拒絶された人は、国家の土台となる場合が多い。建築者に取り除かれた石が、新しい世界の礎石になるのである。社会の屑も反抗者もいない国家は、きちんとし、上品で、平和で、心地よいかもしれあいけれども、おそらくうちに将来の種をもっていないであろう」(『大衆運動』高根正昭訳)という言葉である。
岩盤保守というのは、利権によって自民党の結びついているわけではない。その意味では拒絶された部類に属するが、国家の危機などに際しては、左翼とは違った意味で、多くの足跡を残すことになるというのだ。
日本が自立した国家に大きな一歩を踏む出すのは、そうした人たちの力なのである。自民党を支えながらも、不満を募らせてきた層が、大事業をやらかすのである。
そこまで自分たちが追い詰められていることを理解できない岸田内閣は、近い将来にダッチロール状態になるのは目に見えている。岩盤保守を侮るなかれなのである。