令和の御代が危機の時代であることを、私たちは覚悟しなくてはならない。中共や北朝鮮の活発な攻勢によって、韓国までもが全体主義の手に落ちようとしているからだ。朝鮮半島が混乱すれば、我が国に飛び火しないわけはないのである。日本が国家として身構えることは当然であるが、私たち自身が平和ボケから脱却しなくてはならない▼朝鮮半島の問題に干渉するのではなく、非常時に備えて置くべきなのである。その精神的な支えとなるのは陽明学ではないだろうか。三島由紀夫の「革命哲学ととしての陽明学」(『行動学入門』に収録)を再読して、なおさらその思いを強くした▼三島は井上哲次郎が「日本に移入されてから一層めざましく発展し、中江藤樹、熊沢蕃山を始めとして、林子平、梁川星巌、大塩中斎、また西郷南洲、横井小楠、真木泉守、雲井龍雄、その他明治維新をいろどる幾多の偉大な星を、この思想は生んだ」(『日本陽明学之哲学』)と書いた文章を紹介し、自らも陽明学を行動の指針としたのである▼とくに三島は陽明学の「帰太虚」に着目した。このため大塩中斎(平八郎)の『洗心洞箚記(せんしんどうさっき)』を取り上げ、大塩の思想的核心部分に関して「太虚は永遠不滅であり不動である。心がすでに太虚に帰するときは、いかなる行動も善悪を超脱して真の良知に達し、天の正義と一致するのである」と解説したのだった▼危機の時代には危機の哲学が必要であり、それによって危機を突破するしかないのである。
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