マスコミの劣化はとどまるところを知らない。信用がガタ落ちになっているのに、それに気付かないのだから最悪である。東京オリンピック・パラリンピック委員会の森喜朗会長へのバッシングも常軌を逸していた。マスコミはこぞって批判し、あたかも集団リンチの様相を呈した▼田中美知太郎は『直言、そして考察—今日の政治的関心』において「わが国では政治家を低能あつかいにすることが、ジャーナリズムの上では定石になっている」と書いた。「現代日本の風刺の精神」を論じながら、風刺の前提としては知的優位性というものがなければならない。ジャーナリズムの側にそれがあるかどうか、田中は疑問を呈したのである▼マスコミはそれなりに情報を握って、多くの人の影響を及ぼすことはできるが、知的優位となるとはなはだ心もとないからである。田中は「むしろかれらの愚かしさこそわが国の最も憂うべき事態であると言わなければならないのではないか」との見方を示したのだ▼田中が力説したかったのは「真の知的優越は、情報をつたえる人にあるのではなくて、他によって代えられないような創造的知性の人、オリジナルな人にあると言わなければならない」ということであった。私たちが本物かどうかを見極めることができれば、マスコミに振り回されて、大騒ぎすることもなくなるのである。
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