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神様がくれた素晴らしい人生(yottin blog)

テレビドラマ「北の国から」考 (1)文明の中で生きるか自然に溶け込むか

2021年08月22日 17時58分08秒 | 映画/ドラマ/アニメ
主人公は父、黒板五郎と息子の純、妹の蛍
富良野の鮮やかなラベンダーの絨毯畑のイメージでロマンチックなドラマを想像していたが、実態はドロドロした暗くて重いドラマだ
常に、苦しく厳しく貧しい田舎の村と華やかな東京の比較が出てくる

富良野から車で数十分、舗装もない土の道を車で山に向かって数十分行くと麓郷という寒村につく、そこからまた車で森の中に分け入ると
道路から外れた草藪の中に五郎の育った家がある、家と言うより家の残骸が
貧しくて高校にも行かない五郎は家出をして東京に出た、そして美人の美容師令子と結婚した(いきさつは一切不明)まったく釣り合わない二人だが
純と蛍が生まれた。 純が小学生の時、令子の浮気が発覚して許せない五郎は子供二人を強引に連れて北海道の田舎に帰る、昭和52年の秋
昭和52年と言えば東京オリンピック以後、日本の高度成長が著しく都会から好景気が地方へと広がっていく過程だった
それなのに麓郷は相変わらず貧しい、さらに五郎の廃屋は直さなければ住めない状態で、電気も水道もない
ここに東京で不自由なく育ってきた少し頭がいい純と、のんびりやの蛍が済むことになった、当然こましゃくれた純は理屈を並べ始める
蛍は何も言わない、感情が無いように見えていても実は蛍は純以上に多感だ

ここで少年時代を過ごした五郎はここでの生活を全否定する純に少しも妥協しない
「こんな穴だらけの家に住めませんよ」「いいえ直せば住めます、きみも手伝ってください」
「水道はどうするんですか」「ここから一キロほど森の中を行けば川があります、そこから汲んでくればいい、二人で行ってきなさい」
「電氣が無いのに夜はどうするんですか」「暗くなったら寝るんです」
「テレビもみられませんよ」「テレビはありません」
二人の子供はおよそ一か月学校にも行かず家の修繕の手伝いばかりさせられます、純は東京に帰りたくて仕方がないから作戦を巡らせる
我慢の限界に来た時、東京から令子の妹の雪子が失恋の傷心を癒すため五郎の家を訪ねてくる、やがてこの家に住み込む
雪子の同居で純の東京志向は収まったかに見えたが、五郎から冷視されていると思いこんだ純は東京に帰ることになり雪子が一緒に付きそう
しかし村の開拓者の一人、3軒でやってきた共同牧場の親父北村清吉から聞かされた言葉
「この村で一緒に開拓した連中は次々と村を捨てて出て行った、そのたびにワシは見送り、言ってやった
『お前たちは逃げるんじゃ、この村を見捨てて仲間を見捨てて逃げていくんだぞ、それだけは忘れるな!』」
純にこの言葉が突き刺さった、そして東京行きをあきらめて家に帰った、だが五郎は相変わらず冷たい
そんな生活でも、清吉の4男で牧場を継いだ草太は陽気で単純でせっかちな行動派の独身青年だ、五郎のところによく遊びに来る
つららという農協店員と付き合っていていずれ夫婦になるだろう、清吉たちも気に入っていた、ところが草太は雪子に一目ぼれしてしまう

* 生命力はたくましい雑草魂の五郎だが、少しもスマートさがなく、口下手で田舎臭い男だ、清潔で美人で学歴もあり都会育ちで?
(家庭環境は一切不明)美容院を経営する生活力がある令子と結婚したことはこのドラマ最大の謎だ
都会にマッチしているおぼっちゃま的な純と、おっとりしている蛍は対照的だ
純淳は東京が合っていると自負している、必然的に母寄りになる
五郎と一緒に母の浮気現場をリアルに見てしまった蛍の心には深い傷が残っていて、それは父親への同情となった、自分自身にも
「蛍は東京に帰らない、ずっとおとうさんといるから」と言う
蛍は生活がどうこうより父親への信頼で結ばれている、五郎の言うことには一切口返ししないで黙々と働く、つらいときは何も言わずうつむく

こうした何もないところから始めた貧しい生活は文明の中で生きている当たり前の人間では味わえない喜びを時々体験する
川から家の前まで一キロ以上も管で水を引いて水道がついた瞬間
手作りの風力発電で家の裸電球に明かりがともった瞬間
たいがいの家で当たり前のことが、ここでは最大の喜びとなる

わたしの子供時代も何もない家だった、それでも風が入らない家と電気と外付けだが共同井戸ポンプが家の近くにあった
おもちゃを買ってもらったのは小学校の高学年になってからだ、それまでは父が器用に作った針金細工が唯一のおもちゃだった
たいてい外でチャンバラや鬼ごっこ、野球をして遊んでいたアウトドアゲーマーだ
                        続く