ライブ インテリジェンス アカデミー(LIA)

日本の伝統文化の情報を国内外に配信していくための団体です。 その活動を通じ世界の人々と繋がっていく為の広報サービスです。

春といえば、鶯  【一茶庵稽古追想】

2021-06-06 14:15:25 | 文化想造塾「煎茶」

 

稽古が始まるいなや宗匠から、あのお軸に描かれている鳥は何ですか? という質問が私に投げかけられた。

速攻に聞かれても、私の豆知識では答えが出てこない。確か、昨年くらいに見たお軸を思い浮かべた。

あの鳥は"鶉(うずら)"でしょ! と答えたが、宗匠や仲間からの笑いが漏れている。

宗匠から鶉なら季節はいつ頃?という質問が逆に飛んできた。

えぇ〜と、またまた頭を抱え込んだ。大伴家持の、鶉を詠んだ悲哀の和歌を思い出した。

この春に、悲哀はないでしょう、と宗匠に突っ込まれ、そりゃ、そうだ!と納得。

なら、表装の色は何色? 

薄いブルーである。

 

この色から連想すれば分かるでしょ!とさらに突っ込まれた。

春の鳥といえば、この鳥をまず連想しない、と。

ホーホケキョと鳴く鳥は? といわれ、そうか!と。

やっとここで"鶯(うぐいす)"が頭に登場した、情けない話から始まった。

 

テーマは"鶯"。となると、国語の教科書にも登場した「江南の春」。

もちろん頭からすっかり消え去っている。

ご存知の方も多いと思うが、「杜牧」の詩である。晩唐の政治家であり詩人としても有名だった。

天才詩人と世に知れ渡ったのが20代のとき。26歳で科挙(かきょ)の一つである進士となり、

江蘇省の楊州に赴任した時代には名作を多く残している。その代表作が「江南の春」である。

 

 

その詩を宗匠の後に続き朗読。声を出して読むと不思議なものであるが、情景が浮かんでくる。

江南地域の村や山々の古里に酒屋の旗が春風にたなびいている。そこに多くの仏教寺院が点在する。

そして鶯の鳴き声が聞こえてくる。こぬか雨でその風景は霞む。懐かしの古里の風景が想像できる。

 

千 里 鶯 啼 緑 映 紅 

水 村 山 郭 酒 旗 風 

南 朝四 百 八 十 寺 

多 少 楼 台 煙 雨 中

 

千里鶯啼いて 緑紅に映ず

水村山郭 酒旗の風

南朝 四百八十寺

多少の楼台 煙雨の中

 

せんりうぐいすないて みどりくれないに えいず

すいそんさんかく しゅきのかぜ

なんちょう しひゃくはちじゅうじ

たしょうのろうだい えんうのうち

 

 

春夜の稽古場で繰り返し朗読した。声を出して読むと不思議と情感が高まってくるものである。

この鶯を見ながら「雁が音」を淹れた。まろやかで優しい、春の味であった。

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白い仔犬と白い象の、微笑に魅せられ 【京さんぽシリーズⅠ】

2021-06-05 14:16:35 | 寺社絵画

相国寺 開山堂は春の特別拝観で公開されていた。

入口からお堂に入ったところの

隅っこの杉戸に白い仔犬が描かれていた。

円山応挙筆とあった。

白い毛でなんとも言えない可愛らしさ、

いまにも扉から抜け出してくるかのような絵である。

 

 

また、方丈の廊下の杉戸には

原在中の白象が優しく微笑んでいる。

 

 

ともに江戸時代に活躍した絵師で、

大典禅師のお気に入りの絵師として相国寺と深くかかわった。

相国寺には、伊藤若冲はもちろん二人の絵も多く所蔵されている。

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雑穀は、日本食文化の原点 【伝統料理を楽しむⅦ」

2021-06-04 14:45:36 | 食文化

昨年から続いている「伝統料理を楽しむ」料理講習会は、

参加していただいている方たちに好評を得ている。

今回で5回目、限られた人数で行っているので参加者もほぼ同じ顔ぶれ。

和やかな雰囲気に包まれながらみんな笑顔で楽しめているのがサイコ~。


昨年の10月から魚のさばき方を中心にした料理実習がスタート。

1回目は「さんま」を食材に、2回目は「しゃけ」と続き、

3回目は保存食づくりに挑戦、オイルサーディン、アンチョビをつくった。

今年に入り、1月が「なにわの伝統野菜の講座」。

実習なしで先生の講義と、講義を受けながら試食する講習会を行った。

 


そして先週、「雑穀」を食材にした講習だった。

いままでの雑穀のイメージが覆させられるほどの内容であった。

雑穀は、昔から主食のお米(白米)にあわせるだけの食材としてしか認識がなかった。

この時代の健康ブームで「雑穀」がよく紹介されている。その健康食として大いに人気が高まっている。

 



講習のスタートは、赤米、黒米、あわ、ひえ、きび、大麦、そばの実、たかきび、アマランサスなどを

試食しながらそれぞれの特徴や使い方などを習った。

そのあと、先生が実際に雑穀を使ったレシピに基づき調理。

レシピや調理方法を聞きながら一つ一つを試食。

こんなにも雑穀がバラエティにとんだ料理に使えるのか、と思うほど。

しかも栄養価が高い。料理ファンの間では人気がでるはず。

手間を惜しまず暮らしを楽しむのには最高の食材である。

大切にしたい日本の、暮らしの知恵や工夫を料理を通して学んだような気がする。

これぞ、日本の食文化である。大切にしたい、日本の財産である。

メニューとして


■赤米寿司(左端)



■ハンバーグ



■椎茸のおこわ詰め



■雑穀炒め物



■ポテトサラダ



■雑穀サラダ



■雑穀サラダ(ワイルドライス)

この記事は、2009年2月「心と体のなごみブログ」に掲載したものをリライトし転載

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薬膳は万人受けする料理ではない。体質や季節に合わせ健康を食でサポートする

2021-06-02 14:32:00 | 食文化

薬膳料理をひと言で語るのは筆舌に尽くしがたい。

筆者が知る限り、また補足できる情報を加味して言うならば、

薬膳とは中医学理論(中国伝統医学)にもとづいて考案された、

食材と中薬(生薬)と組合せた料理。栄養、効果、色、香り、味、形など、

すべてのバランスが揃った食養生の方法ということになろう。

食養生とは、病気の予防と治療、健康保持、体質改善などを目的としており、

その人の体質や体調に応じて栄養を考え調整することである。

 

薬膳料理は「この料理が効果的」といった万人受けするものという考え方ではなく、

季節や食べる人の体調に合わせて作られる。

冷え症が気になる人に体の熱を逃がす効果のある薬膳料理を組み合わせると、

保温に必要な熱まで奪ってしまう可能性があるので体質に合っているとは言えない。

同じ料理でも体質によって合う・合わないがあり、それを見極めて料理を作ることが大切だといわれている。

 

また季節に合わせた旬の食材を使うことで、気候に合った食材のパワーを体内に取り入れられるとも大事。

そして冬の時期の旬の食材には体の中から温まる効果があるものが多く、

春にかけてはさまざまな刺激から体を守ってくれる免疫力の高まる食材や苦みのある食材が多くなる。

体質や季節に合わせて料理を行うことも、健康を食でサポートする「薬膳料理」の考え方である。

 

薬膳は食べておいしさを楽しむだけの料理ではない。エネルギーを摂取するための食事とまた少し違いう。

冷えや食欲不振など、その人がもつ体質自体を改善へ導くための食事が薬膳料理ということである。

薬膳は生薬を使わなくても、体質に合った身近な食材を使うことで症状の緩和を目指すことができる。

 

日頃、料理するたびにこんなことを考えると、楽しい料理も好きな料理もそうでなくなってしまう恐れがある。

やはり、日頃の生活のなかで作りやすいものでなければ続かない。

それで、今回暮らしの中で作れる薬膳料理の講習会を行った。

講師は、滋賀県大津市の「薬膳館」の館長さんである横田佳子さん。

横田先生はもちろん

お料理の専門家であるが、 薬膳には欠かせない生薬の先生でもあり、 中国健康法の専門家である。

 

まず、五行説の話から始まり、上記記載の薬膳についての話を聞き、

自然と食物のかかわりの大事さを改めて認識し、料理実習に入った。

 

メニューは下記のとおり

■黒い肉まん
材料は、白菜・黒きくらげ・干しエビ・干し椎茸・白ねぎ・豚ミンチ・生ピーナツ

・葛根(かっこん)・小麦粉・ベーキングパウダー・黒粒胡麻・黒すり胡麻・水



■黒米とたいそう(なつめ)のお粥
材料は、白米・黒米・黒餅粟・なつめ・黒砂糖


                                        

■芹菜と銀耳のサラダ                                             材料は、芹菜・林檎・銀耳(きくらげ)・白ねぎ・塩・酢・サラダ油

の3種類です。
この季節は身体に良いとされる「黒」の料理ということである。

薬膳料理は体質に合わせて、使用する食材・調理方法を選ぶ。

たとえば手足の冷えが気になっている人には、体を温める効果が優れている生姜。

そして胃腸を温める効果のあるレンコン、鮭、大根などを組み合わせるのも良いとされている。

体調にあわせ、どんな食物が効果的なのかをまず知っておくことが肝心のようである。

機会があれば是非勉強されることをお勧めする。

 

※この記事は、2005年11月の「心と体のなごみブログ」に掲載した内容をリライトし転載

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青もみじの輝きが、新しい始まりを予感

2021-06-01 13:55:18 | 雑感

この季節ならではの美しさ、といえば「深緑」。

春の山の草木が一斉に若芽を吹いて山笑う情景から、葉が生い茂り濃い緑になっていく。

夏に向かうちょうど今頃である。

 

 

草木の中でももみじの深緑は、眼に眩しいほど美しい。いわゆる「青もじみ」である。

もみじは枝が流れるように伸び、そこに小さな葉をつける。

葉に切れ込みが深く入るので、さらに鋭い形をつくる。枝葉一体で美しさをかもし出す。

 

 

先日、相国寺に参拝した折に、境内に群生するもみじの美しさに目が留まった。

自然光でキラキラする青もみじの輝きが妙に新しいことの始まりを予感させた。

 

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