大きな寺院に行くと、伽藍の中に数々の役割をもつ建造物がある。
その中でも建物自体が文化財に指定されているのも少なくない。
その建造物の美しさもさることながら屋根の形状の美しさに見とれることが多々ある。
じっくり見ないとわからないが、寺院の屋根は独特の形があるようだ。
その代表的な形として「反り屋根」と「むくり屋根」がある。写真(上)にあるように、
手前の屋根は中腹部が膨らんでいる。奥の方は反り返っている。
反り屋根は屋根の面が反ったもので社寺などに多く、
中国大陸から伝わった建築様式で格式や荘厳さが感じられる。
一方、むくり屋根は屋根の面が膨らんでいるもので、
有名な建築物の代表例としては桂離宮などで見られる日本独自の建築様式である。
丸みのあるむくり屋根は、その美しさから皇室ゆかりの建造物や公家の屋敷等に使われた。
では、なぜ屋根の形状を変えるのか。
それは建物の特徴や用途にあわせ形状を変え、機能や役割をもたせている。
むくり屋根は軒へ近づくほど勾配が急になり雨水のキレをよくするために。
また、反り屋根は軒へ近づくほど勾配が緩くなっている。
雨水のキレが悪くなるが、大きな軒下があることで、雨水や日光から建物本体を守ることができる。
これが最大の目的のようだ。
日本古来の建築様式は、数かずの知恵や工夫が施さている。
それは厳しい自然の中で、長年にわたり存在していくための叡智が詰まっている。
これらの叡智は専門家だけのものではなく、
日頃の暮らしに反映できる技として伝わればもっと暮らしにおもしろ味が増すような気がするが。