蘇軾が、先人の「王維」を評し、"詩中に画あり 画中に詩あり"と言った、
と伝えられている。
両人の生きた時代は違えども、共に政治家であり画人、
そして後世に名を馳せた詩人である。
だからあい通じる生き方に共感した蘇軾は、王維に強く惹かれたようである。
王維の詩の中で有名な「竹里館」は、まさに詩中に画ありの詩である。
"竹"や"月"を題材にした俳諧は多い。煎茶稽古にもよく話題に登場する。
詩の中でも「竹里館(ちくりかん)」は、日本の国語の教科書に紹介されているくらい
有名な五言絶句の詩である。
その「竹里館」を紐解いていくと自然詩の情感や情景が見えてくる。
獨坐幽篁裏
彈琴復長嘯
深林人不知
明月來相照
ただ一人で奥深い竹やぶの中に坐り、
琴を弾いたり、詩を吟じたりしている。
この竹林の中の趣は、世間の人は誰も知らないけれども、
天上の明月だけは、私を照らしてくれる。
という意味になる。
王維の自然詩は “詩中に画あり”といわれるほどの作風が多い。
一般的には、独り竹林で琴を奏でるイメージは暗さが先行する。
しかしながら、この自然詩にはその暗さや寂しさは微塵も感じられない。
自然に同化し俗の世界から超越したイメージが伝わってくる。
自分の世界観を表現し、後世に残る詩となっている。