ゴム製品をグローバルに展開するニッタ株式会社の創業者、新田長次郎翁の別荘として、和歌山県海南市の黒江湾を臨むところに「琴ノ浦温山荘園」が明治の終わり頃から大正初期にかけて建設、造園をされた。
敷地面積1万8千坪のなかに、主屋、茶室、そして黒江湾が眺望できる場所には浜座敷などがある。その浜座敷は、岩盤が露出する急な斜面の段丘にある。当時は、海から舟で行き来していたようだ。浜座敷の屋根は、文様装飾をもつ軒瓦や隅丸瓦でふいてあり寺院宮殿を思わせる古典的な造りになっている。
座敷内でまず目をひいたのが主室の「襖」。主室に入る側には「朝焼け」が描いてあり、その画柄には圧倒された。そしてその襖にはコウモリをモチーフにした引き手がついていた。コウモリは、東洋では「吉兆」「長寿」を意味する哺乳類ということでモチーフになったらしい。主室側の面の襖には、「夕焼け」が描かれていた。朝に入り、夕に出ていくときの時間差情景が襖で表現されていた。驚愕の思いで見入った。
庭園、建造物等は国の重要指定文化財に登録されている。その内部に至っては、日本の美しさが細部にまで表現されている。分かる範囲内で紹介させていただくつもりではあるが、なにせ薄学なのでこの程度である。