ライブ インテリジェンス アカデミー(LIA)

日本の伝統文化の情報を国内外に配信していくための団体です。 その活動を通じ世界の人々と繋がっていく為の広報サービスです。

大阪・十三を本拠地に、大阪人の胃袋をつかむ「みたらし団子」 【喜八州総本舗】

2022-10-09 14:01:30 | 伝統食文化

「御手洗」と書いて、通常は「おてあらい」と読むが、一方では「みたらい」と読む。その昔、歴史的には「みたらし」と呼んでいた。その「みたらし」が、いまも名称として使われているのが馴染の団子の「みたらし団子」である。

神社の近くに流れている川を通称「御手洗川(みたらしがわ)」という。特定の川の名称ではなく、神社の参拝者が手を洗ったり口をすすいだりする川のこと。その御手洗川で有名なのが京都・下鴨神社。いまでも続いている夏の御手洗祭りで販売されていた団子を「みたらし団子」と呼ぶようになった。

 

 

京都のみたらし団子は有名だが、絶大な人気を誇るみたらし団子が大阪にある。全国に名を馳せた、おっちゃん、お兄ちゃんの夜の街(半世紀前のこと。いまはビックリするほどにきれいな街に変貌)、十三にある。阪急十三駅の西改札を出て50mほどいったところに、それは見事な「喜八州(きやす)」の看板が掲げられている。いつ通っても行列が目を惹く「喜八州総本舗本店」である。

 

喜八洲という屋号は、創業時(昭和23年創業)に「菓子業により八洲(日本中)の皆様に、大いに喜んで頂こう」という意味合いで、名付けられたようだ。「最高の材料を使い、手頃なお値段で手作りの味を甘党のお客様に!」をモットーに名物の酒饅頭をはじめ、人気のみたらし団子、ジャンボサイズのきんつば・花ぼた餅・焼き餅などの浅生菓子から、力士最中・初霜・栗饅頭・三笠などの贈答用の和菓子まで、およそ40種類以上の和菓子を取り揃えている。大阪人の味に対応するために、全商品を本社の工場で製造しているのもこだわりひとつようだ。

商品の中でも、やはり人気一番の「みたらし団子」を求めて店頭に並ぶ。1本(108円)から買えるので串を片手に小腹の足しにという若者も多いが、5本、10本入りが飛ぶように売れる。私も、せっかくなので並び、たれ付け、焼き具合、スピード化された包装のそれぞれのテクニックを見ながら待った。

より多くのタレがからみ、団子に旨味が凝縮されるといわれている俵型の「きやすのみたらし団子」。老若男女を問わず、だれもがその味を楽しめる人気商品。

甘いたれとモチモチのお餅が絶妙に絡んだみたらし団子は、味にうるさい大阪人の胃袋を捉えている。

 

 

その味はというと、餅粉と米粉を絶妙なバランスで配合し蒸し上げた団子を、注文してから強い直火で炙る。お姉さんが「あぶり加減は?」と客一人一人に聞いてくれる。ステーキと同じように焦げ目三段階の炙り方である。「焦げ目少なく・ふつう・焦げ目多く」に分かれている。

私はふつうといったが、それでも結構な焦げ目がついている。私の後ろのオジサンは「焦げ目たっぷり」と。販売員さんは「少し苦くなるかもしれませんが・・」という返事に、オジサンは「苦いのがいいのや!」と語気を強めて返事していた。たかがみたらし団子、されど・・・である。

香ばしく焦げ目が付いたら、自社特性のタレの中をくぐらせる。タレは北海道厚岸産の上質昆布でダシをとり、香川県産たまり醤油と白ざら糖を使った喜八州独自の特別仕立。また、団子の形が俵(円筒状)なのは炙った時に焦げ目がつきやすく、また、タレの絡みをよくするためとのことだった。

 

 

歴史をつくるお店には、店のこだわりにお客さんが信頼を寄せている。味はもちろんそうだが、お店のしきたりや習慣にもなじんでいる。それに大阪人は、客がお店をつくり守ってやっているという何とも大阪らしい下町風土あふれる上目線が働いているようにも思う。

両者の歯車が絶妙にからまり動いているのが大阪の商いかもしれない。十三を本拠地に商売を育む喜八州総本舗の本旨が見えてくるようだった。

 

 

リポート&写真/ 渡邉雄二

 

尾道・文化紀行 https://asulight0911.com/hiroshima_onomichi/

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大阪の食文化のコアになる「なにわの伝統野菜」に注目 【伝統料理を楽しむⅢ】

2021-05-21 14:43:22 | 伝統食文化

「伝統料理を楽しむ」第三弾として紹介するのは「伝統野菜」。

どこの地域でも伝統野菜に注目し、各自治体の農業育成の柱にしようとPRを促進している。

また、現在ではふるさと納税返礼品等にも活用されている。

伝統野菜といえば「京野菜」がまっ先に頭に浮かぶ。

いまは、どこの都道府県でも地元活性化の旗印として「地産地消」を掲げ、

各種食材の筆頭にご当地野菜を前面に押し出している。

 



大阪でも、二十年前くらいから市内や府下で生産されている野菜のいくつかを「なにわ伝統野菜」として

ブランド化を始めた。現在大阪府、大阪市認証としては、令和3年現在では18品目である。

市内では「毛馬胡瓜(けまきゅうり)」、「玉造黒門越瓜(たまつくりくろもんしろうり)」、

勝間南瓜(こつまなんきん)」、「金時人参(きんときにんじん)」、「大阪しろな」、

「天王寺蕪(てんのうじかぶら)」、「田辺大根(たなべだいこん)」、「芽紫蘇(めじそ)」、「難波葱」の9品目。

府下では豊能町の「高山真菜(たかやままな)」、「高山牛蒡(たかやまごぼう)」。

吹田市の「吹田慈姑(すいたくわい)」、茨木市の「三島独活(みしまうど)」、

高槻市の「服部越瓜(はっとりしろうり)」、守口市の「守口大根」、摂津市の「鳥飼茄子」、

羽曳野市の「碓井豌豆(うすいえんどう)」、

そして泉州地域では「泉州黄玉葱(せんしゅうきたまねぎ)」の9品目、計18品目が認定されている。

その一つ一つを先生から解説していただき、その料理方法を教わる興味深い講習会であった。

その中からいくつかの食材を調理し試食。食材自体の味を楽しませていただく貴重な講習会だった。


まず、天王寺蕪をペースト状にして火を通したもの


天王寺蕪を、圧力鍋で15分茹でたもの(型崩れなし)


天王寺蕪を、圧力鍋で15分茹で自家製の味噌で


田辺大根、大阪しろな


大根飯(田辺大根を角切りにし米と一緒に、炊きあがったあと塩もみした葉っぱを混ぜる。塩加減がポイント)


大阪しろな(出汁と塩で、厚揚げと一緒にあえる)


金時人参(河内蓮根と素揚げ)


高山真菜の湯通し



いまの旬のものを下味だけで賞味した。すべての食材が甘い。

旬なものだけに伝統野菜に認定されるだけの特徴を有するものばかりだった。

舌を巻く上品な味を堪能した。大事に丁寧に育て生産されているのが伝わってくる。

なにわの伝統野菜は、まだごく一部の地域でしか生産されてない。だからなかなか手に入りにくいものも多い。

大阪で言えば木津卸売市場や黒門市場などで手に入るとのことである。

食道楽といえば「大阪」。たこ焼きも、お好み焼きもそれぞれの文化ではあるが、

素材にこだわる食道楽として、本来の「大阪食文化」がさらに高まっていくことを期待する。

 

※この記事は、2009年2月「心と体のなごみブログ」に掲載されたものをリライトし転載

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自然が暮らしのお手本-「摘み菜がごちそう」 <伝統料理を楽しむⅡ>

2021-05-17 15:45:20 | 伝統食文化

伝統料理を楽しむ講習会「手打ちそば」に続いて、今回紹介するのは「摘み菜」。

摘み菜といっても、ピンくる方は少ないかもしれない。

簡単にいうなら、公園などに生える草や木の実を摘んで食べることである。

いまの時代に草や木の実を食べるのはあまり考えられない。

私が子供のころでは山や野っ原が遊び場で、山ではざくろやあけびなどを見つけてはよく口にしていた。

また野っ原ではゼンマイやツクシなどをとっては夕食のおかずになっていた。

それは半世紀以上前の話であるが、その当時よりももっと原始的なのが「摘み菜」。

それも我々の身近にある公園で草や木の実を摘んで食べようという体験会である。

田舎に育ったことで自然と戯れることも多少なりとも知っていることから

関心をもちチャレンジすることにした。さらに、漠然とであるが大切なことが学べるような気がした。

それはライフワークにしている伝統文化の知恵と工夫が、

この「摘み菜」にもいっぱい詰まっているような気がしている。

暮らしにおいて食は当然欠かせないものだが、摘み菜でほんの少し自然の営みのようなものを体で

感じられるような気もする。摘み菜がごちそうと思えたら最高である。

 

素朴な疑問から摘み菜に興味をもちスタートした。

摘み菜を実践伝承しておられる平谷けいこ先生から「摘み菜とは、珍しいこと、特別なことでないです。

街の中でも野山でも、身近に生えている、食べられる草や木の“菜”を摘む、

そして摘んだ菜を料理して食べることです」と。

先生から話を聞いて楽しそう、と思ったのが摘み菜へのはじめの一歩だった。

どこにでも身近にある草や木の菜を食べることに興味を覚えた。

まさに生きる知恵であり暮らしの知恵である。

私が、ひとつ覚えのように言い続けている"伝統文化の知恵と工夫をいまの暮らしに"

というテーマに合致したものだった。

食べることを通して、いまの暮らしを少し豊かにしていくことが可能なら素晴らしい活動になるはずである。

 

 

原始的であるが、心豊かな活動である。平谷先生は摘み菜伝承講座として、

摘み菜を楽しく安全に摘む、摘み菜料理を創意工夫する、摘み菜を広く伝える、

という目的で活動されている。こういう活動が大切であると思える時代になっているような気がする。

そうすることで暮らしの本来の豊かさが見えてくる。

そのお手伝いの一環でライブインテリジェンスアカデミーも実践講座をさせていただくことに。

 

この記事は、2008年10月に「心と体のなごみブログ」に掲載したもの。それをリライトし転載。

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鯖寿司で、日本料理の妙味を知る。 【魚のさばき方料理講習会】

2021-04-06 14:55:31 | 伝統食文化

昨夜の料理講座は、日本料理の味付けに改めて感動する講習会だった。
「塩」、「醤油」、「酢」、「昆布」、「削り節」、「味噌」、「砂糖」、「みりん」等々は日本の味付け調味素材の代表である。
これらの調味料には当然ながら役割がある。そして意味がある。それぞれの相性もある。すべて日本独特の味付け素材。甘く、濃く、薄く、締める、隠すという味付けになくてはならないものばかり。料理工程でそれぞれの役割と意味が見えてくる。日本料理を引き立てる大事な脇役である。



前段はさておいて、昨夜行われた料理実習の素材は「鯖(サバ)」。この鯖を使ってメインに作ったのが「鯖寿司」(写真)。そして「柿白和え柿釜盛り」、「鯖の酢洗いトマト和え」、「鯖の茸酢和え」、「鯖の朴葉味噌焼き」、「船場汁」の計6品。

この講習会の大きな目的の一つが「魚のさばき方」。魚の中でも特に難しいのが鯖といわれている。脂がのっていればいるほど柔らかい。身が溶けていく。
ご存知のように青魚は血がよく出る。さばき方を間違うとまな板が血の海状態になる。できるだけ血が出るのが少ないさばき方を習った。エラやお腹に必要な切れ目をいれ、頭を手で引きちぎるように外すと腸も一緒にくっ付いて取れる。



おろした後の1/2を鯖寿司に使う。切り身に塩を振る(時間があるときは薄塩して2時間)。時間がないので盛り塩に。酒でさらっと洗って水分をふき取る。そして血合い骨をピンセットで取り除いて腹骨をすきとる。皮は、甘酢に30分つけた後にはぐ。
甘酢で煮立ちさせ冷ました白板昆布と寿司飯そして鯖を巻き、酢で整える。(写真)他の5品も季節のものに合わせ、鯖の美味しさを引き出していた。鯖尽くしの料理になった。船場汁などは鯖とは思えない上品で高級感が漂った。



日本料理の中でも青魚料理だったので、特にかも知れないが脇役の陰の力が引き立った。日本の絶妙な味をこれらの脇役が支え作り出している。

※この記事は、10年前に和香の田村佳子先生による「魚のさばき方」をベースにした料理講習会を主催していた時の記事です。

 

 

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