ライブ インテリジェンス アカデミー(LIA)

日本の伝統文化の情報を国内外に配信していくための団体です。 その活動を通じ世界の人々と繋がっていく為の広報サービスです。

17世紀後半ごろからヨーロッパ、中国で人気を博した「鼻煙壷」 【大阪市立東洋陶磁美術館―鼻煙壷Ⅱ―】

2024-08-28 14:15:39 | 美術館

馴染の薄い美術工芸品「鼻煙壷(びえんこ)」を以前紹介したが、大阪市立東洋陶磁美術館の沖正一郎コレクションの優品を幾つかを撮影したので紹介させていただく。

 

「沖正一郎コレクション」と名付けられた鼻煙壷コレクションとあるが、沖氏(1926- 2016)とは、どんな人物なのかをまず簡単に紹介する。伊藤忠商事に勤務し香港駐在を経て西友ストアの常務に、1981年に初代ファミリーマートの社長に。そして良品計画の会長を務めた実業家であり、世界的にも有名な鼻煙壷収集家だった。長い年月をかけて収集した優品は各地の美術館等に寄贈された。

 

大阪市立東洋陶磁美術館をはじめ、北京・故宮博物院やロンドン・ヴィクトリア&アルバート博物館、世田谷美術館等に多数所蔵されている。東洋陶磁美術館には600点ほどありその中から今回は数百点が展示されている。

 

そもそも鼻煙壷とはなんだろう? という話だが、資料によると、粉末状の嗅ぎタバコ入れである。嗅ぎタバコとは17世紀後半ごろ、タバコを粉末状にして香料などを調合したものを鼻孔から直接吸引する、いまでいうタバコである。この習慣がヨーロッパから中国に伝わり、粉末タバコを入れて携行できるように蓋があり、そして匙(さじ)が付いた小さな壺が作られるようになった。

嗅ぎタバコを手の甲に乗せて鼻で吸い、また鼻の粘膜にこすりつける。持ち歩くことが前提なので、どれもサイズはだいたい同じ。大きくて高さ10㎝までで、通常は5、6㎝のものが人気だったようだ。人前に出して使うものだから、持ち主の趣味の良さを示すために高価な素材、凝った意匠の鼻煙壺がつくられた。

 

素材としては、玉(金)、メノウ、水晶、ガラス、象牙などの高価な素材が用いられるようになり、工芸技術を極めた精密な細工が施された独自の世界を創出していくことになった。

今回は、象牙や金属などに模様が彫られたものを集めてみた。本来は美術館に足を運んで鑑賞されるのが最良かと思うが、機会がない方は、ぜひ楽しんでいただければ・・。次はまた別の鼻煙壷を紹介する予定である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

象牙陽刻 龍船文 鼻煙壷 (高さ5.8㎝ 幅4.5㎝/ 19世紀~20世紀)

 

 

 

堆朱 孔雀文 鼻煙壷(ついしゅ くじゃくもん 高さ8.4㎝ 幅4.8㎝/ 19世紀~20世紀)

※堆朱とは彫漆のこと。素地の表面に漆を塗り重ねて層を作り、文様を レリーフ 状に表す技法

 

 

文・写真/ 渡邉雄二

鼻煙壷/ 大阪市立東洋陶磁美術館

 

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世界初の自然採光展示を実現 理想的な陶磁器鑑賞が可能に 【大阪市立東洋陶磁美術館―自然採光展示―】

2024-08-15 14:51:58 | 美術館

美術館や博物館などで美術品を鑑賞する場合、照明機器の光によって美術品を鑑賞しているが、美術品の鑑賞にはそぐわないというのは誰しもが思っていることではないだろうか。

 

芸術家たちは、照明機器がない時代には自然光の中で、またロウソクやランプの灯りの中で創作してきた。その作品の本来の色調が、現代の照明機器の光の下では思うように味わえないという。とくに絵画や陶磁器の鑑賞は、光の種類や状態で影響を受けやすいといわれているからなおのことである。微妙な色合いや質感を味わうためには、一定の高度を保つ自然光のもとで鑑賞するのがもっとも理想的である。

 

東洋陶磁美術館では、このたびのリニューアルに際し、長年の課題であった照明について、青磁展示コーナーでは世界で初めての自然採光展示を実現した。光ダクト方式を開発することにより展示ケース内のみに自然光を導入、自然光による理想的な条件での陶磁器鑑賞が可能になった。

 

それは、前回の記事で紹介した国宝「飛青磁花生」など青磁器が並ぶ自然採光展示室である。展示ケース内の上を覗いてみてください。自然光がそそいでいる。照明光との違いを楽しむのも新たな発見があるかもしれない。

 

 

自然採光展示ケース(左が国宝<飛青磁花生>)

 

 

ケースの天井から自然光がそそぐ

 

 

自然採光展示室

 

 

文・写真/ 渡邉雄二

 

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もう一つの国宝「飛青磁」 【大阪市立東洋陶磁美術館―国宝<飛青磁>―】

2024-08-14 15:13:45 | 美術館

天目茶碗として日本で国宝に指定されているのが3つ。その中の一つが「油滴天目(東洋陶磁美術館所蔵)」。この油滴天目以外に、同美術館にはもう一つ国宝に指定されている優品がある。

それが「飛青磁花王」の花器。門外漢の筆者にしてみれば “ん? これが” と思ってしまうほどの普通の青磁器にしか見えないが・・・

 

日本には国宝指定件数は1,132件(2023.1.1付)で、230件が建造物、902件が美術工芸品。その1件が、この花入れである。文化史的に、また学術的に価値が極めて高いものとして法令に基づき国宝に指定されている。国宝指定の資料を読んでいると、国宝や重要文化財は価値の高さはもちろんだが希少な優品として未来の日本に残すべきストーリーが存在する。

 

本題の飛青磁は草花を生ける器で、南宋から渡ってきた金属製や陶磁器の花生は非常に格式が高いとされていた。資料によると、飛青磁は鉄斑紋という焼物の装飾方法で所々に模様が浮いて出てくる。中国の龍泉窯で焼かれたものが多いといわれている。

下部の膨らみ、口がすぼまったこの形は、中国の「玉壷春(ぎょっこしゅん)」と呼ばれる酒を入れる食器だったが、日本では茶の湯で使用する花器「花生」として重宝されるようになった。

 

この飛青磁は大阪の豪商「鴻池家」に伝来したもので、その後、安宅産業のコレクションになり住友グループから寄贈され、「玉壷春」の器形のコーナーの一角に展示されていた。

国宝指定を受けるまでは、形あるものとして製造され、国は違えど何らかの目的で人から人へと渡り継がれてきた。そして安寧の地である美術館で多くの人たちに親しまれ重宝されている。

 

 

 

国宝「飛青磁花生」

 

青磁八角瓶  

 

青磁鳳凰花生

 

青磁瓶  

 

青磁瓜形瓶

 

青磁砧形瓶  

 

青磁陽刻 牡丹蓮花文鶴首瓶

 

※すべて安宅コレクション

 

文・写真/ 渡邉雄二

場所/ 大阪市立東洋陶磁美術館

 

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浮世絵を楽しく読む 【神戸ファッション美術館-浮世絵Ⅰ-】

2023-07-21 11:19:11 | 美術館

葛飾北斎 春興五十三駄之内 宮

 

 

先日紹介した神戸ファッション美術館で開催されている浮世絵の展覧会(花のお江戸ライフ)は7テーマに分けて展示されていた。

浮世絵は、江戸時代の初期に美人画や役者絵を中心に、喜多川歌麿や東洲斎写楽の活躍で一大ブームを創出した。江戸の人口が増えていく中で、庶民が関心を寄せる浮世絵にもさまざまにテーマで描かれるようになった。

例えば、庶民の楽しみである「旅」ブームを背景にした風景画をはじめ、食、趣味、ペット、着物、暮らし向きといった今の時代の関心事と重なるテーマの浮世絵が人気を博した。

 

同展覧会では、当時の江戸の庶民が夢中になった数々なブームや娯楽をキーワードごとわけ、江戸後期の浮世絵画壇を代表する喜多川歌麿、葛飾北斎、歌川広重をはじめ、歌川豊国、国貞などの浮世絵158点が展示されている。

 

それぞれを紹介すると、

旅行~富士とお城は定番です

江戸っ子のメイクアップ術

動物大好きペットブーム

江戸のソウルフードとグルメ

粋なガーデニング

季節の彩

肉筆画

 

江戸時代の風俗などを浮世絵で垣間見るのもおもしろい。また、江戸時代に活躍した絵師の絵をじっくり鑑賞するのも楽しい。私のように、一枚一枚を撮影(撮影すべてOK)し保存するのもよし。

少しずつではあるが紹介させていただく。

 

 

 

 

 

リポート&写真/ 渡邉雄二 参考資料/ 展覧会チラシ

 

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尾道・文化紀行  https://asulight0911.com/hiroshima_onomichi/

 

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未来へ進化する「リーディング・ミュージアム」 【大阪〈藤田美術館〉シリーズ-Ⅰ-】

2023-01-30 09:44:27 | 美術館

 

各地の寺院の参拝めぐりが続いている。昨日訪れたところは、この写真からすると庭園も整えられ茶室もあり、何よりも歴史を感じさせる多宝塔が存在する。京都の寺院を想像させるが、実はこれ、大阪 都島にある「藤田美術館」。日本の伝統文化の雅趣を感じさせる雰囲気の中に近代的でモダンな美術館として生まれ変わった。

 

以前の美術館の概念を少し変えた未来へ進化する「リーディング・ミュージアム(先進美術館)」といわれる美術館である。周りの環境はもちろんだが、内部の環境としては絵画を楽しむ以外の機能やシステムが施されている。集まってくる人たちが創造できる空間をもつ美術館へと進化しているようだ。

それが、藤田美術館である。その姿を少しずつではあるが紹介していきたいと思っている。

 

 

 

 

 

リポート&写真/ 渡邉雄二

 

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