馴染の薄い美術工芸品「鼻煙壷(びえんこ)」を以前紹介したが、大阪市立東洋陶磁美術館の沖正一郎コレクションの優品を幾つかを撮影したので紹介させていただく。
「沖正一郎コレクション」と名付けられた鼻煙壷コレクションとあるが、沖氏(1926- 2016)とは、どんな人物なのかをまず簡単に紹介する。伊藤忠商事に勤務し香港駐在を経て西友ストアの常務に、1981年に初代ファミリーマートの社長に。そして良品計画の会長を務めた実業家であり、世界的にも有名な鼻煙壷収集家だった。長い年月をかけて収集した優品は各地の美術館等に寄贈された。
大阪市立東洋陶磁美術館をはじめ、北京・故宮博物院やロンドン・ヴィクトリア&アルバート博物館、世田谷美術館等に多数所蔵されている。東洋陶磁美術館には600点ほどありその中から今回は数百点が展示されている。
そもそも鼻煙壷とはなんだろう? という話だが、資料によると、粉末状の嗅ぎタバコ入れである。嗅ぎタバコとは17世紀後半ごろ、タバコを粉末状にして香料などを調合したものを鼻孔から直接吸引する、いまでいうタバコである。この習慣がヨーロッパから中国に伝わり、粉末タバコを入れて携行できるように蓋があり、そして匙(さじ)が付いた小さな壺が作られるようになった。
嗅ぎタバコを手の甲に乗せて鼻で吸い、また鼻の粘膜にこすりつける。持ち歩くことが前提なので、どれもサイズはだいたい同じ。大きくて高さ10㎝までで、通常は5、6㎝のものが人気だったようだ。人前に出して使うものだから、持ち主の趣味の良さを示すために高価な素材、凝った意匠の鼻煙壺がつくられた。
素材としては、玉(金)、メノウ、水晶、ガラス、象牙などの高価な素材が用いられるようになり、工芸技術を極めた精密な細工が施された独自の世界を創出していくことになった。
今回は、象牙や金属などに模様が彫られたものを集めてみた。本来は美術館に足を運んで鑑賞されるのが最良かと思うが、機会がない方は、ぜひ楽しんでいただければ・・。次はまた別の鼻煙壷を紹介する予定である。
象牙陽刻 龍船文 鼻煙壷 (高さ5.8㎝ 幅4.5㎝/ 19世紀~20世紀)
堆朱 孔雀文 鼻煙壷(ついしゅ くじゃくもん 高さ8.4㎝ 幅4.8㎝/ 19世紀~20世紀)
※堆朱とは彫漆のこと。素地の表面に漆を塗り重ねて層を作り、文様を レリーフ 状に表す技法
文・写真/ 渡邉雄二
鼻煙壷/ 大阪市立東洋陶磁美術館
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