娘の結婚式の為に新調したタキシード。それから二年、姪の結婚式があり再び袖を通した。穏やかな気候の中で列席者の笑顔が溢れている。そんな光景に立ち会える事は幸せな事だ。次に着る時はおそらく、豪華客船クルーズのパーティーになるだろう。このタキシードは、私を幸せな気分にさせてくれるアイテムなのかもしれない。
月曜から金曜迄は仕事に追われ、土曜・日曜はテニス三昧。この様なイベントや旅行が無ければ、毎日の単調な生活の中で感じた事以外は、なかなか俳句には出来ない。しかし、あと何年続くか分からないが、そんな毎日を幸福な時間と思い、今後も年を重ねていきたい。
現役を引退したら、何日か費やして芭蕉の奥の細道を辿りながら、吟行をするのも夢の一つでもある。全てを歩きながら、という訳にはいかないと思うが、気になる場所を巡っていけたら良いかなと思う。
それまでは、自然を読み取る観察眼と、表現力を磨く努力をしなければいけないとは思うが、同時に自分の句風を築いていけたら本望だ。
海女小屋に海女の声無しならい吹く
緞帳の如く凍雲山隠し
今一度布団に戻る余寒かな
頬白の絵手紙一筆啓上す
春うらら潮目で変わる海の色
朝寝してうつらうつらの秀句かな
酔うており桜の舞に酔うており
葉桜や真白きべべの宮参り
雨蛙雨を呼ぶやら雨が呼ぶやら
山若葉緑黄緑深緑
青嵐湖面に描く風の道
からころと金魚の浴衣通り過ぎ
雲の色雲の形で夏を知り
鯔跳びて遥か雲仙煙吹く
百日紅近くて遠き生家かな
バーボンとジャズとナッツと秋の夜
老いたれば色なき風の如く生き
野に座せば山より高き紫苑かな
それぞれに帰る家あり秋の暮
木の実落つ水に浮くもの沈むもの
野ざらしの地蔵も眠る小春かな
寒の凪一時にして白波に
夜祭の秩父山麓冬花火
朝焚火漁師差し出す茶碗酒
こんな夜は愛しき人と新酒
(岩戸句会第五句集「何」より 御守 海人)
スイレン(睡蓮)