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10月27日(土) 嬉しさと緊張。

2018年10月27日 23時57分51秒 | 2018年

 6時起床。自然に目が覚める。競馬に行こうという日は、嫌でも必要以上に早く起きてしまう。

 8時前に家を出て、東京競馬場へ向かう。新横浜からだと、横浜線へ菊名へ出て、東横線で武蔵小杉、南武線で府中本町という経路が最短だ。1時間掛からないが、乗り換えが多くて少し面倒臭い。

 開門時間の9時ちょうどくらいに到着し、並んでいた人々に続いて入場する。入場ゲートの前には、既に明日の天皇賞に向けて並んでいる人たちがいる。少なくともこれから丸1日はここで待つのかと思うと、その熱心さに頭が下がる。「指定席の抽選が当たったら行こう」くらいに思っている私には、そのバイタリティはない。夜は冷えますので、どうぞ風邪などひかないようにお気をつけください。

 家を出る頃には雨がぱらついていたが、予報通り晴れてくれた。絶好の競馬日和である。

 朝食に、「梅屋」できつねうどん(卵入り)を食べる。濃いめの出汁が空っぽの胃にしみこんでいく。

 今日の目的は、第2レースの2歳未勝利戦。私が仲間内のPOGで指名したアルママ(牡2、父・オルフェーブル、母・ホエールキャプチャ)の2戦目である。デビュー戦を札幌競馬場まで観に行った(7月28日)くらい期待している馬なので、東京競馬場なら言わずもがなである。馬券は、一か八か単勝にぶちこんだ。

 アルママの前に、新潟の第1レースをモニターで見る。障害未勝利戦に、私がずっと応援しているトラスト(牡4、父・スクリーンヒーロー、母・グローリサンディ)が出走したのだ。デビュー前に彼が牧場にいた時にたまたま出会って(当時はまだ名前がついておらず、「グローリサンディの2014」と呼んでいた)、その可愛さに魅了されて以来ずっと追いかけてきた。レースの結果は、ぶっちぎりの1着。初障害で不安だった飛越も見事なものだったし、そうなれば足の早さは群を抜いているから、当然こういう結果になるだろう。単勝(3.8倍)を1000円買っていたので、幸先の良い1日のスタートが切れた。トラストくん、ありがとう。障害レースを続けるのだとしたら、今まで以上に怪我には気をつけて、これからも頑張ってね。

 パドックの最前列に陣取り、アルママの登場を待つ。馬体重は440キロ。3ヶ月前のデビュー戦の時より10キロ増えたが、それでもまだかなり小柄な部類だ。歩く様子も、どうにも落ち着きがない。落ち着き具合だけでいえば、デビュー戦の時のほうがあったかもしれない。要するに、まだ子どもなのだ。一応1番人気ではあるが、冷静に考えてみればかなり危険な1番人気である。

 レースは、残念ながらパドックでの不安が的中する結果となった。スタートを無難にこなして中段につけたのだが、明らかにスローペースなのでそのまま前に行けばいいものを、付いていけなかったのか、騎手が抑えたからなのか、その両方か、段々と後方に下がってしまう。ようやく最後の直線に入ってから伸び始めたが、その時点では既に前にいる馬たちとの差は絶望的なものになっていた。結果は、6着。大前提として、馬の実力的にまだまだ成長不足ということはあるだろう。しかし、今日の敗因の大半は騎手にあると思う。そう思う理由はふたつ。ひとつは、明らかなスローペースに対応できずに無策のまま後方に下げ、そのまま留まったこと。道中で行きたがっている馬と喧嘩してまで手綱を引いていたことから、騎手の意思で後方に留まったものだと類推する。もうひとつは、最後の直線に入っての追い出し方で、右鞭を打った直後に無理やり右側へ進路変更をしたこと。基本的に馬は鞭を打たれた側とは反対方向に進路を取るように教育されているため、右のスペースへ誘導するなら左鞭を打つのがセオリーだ。右鞭を打たれて左方向のスペースに頭を向けた馬に対して、直後に手綱を使って無理やり右を向かせるようなことをしていては、スピードを上げられるわけがない。騎手のミスで負けた(と感じた)ことはこれまでに何度もあるが、通常は「これもまた競馬ですよね」と思える。しかし、今回初めて、どうしても釈然としない気持ちになった。もちろん、私のような素人のわからない意図や事情があるのかもしれない。しかし、こちらは一応お金を賭けているわけで、文句のひとつくらいは言いたくなるのである。まあ、よく聞く野次のように「金返せ!」とまでは思わないが。次、期待しております。

 今日の競馬は終了だが、帰途につく前に、場内にあるJRA競馬博物館に向かう。

 現在、競馬博物館では、2つの魅力的な特別展示を行っている。「武豊騎手4000勝記念展」と「メジロ牧場の歴史~”白と緑”の蹄跡」である。まずは、武さんの展示へ。先日、JRA通算4000勝を達成した偉業を記念して、デビューからこれまで32年間の軌跡が様々な資料を基に紹介されている。改めて武豊というジョッキーの凄さがよくわかる内容だ。デビュー2年目でG1レースを勝ち、3年目にはリーディングジョッキー(年間最多勝騎手)になっている。今では考えられない出世ペースである。そして何より、それ以来ずっとトップクラスであり続けているのがすごい。海外にも若い頃から積極的に出ていって、数多くの結果も残している。メディア対応や話も上手で、競馬の魅力を広く発信することにも長けている。競馬は知らないけど武豊の名前は知っている、という人はたくさんいるだろう。どのような側面から見ても、不世出の名騎手であることは間違いない。彼が現役で活躍している時代に競馬ファンでいられることを、本当に幸せに思う。その幸せが少しでも長く続くように祈るばかりである。

お父さんの邦彦さんも名騎手、名調教師だった。

日本ダービーの優勝旗。武さんはこれを5回も勝ち取っている。もちろん、史上最多だ。

年間最多勝記録を更新し、212勝を挙げた時のトロフィー。

 「メジロ牧場の歴史」も、とても面白かった。今は亡き牧場ではあるが、メジロラモーヌ、メジロライアン、メジロマックイーン、メジロドーベルといった名馬を数多く輩出してきたオーナーブリーダーで、改めて振り返ってみるとその功績に圧倒される。一番驚いたのは、生産した馬を売るのではなく、全ての馬を所有してその獲得賞金で経営していたということだ。これはつまり、強い馬を作り続け、育て続けていたということである。今では到底考えられないことだ。また、調教師や騎手といった関係者が語る創業者の北野豊吉さんと、その後を継いだ妻・ミヤさんに関するエピソードも興味深かった。外国から輸入した種牡馬が全盛の時代に内国産種牡馬を重要視する姿勢や、長距離レースである天皇賞へのこだわり、目の前の勝利だけでなく人とのつながりや人を育てることに熱心だった姿など、今の競馬界で忘れられつつあるものを体現されていたようだ。牧場はなくなってしまったが、メジロの馬(血統)も、人(志)も、大切に後世へつないでいかなければならないと思う。

 最後に、こちらは常設の「競馬の殿堂」コーナーを見る。ここから先は写真撮影禁止なので中の様子は伝えづらいが、競馬の発展に特に功績があったということで顕彰された人馬が紹介されている。白黒写真でしか知らないような大昔の馬や騎手、調教師の功績も詳しく書かれていて、競馬の歴史を遡ることができる。この場所は、時間がある時に改めてゆっくり回ってみたい。

 家に帰る前に、せっかくなので美味しいパンをお土産に買って帰ることにする。府中本町から南武線で鹿島田へ出て、久しぶりに「パン日和あをや」へ。鹿島田は、駅を挟んだ両サイド、東口と西口で全く違う光景が広がっているから面白い。西口(新川崎駅側)にはタワーマンションが立ち並んでいる一方で、東口には昔ながらの商店街も残っている。聞くところによると、タワマンのおかげで街の人口は増えているものの、商店街にあるような個人商店の売上にはそれほど貢献がないらしい。また、これは武蔵小杉などでもよく聞く話だが、タワマン開発に街のインフラが追い付いていないのが最大の問題点だということだった。確かに、保育園とか超が付くほどの激戦なんだろうなと思う。

 駅から10分ほど歩いて「パン日和あをや」に到着。お店に入ってすぐ、店主さんから「2階に大久保先生いらっしゃってますよ」と教えて頂く。私の出身大学・学部・専攻の先生で、現役時代に直接教えて頂いたことはなかったのだが、「フィールドノート」というブログをずっと読んでいる。ブログで紹介されていたことがきっかけで読んだ本や行ったお店もたくさんある(ここのお店もそのひとつだ)。そもそもこのブログを始め、続けているのも先生の影響だ。初対面だけどずっと前から知っているような、感覚的には芸能人に会ったような感じで、普段は初対面の人と話す時もあまり緊張しない私だが、やけに緊張した。初めてお会いした第一印象は、良い声だなー、だった。ブログを通して外見はわかるし、雰囲気も何となく伝わってくる。しかし、声はわからない。私の中で勝手にイメージしている声もあったのだが、全然違った(イメージしてたのも良い声ですが…)。また、先生が私のブログに目を通してくださっていることを知り、恐縮すると同時に嬉しかった。一方で、お会いしたらお礼を言おうとずっと思っていたのだが、たくさんの言葉が浮かんできたのと緊張していたのとで、うまく言えなかった。要約すると、「先生(のブログ)から影響を受けたおかげで人生の充実度が増してます。ありがとうございます!」ということを伝えたかった。しかしまあ、お会いできただけでも幸運なことだ。先生、一緒にいらっしゃった卒業生さん、お話中だったのに、お時間を頂いてありがとうございました。

 食パンとクロワッサン(チョコレート)を購入してお店を出る。今日、ふと思いついてここへ来て良かった。かなりご無沙汰だったにも関わらず、私のことを覚えていて、先生につないでくださった店主さんにも感謝である。ありがとうございました。

 14時前に帰宅。妻と一緒に買ってきたばかりのパンを食べる。食パンはそのままトーストで。クロワッサンもトースターで温めて食べる。やっぱり、美味しい。こうなると、一番好きなベーグルがなかったのが悔やまれる。この美味しさを思い出してしまうと、逆にどうしてもベーグルが食べたくなってしまう。

 妻と娘と3人で、岸根公園までお散歩に行く。2人が芝生でまったりしている間、私はウォーキング。私の後に、妻も1周だけ歩いていた。行き帰りも含めて、1時間15分で5.8キロを歩いた。

 夕食は、生協で注文していた鯵のたたきを丼ぶりにしたのと、おかずに煮物と鴨のロースト。少し不思議な組み合わせだ。鯵のたたきは不思議な味で、甘さが強かった。美味しいといえば、美味しい。

 夜、テレビでプロ野球日本シリーズの第1戦を見る。結果は、2対2で延長12回引き分け。試合時間が4時間半を超える長丁場で、両リーグを代表するチームの意地とプライドのぶつかり合う、とても良い試合だった。当初、パ・リーグを優勝した西武が出てこないのでいまいち気持ちが盛り上がらないと思っていたのだが、ソフトバンクさん、大変失礼いたしました。明日以降の試合も楽しみだ。