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ペガサスの祈り

2020年04月18日 19時56分40秒 | 音楽ネタ

スティーブ・ミラーって、やっぱペガサスのイメージなんだね。

近頃、スティーブ・ミラー・バンドがちょとしたマイ・ブームである。きっかけは、よく分からん(笑) なんというか、数年に一回は何故かスティーブ・ミラーが聴きたくなる事がある。

スティーブ・ミラー・バンドといえば、去年『ウェルカム・トゥー・ザ・ボルト』という編集盤が出ていて、タイトル通り、デモテイク等の蔵出し音源を集めたもので、CD3枚組+DVDというボリュームだが、ファンにとってはたまらん内容だろう。しかも、日本発売されてる、というのが凄い(苦笑) 自分で買うのは遠慮したけど(笑)

その代わりと言っては何だが、検索してたら、3年程前にベスト盤が出ていたのを知った。それがこの↑『Ultimate Hits』である。日本未発売だけど^^; 2枚組と1枚物の両方が出ていて、迷った挙げ句1枚物を買った。が、今にして思えば、2枚組でも良かったかも^^;

このベスト盤の1枚物の方だが、22曲収録のうち14曲が、1976年の『鷲の爪』及び1977年の『ペガサスの祈り』からの選曲である。想定内ではあるが(笑) それらに、「ジョーカー」と「アブラカダブラ」の2大ヒット、未発表のライブテイク等を追加しただけと言えなくもない、ほとんど『鷲の爪』と『ペガサスの祈り』(笑) ま、分からなくはないけど、いいのかそれで、って気もする(苦笑) 2枚組だと、この2枚からの選曲は多いけど、全体的にはスティーブ・ミラー・バンドのキャリア全般から満遍なく選んできた感じなんで、不公平感は少ないかも(笑) ただ、ライブテイクが多いのがちょっとなぁ^^; 1枚物で、例の2枚からの曲をもう少し減らして、初期とか80年代とかの曲をもうちょっと入れてくれれば完璧だったのに、という気がする。

とはいえ、スティーブ・ミラー・バンドのキャリアに於いては、『鷲の爪』『ペガサスの祈り』の2枚は、当時大ベストセラーだったし、代表作であるのは間違いない所だろう。けど、この2枚以外でも、1974年の「ジョーカー」や1982年の「アブラカダブラ」だって全米No.1になってて、スティーブ・ミラーにとっては、代表作であることに違いはないはず。何故、『鷲の爪』『ペガサスの祈り』ばかりが特別扱いされるのか。単に人気ある、というだけでなく、当の本人にとっても思い入れが深いのか。分かるような分かんないような(笑) 前述したけど、特に『ペガサスの祈り』以降、ベスト盤やライブ盤等々で、ジャケットのモチーフがペガサス、というのもやたら多くて、売れたとかお気に入りとかいうだけではない、何か特別なものがあるのだろうか。

ただ、僕にとっては、特別なんである(笑)

スティーブ・ミラー・バンドは、サイケデリックなブルース・バンドとして、サンフランシスコで結成され、1968年にデビューした。初期のメンバーにはボズ・スキャッグスやベン・シドランがいたのは有名な話。ポール・マッカートニーとも親交があった。その後、スティーブ・ミラーは自動車事故で首を痛め、長期間活動を休止する。

1974年に突如復帰していきなり「ジョーカー」の全米No.1ヒットを放つが、再び隠遁生活。そして、1976年に『鷲の爪』を大ベストセラーにして、再び復活するのである。当時、僕は中学生だったが、偶然耳にした「ロックン・ミー」のあまりのカッコ良さにノックアウトされ、実はかなりスティーブ・ミラー・バンドもマークしていた。アルバムも、当時は買えなかったので、FMでこまめにエアチェックして、シングル曲以外も聴いてた。前述の「ロックン・ミー(全米No.1)」だけでなく、「テイク・ザ・マネー・アンド・ラン(全米11位)」「フライ・ライク・アン・イーグル(全米2位)」等のシングル曲は、どれもカッコ良くて大好きだった。ほんと、よく聴いてたな。今でも「ロックン・ミー」を聴くとワクワクする。僕にとってスティーブ・ミラー・バンドは、ロックを聴き始めた時期の思い入れの深いアーティストとして、クイーン、ベイ・シティ・ローラーズ、スイート、エアロスミス、キッスあたりと肩を並べる存在だったのだ。

ちなみに、↑の写真でもお分かり頂けるかと思うが、僕の持ってる『鷲の爪』のLPは、後年廉価で再発された時に買ったものだ。1982年だったかな。改めて聴いてみて、シンプルなサウンド・プロダクションに感じ入ってしまった。実はシブいアルバムだったのだ。中学生が聴くにはね(笑) シングル曲もいいけど、「星空のセレナーデ(Serenade For The Stars)」「ザ・ウィンドウ」あたりも良い。ここいらは『Ultimate Hits』にも収録されている。

スティーブ・ミラー・バンドが売れてた頃、ピーター・フランプトン、フリートウッド・マックと並んで、”3大サクセス”なんて言われてたような気がする。デビューして10年前後のベテラン達が、浮き沈みを経験しながら、若者だけでなく大人にも受け入れられる音楽を作りベストセラーとなった、という共通項が、この3組にあった訳で、あの頃は10年でベテランなんて言われてたんだな、と思いつつ、ストーンズやポール・マッカートニーの事をベテランと言う人はいなかったので、やはり、10年の間に不遇も経験した人達を、ベテランと呼んでた気がする。

『鷲の爪』の翌年『ペガサスの祈り』が出た。こちらは、先行シングルの「ジェット・エアライナー」がFMでよくかかっていたせいもあり、結構話題になった気がする。当時、NHKの『100万人の英語(たぶん^^;)』という番組があり、それのテキストに、その時点の洋楽ヒットの歌詞が載っていて、「ジェット・エアライナー」も載ってたのを見た記憶があるので、それなりに人気だったのだろう。同じく洋楽好きの友人が早速LPを買ったものの、今イチだったらしく、安く譲ってくれるというので買い取って、毎日のように聴いてたなぁ(ちなみに、そいつはフリートウッド・マックのファンだった)。確か、1977年の11月頃のことで、12月になってから、クイーンの『世界に捧ぐ』に、ヘビロテが切り替わったような(笑)

『ペガサスの祈り』は、中学生の耳にも、サウンドも曲も前作よりポップで分かりやすくなったという印象だった。スリーピースでシンプルに録音された『鷲の爪』に対し、『ペガサスの祈り』はメンバーが増え、キーボードも加わって、音が華やかになった感じ。スティーブ・ミラー以外のメンバーが書いた曲も数曲収録され、バラエティに飛んだ内容で、飽きのこないアルバムだった。シングルになった「スイングタウン」、『Ultimate Hits』にも収録されている「激しい恋(The Stake)」、レス・デューデックが参加した「孤独の旅(Sacrifice)」、牧歌的なインスト「森の散歩(Babes In The Wood)」あたりが好きだったな。

余談だが、このアルバム、収録曲は『鷲の爪』の時に既にレコーディングされていたらしい。ただ、その割には、前述したけど、『鷲の爪』にはいなかったメンバーもいるし、そのいなかったメンバーが書いた曲が収録されているので、全曲『鷲の爪』のアウトテイクとは信じがたい。アウトテイクにオーバーダブをして、同時に何曲が新たに録音したのではなかろうか。でないと辻褄が合わない気がする。どうでもいいことですが(笑)

その後、またスティーブ・ミラーの消息を聞かなくなってしまったが、1981年の秋頃、また突如スティーブ・ミラー・バンドは復活する。復活第一弾シングル「Heart Like A Wheel」とアルバム『愛の神話』はパッとしなかったが、翌年半年ほどのインターバルで出してきた「アブラカダブラ」が予想外(失礼)の大ヒット。「ロックン・ミー」以来の全米No.1となり、スティーブ・ミラー・バンドは、またしても第一線に返り咲いたのであった。ドラマチックちゅうか何ちゅうか(笑)

この「アブラカダブラ」という曲、元々肩の力が抜けた飄々としたイメージが、スティープ・ミラー・バンドの持ち味とはいえ、その力が抜けたというかやる気がないというか、そんな一種脱力した雰囲気全開の曲で、それなりに好きだったけど、まさかこんな大ヒットになるなんて思わなかった(笑) なんか、間奏のギターソロも、これをソロと呼んでいいのか、みたいな脱力した感じで、アイデアはいいんだけど...好き嫌いもあるが、とにかくどう評していいのか、扱いに困る一曲だった(笑) 好きだったけどね^^;

ともあれ「アブラカダブラ」の大ヒット後も、スティーブ・ミラーはバンド或いはソロ名義で、80年代はアルバムをリリースし続けたが、90年代以降はすっかり動向を聞かなくなってしまった。が、2010年頃に復活し、その後はマイペースながらも着実に活動しているらしい。そういう話を聞くとホッとする。

とにかく、このスティーブ・ミラーという人、なんか掴み所のない人で、キャリアも長くて、全米No.1ヒットを3曲も持っている割には、地味というか評価が低いというか、熱心なファンが多いという話も聞かないし、人気があるのかないのか、よく分からない。ギター・ヒーローという感じでもない。もちろん、『レコード・コレクター』で特集されたこともない(笑) 僕も、よく聴いていた時期もあり、思い入れ深いアーティストではあるのだが、かといって、ずっと聴き続けていた訳でもなく、言うならば、普段は忘れてるけど、ふと思い出すと、やたらと聴きたくなるタイプ。我が家では、『鷲の爪』なんて、2~3年に一度はヘビロテになってたくらい(笑)

そんな(どんな?)スティーブ・ミラー・バンドだが、『Ultimate Hits』のおかけで現在マイブームのうちにと思い、『鷲の爪』以前の『ジョーカー』や『セイラー』といった旧作をカートに入れてみた。いずれ注文する事になるだろう。改めて、あの飄々とした世界に浸ってみたい。ま、初期のボズ・スキャッグスとやってた頃は未聴なんで、どんな雰囲気か分からないけど^^; あと、例の「アブラカダブラ」、アルバムも当時FMで聴いて、なかなか良かったような気がするので、改めて聴いてみようかな、なんて思っている。アマゾンのレビューによると、80’s風のバリバリのシンセポップらしいけど(笑)

『レコード・コレクターズ』と言えば、最新号の特集は「究極のギター・ソロ:ロック編」である。毎月のレココレの発売日の度に、レココレも本気でネタないんじゃないか、なんて思ってしまうが(爆)、とにかく、そんなヒマネタで、要するにギター・ソロの名演をリストアップしてる訳で、何も考えずに読んでたら、なんとスティーブ・ミラーの「ジョーカー」がランクインしてたので、マジ驚いた(笑) 「アコギのアルベジオで曲をふくらませていって、ワウを活かしたソロに持っていく展開は頭脳プレイと言っていい」と書かれている。ちなみに、執筆者は和久井光司氏。うむ、なるほど。あの飄々としたプレイは、実は高度に計算されたものだった、という訳か(笑) ソロと言えば、前述したけど「アブラカダブラ」のソロも、考えようによってはかなり凄い。誤解を恐れずに言えば、“弾いてない”ギターソロなのである、これは。

なんとも奥の深いミュージシャンなのだ、スティーブ・ミラーという人は。

ふと思い出したが、前に、スティーブ・ミラーについて、“この人の音楽は小唄みたいなもんです”と言ってるのを聴いた事がある。誰が言ったか知らないが、全くもってその通りと思う。何度も書いてるが、飄々として何とも掴み所がないけど、そこがスティーブ・ミラーの最大の魅力なのである。分かってくれる人は少ないかもしれないが^^;

Big old jet airliner, carry me to my home
Big old jet airliner, cause it's there that I belong 


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