Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

うの華3 125

2021-03-15 15:42:27 | 日記
 「子供の話は要領を得ない物だ。」

昔からそうでね、どっちが如何と、真相は結局はよく分からない物なんだよ。彼女はどっしりと構えると、悟り切った様子で目の前の子に語ってみせた。

 だが、彼女は、孫姉妹の姉の方が伏せようとしている事柄に、何とはなく気付いていた。姉妹の祖母である彼女は、かつて彼女達が幼い頃にこの一つ家で、同居すると何年間かは家族として皆で仲良く共に暮らして来たのだ。そこには彼女の四男である未だ独身時代の四郎もいた。

 四郎は彼女達にとっても、他のいとこ達同様顔馴染みの仲良しの叔父さんであった。無論、彼女達も四郎のトラウマの現場に何度か遭遇していた。幼い頃はどうでも、今や歳が進んだ彼女達は、他の歳下のいとこ達とは違う見解を持つ年齢に迄達していた。叔父が単に虎や馬の真似をしているのでは無い事、誰もがそんな馬鹿な真似等はしないという事や、よしんば動物の真似をする人がいた場合でも、その場合は自分達の叔父とは様変わりした光景を展開していた。姉妹2人が両親とこの家を出てから、祖父母や叔父と離れて暮らす内に、もうある程度世情に慣れた2人は、もはやこの家の人々に対する第三者の目というものを持つ迄に至っていた。年齢的にも、客観的に物事を捉える様な歳に迄2人は成長していたのだ。その為2人にとって常とは違う言動の叔父は、今や奇異な人物でしかなかった。四郎叔父は、いつしか幼い頃の2人が慣れ親しんだ、自分達の父の弟、身近な家族、仲良しの親戚のお兄さんではなくなっていた。

 その為、その四郎叔父の子に当たるいとこの智という子に対しても、2人はどの様な子なのだろうかという危惧を持っていた。親戚の子供同士という親近感と、あの異常な叔父さんに繋がる子なのだという奇妙で空恐ろしい感情。この相反する感情がこの姉妹の胸の内、否、彼女達の親である一郎一家の胸の内に不穏な暗い影を落としていた。その影は透明な水に流された墨流しの墨の様に黒い筋を引いて渦を巻き、彼等一家の胸の内に闇の部分として広がろうとしていた。

 さて、祖母である彼女にとっては、孫娘達の生来の気質が手に取るように分かっていた。生まれて直ぐの2人を彼女はずうっと見て来たのだから。姉の性格や妹との関係、その妹の子の、姉との関わり合いの中での成長の様子。2人の関わり合いの仕方等。どんな時に何が有りその都度2人が如何言動してきたかを、祖母である彼女は確りと把握していた。彼女は既に気付いていた。お姉ちゃん怒って…と言う妹の方の孫の言葉に、姉の癇の強い様子が直ぐに彼女の脳裏に思い浮かんだ。

『私に似たんだねぇ』

彼女は内心呟いた。姉さんも、子供の父親の一郎も、両親共に癇癪は強く無かったからねぇ。彼女は溜息を吐いた。

 『そう、あの子の事だ、直ぐに負けん気で遣り返したに違いない。』

彼女はそう思うと顔を曇らせた。自分に性格が似ている、姉はましてや自分達夫婦の初孫だ、可愛く無い訳がなかった。しかも自分と同性の女の子だ、祖母の自分にとっては誕生が嬉しくて仕様がなかった子だった。

 彼女は、最初の孫の仕出かした事の結果を見たくは無かった。見たくは無いけれど、と思う。彼女はこの家の主の妻、この家で起きた出来事に対して何らかの裁断をしなければならなかった。何しろ今現在夫はこの家から留守なのだ。ここで自分が主人の名代として、事の次第を把握すると、何らかの決着をつけなければならなかった。彼女は嫌々ながら仕方なく、おいでと、目の前の孫を近くに呼び寄せた。

 頭は?、痛い所はないかい?、彼女は自分の直ぐ間近に来た四男の孫の方にそう尋ねた。それからどれと、ちょっと顔もお見せと言ってみる。「叩かれた?お姉ちゃんに。」等。如何やら叱られそうだと元気無く寄って来た孫に、彼女は如何にも気乗りしない声と様子でそれとなく問い掛けてみる。

 「あれであの子もいい姉さんなんだよ。」

元気無い笑顔を浮かべ、彼女はそう孫の姉娘について目の前の子に取りなしてみる。自分似である長男の長女について、彼女には容易にその行動が想像出来た。両方の孫の祖母でもある彼女は、今目の前にいる孫にあれこれと言葉を掛けて、その顔色を読み取ると、家の階段側で起きたらしい喧騒の真相を、そこはやはり確実にと探ってみるのだ。




うの華3 124

2021-03-15 09:47:47 | 日記
 元はと言えば、お前が女の子の、…。彼女は廊下の奥から聞こえる声に耳を澄ませた。…あの様子では顔だね。お前、頬を打ったんだね。

 彼女は顔を顰めて、咎める様に目の前の孫を睨んだ。そうして言った。

「それはぐーじゃないよね。」

と、ここで彼女は孫に向けて、これは何とも、如何にも驚いたという風に自分の顔付きを変えてみせると、目の前の子供に向かって「ぐーなのかい?。」と、あからさまに驚いて大仰な声を上げた。これは捨てておけないねぇと、物言うこの彼女の口調も、如何にも大袈裟で芝居がかってみえた。孫の方は訳も分からず、自分の目の前で繰り広げられる彼女の奮闘劇に怯えたり目を丸くしたりしていたが、最後にはポカンとその口を開けて彼女を見上げるばかりだった。

 でんでんで…

さて、到頭こちらへ向かう音高い足音が廊下から聞こえ始めた。と、一寸待って、お母さん。と言う慌てた声が足音に混じった。この声は女性というか、決して子供っぽい声では無かった。その声は行かないで欲しいと言っていた。それは廊下をこちらへ向かって音高く歩いていた足音の主を引き止めていた。まぁ、何をお前、…。お前が気にする事ないのだと、その手を離しなさいと険しい女性の声がした。その後、廊下の足音は数人が入り乱ればたばた続く気配だったが、引き止めた方の声があれこれと話している気配が伝わった後、急に廊下での複数の足音は静まり、伝わって来るのは人の話し声だけとなった。

 「輪、輪って、輪投げで遊んでたんでしょう、お前達皆で。」、これは自分の長男の嫁の声だ、彼女は思った、『輪投げと言った様だが、はて、何の事だろう。』。ここで廊下にははっきりと女の子らしい声が入って来た。

「輪投げなんてしてない、わっ!したの。」

お母さんたら、輪投げなんて向こうに無かったわ、と言うその声に、彼女は『確かに、家には輪投げなんて無い、あの子の言う通りだ。』と合点しながら、彼女は廊下にいる、孫娘の1人が言うワについて腑に落ちず首を傾げた。

『さて、ワとは何の事かしら?。』

 続いて廊下にいる姉妹の妹の方の話は続く。あの子避けて、お姉ちゃんが階段にドン…、それでお姉ちゃん怒って…、「しっつ!。」、何です、はっきりお言い。分かる様に言っておくれ。と、こう言う姉妹の母の声には未だ怒りが含まれていた。すると、もういいわ、私から言うからと、姉妹の姉の方が説明を始める気配だ。

 やや有って後、「すると、」と、嫁の気落ちした声がした。未だ姉の話は続いている様だ。…、「じゃぁ、お前が自分で打つけたのかい。」。それで、それでと、姉の方は言い淀んで来た。「何です?。はっきりお言い。」と嫁の声。姉妹の姉の方は、もういいじゃないか、あの子は悪くないのだと分かったのだから、と、母に訴えている様子になった。智ちゃんという子も元気そうだし、ここは帰った方がいいと自分の母を促した。子にそう促された母も、そうだねと言うと帰ろうかと言いだした。

 この廊下の嫁と孫娘達、母娘の遣り取りを耳聡く彼女は聞いていたが、途中から目の前の方の孫に目配せすると、彼女はニヤッと笑った。如何やら風向きが変わってきたね、と孫に呟く。その内目を輝かせると、智ちゃん、何もしてないんだねと、安堵の笑みを浮かべて孫の顔を見やった。やれやれと、彼女の身は緊張が解けて緩やかに安らいだ。これでお前を叩かなくて済みそうだ。彼女は独り言を呟いた。「それにしても何が有ったというのだろうか。」。

今日の思い出を振り返ってみる

2021-03-15 09:15:22 | 日記

うの華 181

 『お金の事を話さないで食べてしまった。』私は後悔した。 そうだ、この事が私の胸に痞えていて私はパンを食べたく無かったのだ。私がそう気が付いた時には全て後の祭りだった。私は......

    良いお天気になってきました。本当に春らしくなって来た3月中旬です。
    昨日、Go・to・eatのポイントを使って食事に行って来ました。昨年末、こちらのサイト利用で貰った食事ポイントが、1回だけだったので、使うのも今回1回だけです。お店によって申し込みサイトが違うので、5月末迄に使えるサイトはその内に。世情を見て考えたいです。
    世の流れに呼応して、我が家もGo・to・eatの途端にちょんと乗ってみました。今年のコロナ拡大の様子に、ポイントを使う機会無く過ぎそうと感じていましたが、思い立って使う事が出来ました。使えて良かったです。
    昨日は丁度ホワイトデー。食事がチョコレートのお返しになったとか。そうか、予約は私がしましたが、支払いは家族でしたからね。次回からは、お膳立てもしてもらいたいな、と、思ったりした私です。年齢的に、ネット操作がそろそろ負担ですもの。😅