眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

【将棋ウォーズ自戦記】食いついても時間がない

2021-12-07 22:22:00 | 将棋ウォーズ自戦記
 角交換振り飛車を指してみたくなった。主な興味はその始まり方だった。角道が通ったままで飛車先を角で受ける。銀はまだ初形の位置のままだ。いつでも居飛車から角を換えて飛車先を突破してくる手が考えられる。そうなったらどうなるか。とりあえず飛車をぶつけてそれでどうなるか。よくわからず激しい展開になるのも面白い。(3分切れ負けでは、本格的持久戦にでもなれば詰みまでいかない恐れもある。勝っても負けても詰みの周辺までいくというのは1つのテーマだ)

 しかし、居飛車側も警戒してなかなか単純に飛車先から攻めてくる相手は少ないようだ。実際そう上手くはいかないのだろう。相手は角交換から自陣角を打ってきた。本格的な指し手だ。桂を守るため金を左に上がり、以下雁木のように構えた。相手は居飛車穴熊に組んできた。こちらも負けずに穴熊に入る。しかし、僕の方は左右に金銀が離れていて明らかに堅さで劣る。

 いよいよ相手は飛車先を交換してきた。金と下段飛車の守りが利いていて、すぐに飛車を成り込むスペースはない。できるものならこの瞬間に手を作って反撃したい。僕は居飛車陣に角を打ち込むことを考えた。失敗したら角が捕獲されてしまうかもしれない。飛車先からもっと酷い反撃をあびるかもしれない。激しく動くとすれば本来は読みの裏付けが必要だ。しかし3分切れ負けでは読みを入れる暇はない。それでも10秒、20秒と考え込んでしまう。(このルールの中では長考だ)時間をかけて考えた以上は、何かしたい。何もしなければ考えた時間が無駄になる。そう考えるのは人間の自然な心理(将棋あるある)ではないだろうか。

 僕は意を決して敵陣深く角を打ち込んだ。相手は一瞬手を止めた。(そうでなければ勝ち目がないと思えた)それから飛車先に歩を垂らしてきた。嫌な手だ。ここでと金を作られては論外。

「攻められた筋に飛車を」

 本当なら飛車を転回して反撃含みで受けたい。その時、僕の飛車は中飛車になっていて中央の歩を守っていた。(居飛車の自陣角が少し前に歩頭にのぞき中央を狙っていたのだ)左右分裂の罪か。僕はやむなく歩を謝って受けた。ここは大人しく辛抱して、馬の活用を楽しみにするのだ。
 相手は桂をさばいてきた。その間、僕は馬を作り香得という小さな戦果も上げた。形勢はまずまず。そう思っていると相手は中央に桂を打ってきた。単純な銀取りだ。

「何だこれ?」

 これなら何とかなる。そう思ったが具体的にはよくわからない。銀の逃げ道は2カ所あった。桂先の銀は自然。下に引く手もある。飛車の頭に銀とは凹んだ形だが、自陣はより堅いかもしれない。桂取りにいく楽しみも残せる。しかし、銀を逃げると守っていた歩が浮いて飛車が走ってくる手が成立する。それに対して歩で受けると更に横歩を取られてしまう。それが自陣の金と敵陣にできた馬の両取りになる。銀を逃げることは可能だが、それによって浮き駒が多発し相手の攻めが活性化する恐れがあった。

「何だこれ結構うるさいじゃないか!」

 むしろ逃げない方が正解なのか。しかし具体的にどう指せばいいのだ? こういうのが一番困る。相手の手に乗っていい感じで指していたのに、急に乗れなくなったら困るのだ。こういう時、本当は胡座になって何時間も考えてみたい局面だと思う。仮にそれほど時間をかけて考えたとしても、僕の実力では最善手を導くことはできないだろう。読んでも読んでも明快によくなる順はみえず、時は迷いの中に消えていく。最後は自分で最もよくわからない手を選んでしまうのではないだろうか。

 わからないものはわからない。(将棋の神さまなら1秒でわかるのだろうけど)だから、僕にとって3分切れ負けは「考える」ことからの逃避でもあるのだ。(目指すところは考えない将棋?か)

 焦りの中で銀を逃げた。飛車をさばかれ、横歩を取られ、両取りを香打ちで凌ごうとしたが、あっさり馬と交換され、直後に端角を打たれた。それがまた成香と飛車の両取りだ。(自陣に守るだけの飛車が目標になってしまった)ぽんぽんと両取りがかかりまくるようでは、どうも攻めている方が調子がよい。勝負の観点からは、中盤の難所で一方的に持ち時間を削られたのが致命的だった。(3分切れ負けは、基本的に1秒2秒で指し続けるようなゲームかと思う)

 終盤は居飛穴の玉頭に桂香を集中させ、何とか食いつく形にはなった。チャンス到来かと一瞬期待したが、肝心の時間で負けていた。その場合、食いついただけでは(寄り筋になっていなければ)意味がない。相手は自陣に惜しまず駒を投入して、順当に時間切れ負けとなった。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする