眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

【創作note】瞬間メッシ

2021-02-28 10:37:00 | 【創作note】
 僕は決して上手い方ではなかった。スピードもパワーも持ち合わせていない。だけど、たまたま上手く行くこともある。いい形になったり、調子がよかったりして、やたら上手くシュートが決まることもある。相手との力の兼ね合いも大きい。よいパサーに助けられたり、チームのバランスが最大限の力を引き出してくれる場合もある。そんな時には、スーパーなゴールだって決まることがあるのだ。
 多くの選手は、瞬間的にはメッシになることができる。

「滅茶苦茶上手いですね!」
 休憩中に見知らぬ選手が声をかけてくれたことがあった。
(努力の成果か、トリックか、どちらでもいい。うれしかった)
 その時の彼の目に自分はどう映っていたのだろう。

 生きることは、よい行いを再現しようとすることかもしれない。

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【短歌】みんなの短歌

2021-02-27 10:32:00 | 短歌/折句/あいうえお作文
愛犬が表をかけるカテゴリの
削りに漏れた硯に詩歌
(折句「アオカケス」短歌)


上の句で尽きた言の葉結べない短歌が溜まる下書き倉庫

手短にまとめてみせるメソッドの裏でくつろぐ短歌生活

転んだら歌を拾って起き上がる歌人は強く逞しき人

理想から遠く離れた暮らし向き歌ってみればみんなの短歌

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星食べよ

2021-02-26 01:19:00 | 短い話、短い歌
しんちゃんが一番星をみつけたとキラキラ笑い僕に言ったの


 僕はそれより先にみつけた星があったとは言えず、こっそりと空から引き抜いてポケットの中に隠した。しんちゃんがうれしそうなことが一番だから、その気持ちを台無しにすることはできないから。言わなかったことは、うそをつくこととは違うよね。ねえ、しんちゃん、明日は晴れるよ、気持ちいいよ、どこか行こうか、ねえねえ、どこ行こうか、海がいい……。
「今日はいつもよりも明るいね」
 しんちゃんが疑いの眼差しを僕に向ける。ポケットの中で、星がだんだんと成長しているからだ。もっと明るくなる前に、僕はこの星をこっそり食べてしまうんだ。
「ねえ、しんちゃん。ジュース買ってきてよ」
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消える人

2021-02-25 02:41:00 | 夢追い
 遙か向こうから手を上げる彼女に気がついた。その瞬間までまるで気づいていなかった。僕は思い出し笑いをしていたかもしれない。おかしな顔を見られてしまったかもしれない。一瞬そう思ったがそれには距離が遠すぎた。見つけるのが(知らせるのが)あまりに早すぎるのだ。まだ十数メートルもある中で、合図した以上は意識せずにはいられない。顔を合わせるのは久しぶりだった。何週間、それ以上かもしれない。どう声をかけようか。立ち止まった方がよいだろうか。周辺視野の奥にずっと彼女の存在が浮かんでいる。もう少しだ。
 彼女は不意に彼女の右を指さした。

「私はこっち……」
 唇がそのように動いた。
 そちらは駅の方向ではない。
 そちらには何もない。何もない風景が無限に開けているだけなのだ。どうして……。僕は彼女にたずねることも追いつくこともできない。

(みつけておいて消えるなんて)
 おかしな人だな。

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【短歌】終わりなき駒音

2021-02-24 10:56:00 | 将棋の時間
カテゴリが幕を開いた一日に
短歌は月に着地して鳴る
(折句「かまいたち」短歌)


勝ち切れぬ残り1分手が泳ぎ「必勝だけど切れ負け将棋」

敵に恵まれて始まる対局の最後「やっぱり人間がいい」

駒音が大激戦を物語るフェイク「あいつは夜の爪切り」

理性より愛に流れて四間飛車「マイナス100のハンディをあげる」

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タッチパネル(宇宙回転寿司)

2021-02-23 10:56:00 | ナノノベル
「言うほど大きくないね」
「いや、見た目の大きさじゃない」
「えっ? じゃあ……」
「よく味わって食べなきゃね」
「うん。何か今まで食べたのと違う」
「そりゃそうさ。スケールが違う」
「へー」

「今、ここにたどり着いたのは300年前に職人が握った寿司だ」
「えーっ! 大丈夫なの」
「ここの回転寿司は1つの銀河になっている」
「わーっ、何か吸い込まれそう」
「大丈夫。僕たちも宇宙の一部だよ」

「わかったよ。ネタじゃなくて時の大きさだったんだ」
「そうだ。時をよく味わって食べなさい」
「ああ。消えていくのが惜しいくらい」
「そうか。旨いか」
「だけど新鮮な感じ。今握ったみたいだ」
「旨いものは時を超えて旨いということさ」
「ああ。美味しかった!」

「もっと頼むか?」
「うん、でも……」
「そう。すぐには届かない」
「やっぱりそうだよね」
「だけど、注文は通しておこう」

「どうして、パパ?」
「バトンタッチさ」
「何のリレーなの?」
「未来の僕たちのために」
「次の人が食べるんだね」
「さあ、好きなものを」
「よし、これだ!」
「ナイスチョイス!」

「あれ? 反応しないよ」
「どれどれ。うん?」
「変だな」
「仕方ない。店員呼び出しだ」
「どこ?」
「一番左」

「これだね。押した」
「よし」
「来るかな?」
「その内に来るさ」
「どこからくるのかな……」
「あれじゃないかな」
「何?」
「ほら、あそこ光ってる」
「あーっ! 何か近づいてくる」



1月の光回転寿司を追い君は未来へ消えていったの

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タヌキ・オン・ザ・ストリート 

2021-02-22 06:05:00 | ナノノベル
「この辺りにお蕎麦屋さんは?」
「ああそれならすぐそこですよ」
「よかった。近いんですね」
「もうすぐそこですよ」
「ちょっと教えてもらってもいいですか」
「もう近づいています」

「えっ?」
「もう来てますよ」
「えっ、どこどこ」
「近づいてますよ」
「見えます?」
「来てます。打たれてます」
「打たれる?」

「いらっしゃい。何しましょう?」
「あー、あなた店の人ですか?」
「はい。もう席に着いたら茹で上がってますんで」
「熱いのでもらえますか」
「タヌキの方でよろしかったですか」
「じゃあそれでお願いします」
「はいよー! タヌキ一丁!」
(へいよー! 喜んでい!)
「つながってるんですね」

「蕎麦湯をお持ちます」
「食後にお願いします」
「じゃあ覚えてたら。お客さん印象が薄いもんで」
「いやしっかり頼むよ」
「1800円になります」
「なかなかですね」
「創業200年十割蕎麦でございます」
「ほー」

「1800円いただきます」
「前金ですか」
「前金現金でお願いします」
「はあ」
「1万円お預かりさせていただきます」
(へいよー! 1万円毎度!)
「はい」

「どうぞごゆっくり!」
「えっ? どこですかお店は?」

「ごゆっくりー……」
「おい、ちょっとあんた!」

チャカチャンチャンチャン♪




駅蕎麦はオーバーゼアー曲がり角
一分あれば知るに十分

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【短歌】まあ一局の将棋

2021-02-22 00:31:00 | 将棋の時間
船囲いからの即席美濃囲い「まあこれはこれ一局ですね」

3八金初手が試した人間性「まあこれはこれ一局ですね」

正座から胡座になって矢倉城「まあこれはこれ一局ですね」

室温の1℃を巡る駆け引きも「まあこれはこれ一局ですね」

桂損と歩切れが見合う新感覚「まあこれはこれ一局ですね」

千日手含みのエンドレスバナナ「まあこれはこれ一局ですね」

襟元にカレーうどんの色をつけ「まあこれはこれ一局ですね」

昼食はマイふりかけにマイライス「まあこれはこれ一局ですね」

鶏肉がなっくなったので他人丼「まあこれはこれ一局ですね」

バターライスを差し替えてカニチャーハン「まあこれはこれ一局ですね」

AIの評価を聞いて自己修正「まあこれはこれ一局ですね」

七色のマスクを脱いですっぴんに「まあこれはこれ一局ですね」

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魔法の言葉

2021-02-21 10:36:00 | 幻日記
 深夜、いつも決まった時間になるとエレベーターが止まる。すぐに連絡をするとまもなく整備員が駆けつける。
「修理に来ました」
 毎日、色んな顔をした人がやって来るが、作業は一筋縄ではいかない。2、3時間で済むこともあれば、夜通しかかることもある。建物自体が古く著しく老朽化しており、エレベーターにしても根本的な修理は難しいようだった。

「直りました!」
 今日は日付をまたいで3時だった。
 彼らは必ず仕事をやり遂げるプロフェッショナルだ。
 直らないとは決して口にしない。
「ありがとうございます!」(またお願いします)
 機械室の鍵を返して颯爽と帰って行く。

 きっと彼らは魔法をかけたのだろう。
 魔法は語る。
 ただ一日一日を、精一杯生きることだと。

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スパイ角(ルーツ&ツール)

2021-02-20 10:42:00 | 将棋の時間
 この肩の痛みはどこからくるのだろう。
 腕? 首? 頭?
 そう単純なものとも考えにくい。それはもっと複雑な痛みのように思えた。他人の体から、遠い街から、白い雲から、夏の向こうから、癒えぬ悲しみから……。ここからは見えないところから、それは日に日に強さを増しながらやってくる。
 いったいどこから?
 それがわかれば、いくらでも手を打てるのに。

 今度は胸の真ん中にまた違う痛みが襲ってくる。
 それは目の前に正座している名人から受けるプレッシャーかもしれない。今までの相手とは別次元の強さに浮き足だった私は、すべての駒組みで後手を引く形となった。バランスの悪さを突かれ仕掛けを許すと駒損が重なり、中盤では大きな戦力不足に陥った。
 私は援軍の到着を待っていた。

 15時。
 おやつを運んできたのは女スパイ。
 名人に気づかれないように、私は特別な細工が施されたマカロンを開く。中に仕込んであるのは飛び道具一式だ。これがあれば形勢挽回は可能だ。和服の袖に潜ませながら、無事に駒台へ移動することに成功した。
 マカロンの食べられる部分を美味しくいただき、コーヒーを飲んで気持ちを落ち着かせた。一気に充実した戦力。もはや憂いはない。

(逆襲の一手は決まった)

 私は新しく加わった角を駒台からつかみ取ると2度、3度空打ちしてから、敵陣深くに打ち込んだ。
 6一角!

「先生その角は……」
 記録係がタブレットを持ちながら身を乗り出していた。

「その角はどこから来ましたか?」
「あそこだよ」
 そう言って私は未来を指す。
 名人は頭を抱え長考に沈んだ。

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セルフ・キャッチ

2021-02-19 04:22:00 | ナノノベル
「犯人の特徴は?」
「容疑者では?」
 女は冷静な口調で言った。

「男の特徴は?」
「おじさんです」
 少し待っても続く言葉はない。
「他は?」
「他?」
 そんなに難しいことだろうか。
「体型とか髪型とか何か……」
「おじさんですね」
 なんて薄っぺらい情報なのだ。おじさんがどれほどの数いると思っているのか。そもそもどこからどこまでがおじさんだというのか。

「私くらいの?」
「そうだ。あなたでした!」
「えーっ、私?」
 女の記憶は確かによみがえったらしい。

「犯人は私だ! 観念しろ!」
 私は私にお縄をちょうだいした。

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みえすぎる糸 

2021-02-19 03:09:00 | 【創作note】
 ずっと気になる糸があった。数週間前にそれに気がついた。誰も気づかないのだろうか。気づいてはいるが、気にとめるほどでもないと思っているのか。それとも、気にはなっても取る手段がないのか。(あれほど高いところだから)

 気になる糸が、垂れながら微かに揺れている。
 取れないのではなく積極的に取らないでいるということはないだろうか。(あれは著名な蜘蛛が残したありがたい糸である)
 あるいは、蜘蛛の糸などではない。(だとしたら何?)
 あるいは、そんな糸は存在していない。(幻を見ている)

 考えすぎだ。
 みんな同じように気にしている。けれども、どうしていいかわからないのだ。

 僕はいまフードコートの最後列にかけて天井を仰いでいる。
 ポメラとの対話に平行してずっと糸にとらわれているのだ。
 次の瞬間、颯爽と現れた勇者がそこに飛び上がるかもしれない。

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さよならフォーメーション

2021-02-18 05:34:00 | 夢追い
 廃棄された椅子はまだかけることができた。真夜中にミニトマトを食べるのは、クリエイティブを炸裂させたかったからだ。テーブルがガタガタと震える。近くに霊的な何かが降りてきたせいだろうか。冷たい風がおぼろげな断片をさらって行く。風だけを頼りにしたい。僕はもう空っぽになりかけていた。

 橋を渡ると爆音が響いた。トマトを持っていれば、襲撃されることはないだろう。渡り切ったところで家が反対方向だと気がついた。

 部屋のあちこちに飲みかけのトマトジュースがあった。甘いものが欲しくなって、残ったミニトマトの1つにはちみつを垂らした。はちみつの蓋が突然消えた。さっきまであったのに、いくら捜してもみつからない。いつの間にか、窓が開いている。風に引き入れられたカーテンが、ちょうど子猫のような形になった。

 本と本の間から何かわからないコードがみつかる。テレビだか、ゲームだか。何でもいい。捨てようか。何かわからないシャツも、捨てようか。シャツのようなパンツのような、わからない奴。



「さよなら」
 目も合わさない。別れの言葉がそれだけ。またねの1つもないとは、僕らはいったい何だろう。ああ、友達とは難しいものだな。
 朝が近い。おにぎり2つしか食べていなかった。
 スーパーの前では夜を通して作業する男の姿がある。開店時間をたずねると無言で上の看板を指した。8時30分。中途半端に早い。
「わしらより早いでー」
 スーツ姿の酔っぱらいが看板の下でくだを巻いていた。

 コンビニの前に立つが開かない。ドアは手動になっていた。中に入ると大勢の男たちで賑わっている。夜の間は立ち食い寿司屋になっているのだ。お弁当やサンドウィッチやアイスやお菓子やカップ麺など、昼間売られている商品の一切が姿を消していた。
「テイクアウトで」
 数秒前に入った男が大将に慣れた様子で注文している。
「4ー4ー1ー1で」
 数字が何を指すのかさっぱりわからない。

「一人前持ち帰りで」
 女将さんに言って丸椅子にかけた。
「時間がかかるから奥へどうぞ」
 奥のソファーには誰もいなかった。畳の上に新聞や雑誌が散らばっていて、隅っこには無数の縫いぐるみが山積みになっていた。
 テレビ画面に映る大家族の映像を、興味ありげに睨みつけた。
 きっと時間がかかる。前の男が凝った注文をしたからな。

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【振り飛車note】振り飛車のテーマ

2021-02-18 03:19:00 | 将棋の時間
 時間に追われ飛車を打つ。打ち下ろさなければ始まらない。しかし、即座に角を打たれて飛び上がる。よりによって打った場所が悪かった。「痛い!」叫んでも手遅れだ。飛車か玉を取られてしまう。
 角が怖い。少し気を抜いていると思わぬところから飛んでくる。飛車は当然のように強いが、本当に恐ろしいのは角の方だ。
 だから、居飛車党はやたらと角の頭を狙って攻めてくる。
 角をどのようにして守り、さばき、ぶった切るか。それが振り飛車の基本テーマとなるだろう。

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【短歌】0の教え

2021-02-17 20:17:00 | 短歌/折句/あいうえお作文
永遠がどうせの中に逡巡の
クイズに触れてさらば青春
(折句「江戸仕草」短歌)


かけがえがないと歌った教室の裏に伸び行く教師の毒牙

テキストをミルクにといてみるみると賢くなった宇宙の子供

こっくりと魔物が忍び寄る部屋の夢は現代史よりもビッグ

理科室の骨と語らう哲学は次元を跨ぐ孤独な授業

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