鋭く尖った角が突き合わされて、もう随分となる。徐々にその距離を詰めて辺り一帯に危険な空気が漂い始めた頃、ついに彼女は勇気を振り絞って彼らの前に進み出た。「喧嘩はやめなさい!」驚いたように一歩下がった。「私たちはメールアドレスを交換しています」鹿は言葉を返した。 #twnovel
謎が謎を呼んだがいったい自分が呼んでいるのが何者かさっぱりわからないのだった。呼ばれた方の謎は振り返るが誰が自分を呼んだのか見当がつかなかった。それでもどこか自分と同じような匂いがするぞ、と思う。彼らは自分について知らないまま、謎は夜の中にとけだしていた。 #twnovel
ボスからの手紙によって浮かない顔の人々が船の上に集められ謎々が出題される。「みんな楽しくやりましょう」この展開は知っている。最後には、みんなどうなってしまうか、僕は知っている。「生きたい」出かかった言葉を、呑み込んだ。みんなが楽しそうな顔をしているものだから。 #twnovel
累積で140を越えたため妄想悪行罪が適用されることとなり「よって極刑に処す」と裁判官が判決を言い渡した時、男は「俺は何もやってない!」と反論したけれど、その場にいる誰もがその言葉の正しさと空しさを充分に理解しており、それ故に何も考えようとはしなかったのである。 #twnovel
前籠に買ったばかりの薄型テレビを載せた。「おじいさん、大丈夫ですか? 前からトリケラトプスが来たらどうするの?」はははとおじいさんは笑う。「おばあさんはいつも心配しすぎだよ。誰が来るって?」人々はおじいさんの自転車を避けて通る。背後にマンモスの影が迫っていた。 #twnovel
「ランドセルを開くように……」ゴレイロが言ったのは、ミクシィにログインする心についてだった。小学生が当たり前にするようにそこに入り、自然の流れで日記をつける。ランドセル……。切なさを喚起するその文房具を、開いた記憶はない。僕はピアスをつけるようにして #twnovel をつけた。
持ち上げた店を抱えてレジへと急ぐが、どうしても順番を待つ人々の背中にたどり着くことが出来ないのだった。ついに力尽きて元の場所に店を下ろした。店内に入ってみるとどこを見ても100円の商品が並んでいたが、特に欲しいものはなく、私はたどり着けなかったことに感謝した。 #twnovel
見通しの良くない獣道を歩いていると獣が現れて、ちょうど月夜だったので恋に落ちると、獣は月明かりを浴びて変身を始めたのだった。「見るがいい! 私は魔物ぞ! 人間は人間に恋するがよい!」と諭された私は獣道を逸れて、人の道についた。間もなく信号が青に変わるところだ。 #twnovel
本の上に影が伸びてそれが2本の角を形作る時、私は自分が鬼であることを思う。けれども、文字の中に深く深く入り込んで別の時間を生きている間、忘れてしまうのだった。光は、言葉を照らすために必要なものだったけれど、そのせいで私は自分のことを知らなければならなくなった。 #twnovel