眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

ロングロングブーツ

2010-12-23 22:45:27 | ショートピース
ロングロングブーツ、彼女が通り過ぎた落ち葉の上の落し物……。「眼鏡を落としましたよ」けれども、ロングロングブーツ、その褐色の筒の中に完全に包まれた彼女にその声が届くことはありません。「あの……」ロングロングブーツ、男の声は師走の足音にかき消されてしまいました。 #twnovel

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ブス

2010-12-21 01:04:13 | ショートピース
あたかもそれは人間に対して「12月!」、「読書感想文!」、「並木道!」と罵るように、客観的事実からあまりにも距離を置いていたため、悪意が込められていたにも関わらず少しも悪口にならなかったのだ。「ブス!」彼女の言葉はどこかに突き刺さるどころかすぐに気体と化した。 #twnovel

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ケンタウロス

2010-12-20 01:21:42 | ショートピース
「両替を頼む。」こちらは馬足厳禁ですと言うが、男は玄関先で札を握ったまま動かなかった。しばらくして、店長は一輪車に乗って自ら男の元へお札を取りにいった。千円札を数え終えると男は礼を言い、帰っていった。一輪車など見慣れているのか、男は少しも驚いた様子はなかった。 #twnovel  

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獅子への手紙

2010-12-16 19:54:05 | ショートピース
獅子がもの欲しそうにしていたからパスを出すと、獅子はすぐにパスを返してきた。再びパスを出すとやはりすぐにパスを返してきたので、いらないのかと訊くと、「もっともっとパスをくれ」と言った。久しぶりに獅子のことを思い出して手紙を書いた。獅子からの返事は、まだ来ない。 #twnovel

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地下街の喫煙者

2010-12-13 23:45:12 | ショートピース
地下商店街の真ん中を男は煙草をくわえて歩く。すれ違う通行人の肩に白い煙がぶつかって眼が合う。「やんのかコラーッ!」男は振り返りながら叫ぶ。そこで「喫煙マナーを守りましょう!」とテロップが入る。画面上に竜巻注意情報が流れる。「この情報は嵐が過ぎ去るまで有効です」 #twnovel

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黄金の壷

2010-12-11 16:18:06 | ショートピース
「割れたから食べない?」館長は大きくひびの入った黄金の壷を抱えて私の眼の前に差し出した。--割れたから?--私は一歩遠退きながら頭を下げるとその亀裂の入った部分にそっとツノの先端で触れた。「どこも割れていないようです」館長は眼を見開いて、黄金の壷を回し始める。 #twnovel

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月の墓 

2010-12-11 15:39:32 | ショートピース
「遠いから旅行みたいだね」と妹が言った。少し遠いけど、安いからこの場所を選んだのだ。お父さんもいたらねと母が言い、馬鹿なことを言わないでと姉が叱った。1年ぶりの父の墓参りだった。「あっちの青い星は? 人が住んでいるのかな?」私の言うことは誰も相手にしなかった。 #twnovel  

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冒険家の失敗 

2010-12-11 15:05:23 | ショートピース
「私の日々は発見の連続だった。私にとって生きていくということは、毎日毎日新しいことを見つけていくことの積み重ねだった。私に足りなかったのは、発表することだった。発見の上に発見を重ねて、今日の発見の下に昨日の発見を埋もれさせてしまったこと。それこそが私の失敗。」 #twnovel  

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ピノの鋏

2010-12-11 14:40:37 | ショートピース
「自分で切ってるの?」最近は、鼻が伸びるのがとても早くなったので、マイ鋏を持ち歩いてこまめに切るようにしているのだと言う。「嘘だらけの人生も大変ね」ピノは、そうでもないと言う。「嘘で固めた人生もそれなりに素晴らしいものだよ!」すると鼻が一気に30センチ伸びた。 #twnovel  


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右肩

2010-12-06 15:18:12 | ショートピース
布団の右肩が行方不明になってからしばらくそのままにしておくと頻繁に風邪をひくようになり、それではいけないと布団の右肩を探してみるとそれは左肩のところにあって、それでは左肩はというとどこか別のところに出かけているということがわかり、右肩を戻すと一緒に戻ってきた。 #twnovel

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一寸法師

2010-12-05 21:34:17 | ショートピース
「大切なお椀だったのではないですか?」「いいえ。もういいのです。お椀にちゃんと鍵をかけて、大切に保管しておかなかった私の方だって、悪いのですから。それに、あの子にとっては、生まれた時からあのお椀があの子の家なのだから。それに、あの子は今、とってもしあわせそう」 #twnovel

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灰被り姫

2010-12-04 18:06:46 | ショートピース
許せない服を着ていた。カラーもデザインも全く同じ。帽子までも全く同じで、顔を見れば眼も耳も鼻も口も自分と全く同じバランスでついており、そればかりか、履いている靴までも全く同じだった。まるでもう一人のわたし! と思った瞬間、姫は撲殺されて、もう一人の姫が残った。 #twnovel  

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傘とNASAの噂話

2010-12-03 00:23:16 | ショートピース
午後からは雨だと聞いていたけどいつまで経っても雨は降らず、徐々に午後の残り時間は短くなっていった。日が暮れて帰り道、一度も開かれなかった傘を忘れず手にして帰った。午前に変わる3時間前、ようやく雨が降り出した12月2日、僕はずっと NASA の発表を待っていた。 #twnovel

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紙飛行機

2010-12-02 21:16:32 | ショートピース
「私、前世は鳥だったの」今日折ったばかりの君が言った。「もう一度飛ばして。今度はあの海に向けて。あの海を越えてみたいの」無茶だとは思いながらも、海の向こうの空へ向けて飛ばした。一羽の鳥が近づいてきて、一緒に飛んでいる。「渡りたいの」もう一度、君の声を思い出す。 #twnovel

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