眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

スーパーボールハウス

2009-10-29 22:57:10 | 猫の瞳で雨は踊る
そこであなたは暮らすことにしました。
あなたは、今までのところ一人で、今も一人でした。

あなたの家はどんな間取りですか?

そうです。あなたの住むのは2階です。
あなたの家には天井はあるけど、壁はありませんね。
とっても風通しがよい作りです。
視界を遮るものは何もなく、どの方向だって見渡すことができるのです。
あなたは、その借家がとても気に入ったのですね。
物が落ちないように、安定的な配置を心がけなければなりません。
あまり端の方に置いて、落ちてしまったら大変です。
勿論、あなただって、あまり端の方で眠って万が一落ちることがあったりしたら、あなたは死んでしまうでしょう。
常に緊張感を持って生活することは、きっとあなたの望むことでもあったのでしょう。
時々、鳥たちが羽根を休めに、あなたの家にやってきます。主に、あなたがいない時にやってきますが、だんだんあなたがいても鳥たちはかまわないようになってきました、あなたは徐々に受け入れ始めているのでしょうか。
あなたは強い風と、横殴りの雨をとても恐れています。これからやってくる冬のことも……。
天井だけは、何の支えもないのに不思議と落ちてくることはありません。
あなたの家の下の方には、古い作りの家があり、瓦屋根が見えています。
広い庭、褐色の縁側、軒先からぶら下がっている干し柿を、犬が背伸びしてくわえようとしているところを、あなたは一度見たことがあります。
特にそのつもりはなくても、下の家はあなたの目に自然に映る家でした。

気をつけていたのに、あなたはとうとう落としてしまいます。
転がり始めたスーパーボールはとめどなく転がり続けて、下の家の庭の方へてんてんと落ちていきます。
赤や青や緑や黄色やピンクや水色や水玉や黄緑や紫や半透明のスーパーボールは、まるで向日葵の作り出した影の下で水浴びをするうさぎのように陽気に弾んでいき、あなたはそれを手で止めようとするのだけれど、あなたの手が触れたのはその時夜の方向から射し込んできたような優しく赤い光の橋だったのです。
どれくらいそうしていたかわからない時間、あなたは赤い帯に触れながら、とめどないスーパーボールの流麗なジャンプを見送る人でした。
スーパーボールは、あなたの本棚の一番上の高く見えない場所から途方もなく、打ちひしがれたシャムネコの涙のように湧いてきました。

その時あなたはまだ大丈夫でした。

てんてんと庭中に転がったスーパーボールをババアがあなたの顔面に投げ返してきます。
あなたの手は夕焼けに捕獲されたままなので、あなたは顔だけでそれを避けなければなりません。
ババアは、正確にあなたの顔面に狙いを定めて投げつけてきます。危険。危険。
あなたは、右へ左へ顔を振ってスーパーボールを避けます。紙一重のところでかわしています。
けれども、ババアの投げつけるそのスピードに、その間隔の短さに、あなたは徐々に気圧されていきます。
右へ左へ顔を振って避けても避けても、正確な攻撃は少しも停滞することもなく、それどころかババアの投げつけるスーパーボールは、魔法がかったハンターのように喜々としてあなたの面を求めて迫ってくるようです。
ババアは、きっと見開いた目をあなたに向けて、その動作には一切のよどみもありません。
あなたはもう息もできません。
いつ終わるとも知れないババアの攻撃の中で、あなたの中に芽生えた後悔は何ですか。
あなたは目を閉じてしまいました。


*


「ねえノヴェル。天井は、上から吊ってるのかな?
 壁がまるでないなんて、大変な家だね。
 ねえ、ノヴェル」
マキは、ケータイの中に映る間取りを覗き込みながらつぶやいた。

「あなたは住みたいですか?」
無言を貫き通していた猫は、その時、寝返りを打った。


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思いやり破産

2009-10-29 18:19:13 | 何でもええやん
太陽と相席少しいたいけど


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暇放送

2009-10-28 12:18:00 | 何でもええやん
再放送にも等しいナマケモノ

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コロ

2009-10-27 17:02:25 | 猫の瞳で雨は踊る
私の席の隣の席には、新しく陽気な人が来ていてね。
笑い声が、そこを中心に世界を席巻するように開いていたんだ。
私はそこには戻らずに、柱にもたれたまま何かが始まるのを、あるいは何かが終わるのかを待っていたんだ。
最初から今日は、そこには戻らなかったんだ、最初からここにいたよ。
コロ。
散歩に出かけた時のこと、私はキミについていくことができなかった。
街に出るといったのに、キミはずっとずっと歩いて歩いて歩いて止まらなかった。
引き返すことを知らないキミは、街を出て遠くへずっと歩いて行った。
私はついていけずに、泣いていたのに。
コロ。
あれから何度生まれ変わった?
私の前に現れもせずに、どうして、どうしているの。
コロ。
あの笑い声が、怖いよ。私の居るべき場所から聴こえてくる陽気。
柱にもたれたまま、何かをしているふりをしているのに疲れたんだ。
どうしようもなくぼろぼろなのに、何も考えてないような形をとって。
その努力は、誰のためなのか。
私はあの時のキミが歩いたように、世界に出て行くよ。
新しい世界に出て行くために、古い世界を出て行くよ。世界は一つじゃないものね。
もうすぐ、先生が。
私は、近づいた。左から二列目の前から二番目辺りの自分の席。
そこには誰かがいる、そこには他人の服がかかっている、そこにはもう……。
もうどこでもいいんだ。どこでもいいんだ。
私が座った場所が、きっと私の場所になるのだろう。
コロ。
あれから何度生まれ変わった?
私の前に現れもせずに、どうして、どうしているの。


*


「ねえ、ノヴェル。コロってだれよ?」

眠りについた猫の耳元に、マキはささやきかけた。
けれども、猫は新しい夢の中で新しい執筆の準備を始めているのだった。

----人は死んでも生き返るか?
妙な意識調査か何だかわからないものが、後を絶たない。

「なめるなよ」
感情に任せて、マキは鉛筆を動かした。
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きみはきみ

2009-10-27 07:39:03 | 何でもええやん
論客がくるんでくれたメロンパン
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猫の歌

2009-10-26 17:08:48 | 猫の瞳で雨は踊る
ひとからなんと
ひとからなんと

さらさらさ

ひとからなんと
ひとからなんと

しゃんとせい

ひとからなんと
ひとからなんと

からめとる

ひとからなんと
わたしはわたし

たったひとりの
作り手聞き手
その手の読み手

ひとからなんと
わたしはわたし

たったひとりの
生きてなの


*


ねえ、パパ。
ノヴェルが、またわからないことを書いてるの。
適当に書いたにしては、つながっていて怖いの。
私は、ケータイを取り上げるけれど、彼女はまた持って行くのよ。
ねえ、どうしよう。


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ヘルパー

2009-10-26 11:42:30 | 猫の瞳で雨は踊る
----自分の言葉に、いつか助けられるだろう。
----命は助けるようにできているのだ。

猫は、結論を書き記してケータイを閉じた。
そして眠った。


*


マキは、猫の枕ケータイを抜き取って開いた。
「ふーん」
そういうものですか。
「私も、日記でも書こうかな」

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仮死

2009-10-25 19:47:00 | 猫の瞳で雨は踊る
仲間たちは、次々と売られていったものだ。
その先にあるのが、今よりも自由なものか幸福なものかはわからない。
それは残ったものたちには、未知だった。
そして、私はこの短い夏の中で誰にも選ばれることなく残ってしまった。
西瓜の季節が終わる頃、私はだんだん動けなくなった。
元々、動ける範囲は限られていたのだが、いよいよ私は本当に動けなくなってしまったのだ。
しばらく----というのも、ここでは朝も夜もなく、徐々に私は時間の感覚を薄めていったのだ----私は、石のようにして動かなかったのだと思う。
そして、とうとう指が恐る恐る私を持ち上げて、私を運んでいく。その間、私はもちろん動かない。
レジの後ろに、適当に私は置かれた。私の隣には、「破れている」と紙片が貼られた冷凍の袋が無造作に置いてあった。「破れている」だから、それでどうなるのか、私にはまるでわからない。


「死んでいる?」

それが私に貼られたラベルだ。
私は、ただ動けなくなっただけなのだが……。
しばらく、私はそうして放置されたままだ。この先のことはまるでわからない。

「あっ、カブトムシ!」

幼いものが、目を輝かせながら私の方を指差した。


*


「眠ったの?」
ノヴェルから奪い返したケータイを開いて、マキは猫の文字列を追いかけた。
猫の謎色に塗られた短い言葉は、いつからかマキの瞳を輝かせるようになっていた。
「ねえ、眠ってしまったの?」
いつも猫は、眠ってしまう。眠った時にだけ、猫の物語は開いているのだ。


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名誉駅長

2009-10-25 18:53:23 | 何でもええやん
なんですとオレンジメロンパンですと
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ラファエル

2009-10-25 17:00:57 | 何でもええやん
なんとなく食べたくなったメロンパン


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口は語る

2009-10-25 10:28:58 | 何でもええやん
ソーセージ挟んだパンはメロンパン

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2009-10-23 17:06:04

2009-10-23 17:06:04 | 何でもええやん
お日様とお手手つないで落ちていく
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汗ばむ妖気

2009-10-23 13:37:24 | 何でもええやん
ぽっかりと見上げ忘れた流星群


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人間とはなにか

2009-10-22 21:56:33 | 何でもええやん
わいわいと人々々のツイッター
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ストーリー・キラー

2009-10-11 18:51:59 | 猫の瞳で雨は踊る
----私は何度も殺してきたのだ。
----物語の中で生きたまま、たくさん置いてきたのだ。

猫は、告白を終えて、ケータイを閉じた。


*


マキは、眠った猫からケータイを奪い返し開いた。
「わー。怖い」
穏やかに眠るストーリー・キラーの横顔に目を落とした。

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