眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

しあわせバター(スナック・ライフ)

2023-11-04 09:18:00 | 短い話、短い歌
 もう10年も前になる。あの頃の俺はまだ駆け出しの転売ヤーだった。人様の畑という畑を渡って気になるものを見つけては、狸のように引っこ抜いて回った。一言で言えば、俺は愚か者の名を欲しいままにした。いったい誰が……。

「すみません。うすしおくださーい!」
「はーい!」

チャカチャンチャンチャン♪

 うすっぺらい愚か者。それが10年前の俺だった。狸のように人様の畑を回っては、気になる野菜を引っこ抜いた。茄子、大根、トマト、人参、じゃが芋、南瓜。畑という畑を越えて、貪欲だった俺は更に手を広げていった。メガネ、宝石、鞄、パソコン、洗濯機、プレイステーション。あの頃の俺ときたら、目に映る物すべてが俺の売り物であるかのように思い違いをしていた。一度引っこ抜いた物は、まるで桁違いの値段で店先に並べてみたものだ。大馬鹿者め。我ながら大馬鹿者以外の何者と呼ぶこともできない。いったい誰が……。

「すみません。コンソメパンチくださーい!」
「はーい!」

チャカチャンチャンチャン♪

 もう10年前のことだ。しかし時が経ったからすべて許されるわけではない。あの頃の俺はまるで手に負えない荒々しい転売野郎だった。畑という畑を渡り歩いた。気になった物が高い囲いの中にあって、厚く守られ届かないとわかれば、無性に腹が立った。覚え立てのバーボンの中によろめきながら、必殺の左を持つと信じた。俺は風の中でパンチを繰り出した。すぐに反撃を食って逃げた。俺は弱かった。今度は壁に向かって拳を突き上げた。傷つくのは俺の方だった。この大馬鹿者めが。いったい何やってんだ。俺はいったい……。

「しあわせバターくださーい!」
「はーい!」

チャカチャンチャンチャン♪

 それから俺は見事に立ち直った。最初から自然に立っている人に比べれば、俺の手の中のしあわせは少し増しているようだ。他の人よりもずっと愚かだったが故に、ひどく遠回りしてしまったが、俺は今ようやく理解することができる。しあわせとは与えることだろう。
 さよなら、過去の愚か者よ。

「すみません。うすしおくださーい!」
「はーい!」
 何だかんだ言っても、うすしおが今日も飛ぶように売れる。
 冒険はそこそこ。慣れ親しんだ味ほどみんなに喜ばれるのだろう。
 この小さな売店が、俺の見つけた居場所だ。

「ありがとうございまーす!」


馬鈴薯のイノベーションがおかしみを
まるく広げるスナック・ライフ

(折句「バイオマス」短歌)

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怒りダンス

2023-10-26 03:05:00 | 短い話、短い歌
「その格好ではちょっと……」
 ちょっとしたデザインの差で通れない扉があった。進めないところには立ち止まるべき時間がある。変えるべきは自分? 君は自分に問いかけてみる。自分を変えてまで行くほどそこは素晴らしい場所だろうか……。自分を残したままステージを変えることだってできる。胸に刺さったままの「ちょっと」のわだかまり。君の怒りは新しいステップになる。


襟なしをとおせんぼする週末に
靴鳴らすダンサーの情熱

(折句「江戸仕草」短歌)

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AI師匠

2023-09-01 09:05:00 | 短い話、短い歌
「そう簡単に変われるか」
「いい人やめれば楽になりますよ」
 お前に人の気持ちはわからない。
 好きなこと言えれば苦労はしない。
「出てしまった言葉は引き戻せないんだぞ」
「いい人だと思われたいですか?」
 どこかで覚えた台詞を並べやがる。
「嫌われるのはしんどいだろう」
「おかしなことを言われたら返してもいい。
 倍返しです」
 どうせ他人事だと思って。
「倍返しね。はいはい」


AIのトークが冴える寝室の
グッジョブ何も寂しくはない

(折句「江戸仕草」短歌)

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魔女ばかり

2023-04-04 01:07:00 | 短い話、短い歌
 異世界には魔女が住む。異世界の数だけ魔女は存在した。岩を登る魔女、シチューを煮込む魔女、カードを切る魔女、人をさばく魔女、アルバムを編む魔女、蝶を操る魔女、飴をまく魔女、荷物を運ぶ魔女……。「どんな魔女がお好みか?」無数にみえる魔女の間を泳ぎながら、ドラゴンは自身に問いかけていた。炎に触れて行間が激しく燃えている。
「アルデンテとカルボナーラの魔女?」
わからない、わからない、わからない……
 ドラゴンの気はうつろいやすい。


エルメスの温情を持つ魔女が住む
異世界を読みあさるドラゴン

(折句「エオマイア」短歌)

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4色ペン人格

2022-09-25 02:51:00 | 短い話、短い歌
ブラックではライトな自分が動き出す


 辺境の星までたどり着いた意味を見失って絶望しかけた時にホンダ・カーブは肩と肩が激しくぶつかる音を聞いた。サッカーだと?(あるいはここでは球蹴りとも呼ばれていた)それは紛れもなくフットボールの一形態だった。あるじゃないか! 出場機会を求めるカーブの前にデュエルの王が立ちふさがる。しかし、ようやく希望を目にしたカーブの前では子犬同然だった。
「エンドゥーを3回抜くとは!」
 登録期限まであと3日の出来事だった。


 インクがかすれ文字が出なくなる。
(カチカチ♪)
 やむなく私は次のカラーに移ることにする。

レッドでは恋愛感情に傾く


 魔女の呪いによって蛙にされた王女は刺さるような視線を感じていた。
 好きなの?
 思われても思わない。
 種が違うの
 生まれた時から私はハイブリッド
 死のようにしつこい瞳
 その思い 来世まで取っておけば
 それなら少し考えなくもないわ
 他に行くところはないの?
 世界はぞっとするほど広い
 だけどあなたには翼もない
 ただまっすぐに伸びるばかり
 せめて一緒に歌うことができればね
 コーラスが始まった。
 蛙は畦道を離れステージに飛び込んだ。
 その音を聞いて蛇はシューシューと巻きながら家に帰って行った。

「また振られちゃったよ」

「本当に好きだったとでも?」

「だから泣いてるんじゃないか」

「お前は好きを隠れ蓑にしてただ居座っていただけではないか。泣いてるのはただの感傷だ。愛は微塵も存在せずお前はただ怠惰であっただけ……」


 声はかすれ反論することはできない。
(カチカチ♪)
 レッドの時間は儚い。
 次のカラーに移る他はないようだ。

グリーンで私は突然しりとりに傾倒する。


ゆず七味

みそ団子

ごまトカゲ

げそわかめ

メカタマゴ

こども酒

毛玉坂

「私の負けだ」

 私はあっさりと私自身に負けてしまう。
(本当はもっともっと遊べるのに)


 グリーンは始まりから既にかすれていた。
 一行を折り返すことが奇跡だった。
(カチカチ♪)
 次がなければ戻るしかない。

一巡したあとのブラックは少し息を吹き返している。


 スタジアム上空ではUFOと自衛隊機の激しい攻防が繰り広げられていた。まさかこんな田舎星までも追ってくるとは、カーブも予想していなかった。観衆は防弾傘を差しながら日本代表に静かな声援を送っていた。このまま行けば予選敗退が決まっている。
(監督、次のカードを切ってくれ)
 カーブは目でベンチ前の監督にサインを送った。
(みんなあとのことは頼んだぞ。俺がいたらこの星が危ない)
 カマーのコーナーキックが高速で入ってくる。ファー・サイドに構えたホンダ・カーブが高く飛んだ。他の選手よりも体1つ分抜けていた。ピンポイントで頭に合ってゴールが決まる。けれども、カーブは芝の上に落ちてこなかった。そのまま上昇して宇宙ドローンに飛び乗った。
ゴールーーーーーーーーーーーーー♪
 それはホンダ・カーブが地球に残した置き土産。
 ありがとう……


(カチカチ♪ カチカチ♪)

すべてのカラーがフラットになりふりだしにもどる。


「AIによる診断が出ました。
あなたの作品はまだ誰にも読まれていません。
この作品を読まなかった人は次の作品も読まないようです。
お子さまからお年寄りからコアなロックファンからミステリーマニアまで幅広い層に読まれないようです」

「私は未来の読者に向けて書いてます」

「異世界に行かぬは作家にあらず。もっと毛色の違う作品を書いてみましょう」






更新のトップに君が躍り出る10秒間のファースト・ノベル

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街の串刺し

2022-07-07 03:25:00 | 短い話、短い歌
 渡りかけたところに、焼き鳥が3本落ちていた。
 何があったのか。恐らくこういうことだ。
 その人は焼き鳥の入ったパックを抱えて歩いていた。ちょうど踏切の前を通りかかった時、かんかんと音が鳴り出したので慌てて駆け出した。元々あふれんばかりに収まっていた焼き鳥は、勢い余って飛び出してしまった。落ちてしまったものは仕方がない。その人は振り返るよりも踏切を渡ることを優先し、遮断機が下りてしまう前に踏切を渡り終えた。その後何人もの人が踏切を渡る時に焼き鳥の存在に気づいたり一瞬目を留めたりはしたものの、あえてそれを手にしたり交番に届けたりする者はいなかった。
 その人は家に帰ってから焼き鳥で埋めるはずだった空腹を、カップ麺等で埋めたのだろう。冷たくなった焼き鳥に最初に触れるのは、この街に住む鴉かもしれない。




振り返るよりは進もう串刺しの未練は鴉きみのおやつさ

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道草知らず

2022-07-06 03:46:00 | 短い話、短い歌
 自由な犬が道草を食いながら歩いていた。1日分の道草を思う存分楽しむように、熱心に食って回る。本当はもっとゆっくりと食いたいのだったが、先を行くご主人様が歩みを止めないので、そうゆっくりもしていられないのだ。少しは立ち止まり深呼吸でもすればいいのに、後ろを気にせずどんどん先に行ってしまうため、自由な犬はゆっくりと留まって道草を食うことができなかった。
 名残惜しい道草を食い食いしては、先を行くご主人様の背中に続く。
(まさか本当に自分を置いて行ってしまうのではあるまいな)
 自由な犬は不安から道草に集中できない。興味深い道草を食いかけた時も、ご主人様はその魅力にあまりにも無関心のようだ。道草が足りない。けれども、自由な犬は少し太り気味なのだった。




前進にとらわれている人の背に今日のところはくっついていく

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ワン・オペレーター

2022-06-30 08:30:00 | 短い話、短い歌
 女たちが煙草に火をつけて、煙を吐き出すのが見えたが、僕は全く煙たくはなかった。パーテーションは肘に接触してキーボードを打つ時の妨げになりそうだったが、むしろ身を預ける拠り所のような存在でもあった。盾でもあり拠り所でもある仕切りは2つの意味を持って、その場所の価値を高めていたのだ。(煙が)すぐ近くに見えていながら自分にまるで及ぶことがないというあり様は、テレビでホラー映画を見ている時のようだった。
 番号を呼ばれてカウンターに戻ると既に次の客が注文を通すところだった。トレイの上にカップを置いた後で彼女はいつも同じ角度で礼をする。その時、両手はいつも胸の前だ。何から何まで1人でやらなければならないのは大変だろう。
 コーヒーを混ぜていると天井から、ジャズが落ちてくる。

「カレーはここで作っているのか?」
 新たにやってきた男はストレートな疑問をぶつけていた。
「いいえ違います。レトルト」
 彼女は答える前に微かに笑ったようだった。直球に対して直球。実に清々しい勝負だ。商売は正直にやらねばならない。だまし合ったり、口先でごまかすようなことをしてはならない。

「レトルト」
 さらりと言った彼女の言葉を僕はしばらく忘れないだろう。
 レトルト。いいじゃないか。




ここでしか食べれぬ物はないけれどここにいるのはあなたがいいね
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納豆の法則

2022-06-17 22:00:00 | 短い話、短い歌
 おばあさんは納豆を混ぜていた。一定のリズムで箸を動かすスピードは少しも老いを感じさせない。納豆は少しずつ艶を増し十分な粘りを放ち始めた。それでもまだおばあさんの勢いは止まらない。始まった頃と変わらぬペースで運動が続いていく。
 おばあさんが当たっているのは納豆という組織だ。けれども、その愛情は一粒一粒に対して注がれている。
「こうしている間がいちばん幸せかもね」
 そう言って笑う時も、手を止めることはなかった。




揺るぎない仕草につれて満ちて行く幸福は個の運動の中

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天地無用(デタラメの解釈)

2022-02-08 20:24:00 | 短い話、短い歌
 鏡を覗くと天地がひっくり返っていた。
 すっかり動転する自分。取り乱す自分。目を逸らしてはまた戻す。生産性のない動作を繰り返す自分。
(冷静に、冷静に、冷静に……)
 そうだ。これは何も驚くようなことじゃない!
 落ち込む必要なんてない。逆さを映すのが鏡というもの。
「だから、これは私ではない!」
 もう身なりなんて正すのはやめだ。
(どうせデタラメなのさ)


かきあげた
鏡を深く
みつめれば
一人前の
しょんぼりタイム

(折句「鏡石」短歌)

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チェックアウト・ペンシル

2022-01-13 02:32:00 | 短い話、短い歌
 誰かをどこかへつれていくためには、自分から動き出さなければならない。そう思って自宅を出てから随分と時が経った。本当のところはよくわからない。ここに流れる時間は以前の時間とは何か違うのだ。私はずっとここにいる。それでいてずっと遠くへ運ばれていくのだ。「誰だ?」私を持って行くのは……。この指か、それとも他の……。おかしい。黒く滲むものが何も見られない。インクはとっくに切れているのかもしれない。才能も物語も何も出ていないのかもしれない。だけど私はプロなんだ。止められない。今止まったら、二度と動き出せない。「お客さま、お客さまー……」


かすれても
書き止まらない
民宿の
一夜を泳ぐ
焦燥の筆

(折句「鏡石」短歌)

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闇のヒロイン

2021-09-15 01:01:00 | 短い話、短い歌
 目立ちたくはなかった。一番望むのは木だった。それなら立っているだけでいい。寄りかかられても、話しかけられても、ただ放っておけばいいだけ。「消えているのは得意だった」叶わなければ村人Aがいい。台詞は一つ。「わー。話しかけないで」
 だけど、謎の勢力が私を目立たせようと動いているようだった。自分から最もかけ離れたところへと私は運ばれていった。もう、消えていることは許されない。分厚い台本のすべてはまるで私のために作られているようだ。私はこれから大きな光をあびて闇を放たなければならない。


AIの
脅しに屈し
魔女となる
一夜は長く
明けてヒロイン

(折句「エオマイア」短歌)

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来賓宇宙人

2021-07-24 10:33:00 | 短い話、短い歌
 段落が変わると詩は小説になり日記は手紙になる。つながっているようでつながっていない。形が変わると心も変わる。段落を避けて進むことはできない。私は僕になり、母は猫になり、先生はささくれになり、僕は夕日になり、海は小川になり、雲は消しゴムになり、言葉は波線になり、段落毎に落ちていく。わからない、わからない、わからない……。(変化を望まないものはいないのだろうか)希望は夢になり、うそは朝になり。何がどうなるかわからないのに。このまま行けることはない。あの段落は、また新しくできた国境のようだ。根は街になり、息は虹になり……。


かかわりの改行済んで見ず知らず
今となってはシーラカンスだ

(折句「鏡石」短歌)

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モデル・チェンジ

2021-07-15 04:16:00 | 短い話、短い歌
 行きつけの店に任せれば75点から80点の出来が約束されている。何の不満もないはずだった。

(もっと突き抜けたい)

 季節の変わり目に湧き出てくる冒険心を抑えきることは難しい。私は新しい扉を探して歩き始める。未知のドアノブに触れる瞬間、私の手は微かに震えている。ドアの向こうには、自分のことを何も知らない人たち。でも、もう後戻りはできない。

「今日はどのように……」
 彼はゼロから私を創ろうとしている。
「トップに5Gを飛ばして、サイドにブルートゥースを飛ばして、全体をベッカム調に」 

「ちょっと、ちょっとお待ちを」
 美容師は慌てた様子で駆けて行った。

「もしもし、初めてのお客様で……、ちょっとこちらでは……、先生の方でみてもらっても……」
 電話を終えて帰ってくるとどうやら別の席に案内されるようだ。

「お客様、申し訳ありません。ちょっと別館の方へ」
「別館?」
「はい。こちらから出て壁沿いに行くと屋上へ続く階段がございまして……」
 指示された通りに屋上へ行った。ドアは開いていた。

「ああ、先ほどの」
「お願いします」
 部屋の中にはベレー帽の男が一人、他に従業員の姿は見当たらなかった。
「では、こちらにイメージを描いてみてください」
 男は色鉛筆とスケッチブックを渡し言った。奇妙なシステムに戸惑いながら、私は色鉛筆を走らせた。どう努力しても、人の顔にならない。長い間、人間を描いたことがなかったのだ。

「どれどれ、ほー、これは空ですか?」
 男は頷きながら続きを描くように言った。
 部屋の中には鏡一つ見当たらず、絵の具の匂いが満ちていた。
(先生?)
 美容師が電話で言っていた言葉を思い出して、私は少しだけ不安になった。




こめかみにBluetoothを走らせてハートをつかむ夏のカリスマ

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狐の湯、竜の背

2021-07-10 20:28:00 | 短い話、短い歌
 一番風呂を頂こうとすると先に狐が入っていた。

「どこから入った?」
「遅かったな」
「勝手に入ったな!」

「自分が一番と思ったのだろう」
「そうだ」
「他にライバルはいないと思ったか。わしのようなものは完全にノーマークだったのだろう。思い上がりだな」

 確かに狐の言う通り、そうした部分もあっただろう。反省の意味も込めながら、私は狐の背を流した。

「将棋はどうじゃ、強くなったか?」
「えっ?」

「相変わらず三間飛車か。振り飛車は苦労が多かろうに」

「お、おじいさん?」
「相変わらず鈍いのー」

 見覚えのある竜が、背中で微笑んだ。



評価値は-200振り出した三間飛車はメルヘン・ライク
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