眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

千駄ヶ谷の駒台

2019-07-31 15:49:24 | 自分探しの迷子
 長い旅路の果てに僕は盤上から消えた。千駄ヶ谷の魔神の駒台の上には、豊かな個性が揃っていた。中盤で激しい戦いが起こり、流れはもはや止まらない。至るところで歩がぶつかっている。次の接触でまた誰かが宙に舞い、こちら側の世界に移ってくるだろう。「大きな奴がやってくる」そんな噂が聞こえるが、ここから中央を俯瞰で見ることはできない。私は険しい旅路の果てに盤上から消えた。
 
 そして、今は千駄ヶ谷の魔神の駒台の上にいます。今までいたところから比べると随分と狭く感じられるこの場所が賑わっていることが、現在の戦況を物語っていることは言うまでもないでしょう。それにしても狭い。いつまで持ちこたえることができるでしょうか。定員オーバーに達することはもはや時間の問題と思えます。(もしもそれまでこの戦いが終わらなければ)またどこかで駒が接触する音が聞こえます。「さあ、向こうに寄って」「スペースを空けて」魔神の指に導かれて、私たちは次の備えを急ぎます。俺は長い旅路の果てに盤上から消された。
 
 今はこんな狭いところに押しやられた。この辺りでは既に多くの不満がくすぶっているようだ。だが、それもすぐに消えるだろう。120手オーバーはない。俺の読みでは、もうすぐどちらかが詰み形を築くだろう。
「おい次の奴がくるぞ」
「もっと寄って」
「もっと詰めて
「これ以上は無理だ」
「何するんだ? 落ちちゃうじゃないか!」
「もっとまとまって。上手くまとまって」
「そうだ。使われやすいように」
「小駒は小駒で順に並ぼう」
 僕は銀と交わってここまでやってきた。千駄ヶ谷の魔神の戦果はこの狭い駒台の上にあふれている。先ほど見た様子では、既に寄り筋は近づいている。ため込まれた戦力は、その時一気に爆発するだろう。「おーい。もっと寄って」「ギリギリまで詰めて」「またやってくるぞ」私は馬に食べられてここまでたどり着くことになりました。
 
 千駄ヶ谷の魔神の力は恐ろしく、この小さな空間が今の充実ぶりを物語っているのです。けれども、もうスペースは多く残っていません。
「強すぎるよ
「あふれるほどに強い」
「本当に?」
「疑う余地なし」
「欲張りじゃないの?」
「寄せを知らないんじゃない?」
「そんなことはない」
「もうすぐわかるよ」
「どうして私たちにわかるの?」
 
 この状態が続けば、いったいどうなってしまうのでしょう。私たちには他にスペースはないのです。私たちが体を持たない言葉なら、あるいはグラスの中の氷なら、時の力に任せて溶けていくこともできる。けれども、私たちは皆それぞれの利き腕を持った駒。指先の力を借りずにどこかへ向かうことはできないのです。インプットに費やした時を、外へ向いて放出する手番はそこに迫っています。
 
「なんで捨てられちゃったんだろう」
「なんでこんな窮屈なんだ」
「捨てられたんじゃない。さばけたんだ」
「あの頃はうんと広かったな」
「これでよかったんだよ」
「みんな運命なんだから」
「ずっと残るよりはいいんだから」
「捨てられたのは、ちゃんと生きたってことだよ」
「いいように言うね」
「また捨てられるの」
 
 俺は時を稼ぐためにここにきた。ふりだしの頃に比べて価値観は様変わりした。見回すまでもなくここは既に飽和している。戦いの質が、俺の予想を超えたからだ。臨時列車はこないのか。時間がない。白紙の上に線は引き尽くされた。カウントダウンの声が、盤上に響いている。もうすぐ、また俺の出番がくる。俺たちは皆これから向きを変えるのだ。
 
「何が残ると言うの?」
「何も残らない」
「残ってたら駄目なんだよ」
「だけど残っていてほしい」
「だから君は重いんだよ」
「次の奴がくるの?」
「もうこないの?」
「金ちゃんはいいな。最後まで残れる」
「それだけのことだよ」
「今日は違うかもよ」
 
 僕は一手と引き替えにここにきた。時は金なり。最後に笑うのはどっちだろう。千駄ヶ谷の魔神か、それとも……。50秒を超えて、一秒一秒、時が細かく刻まれていく。再び、僕はここを離れるだろうか。僕たちの最後にたどり着く場所はいつも決まっている。それは同じようで同じではない未来だ。最後の一秒が読まれる。その刹那、魔神の指が僕の隣の駒にかかった。
 
「残せるのは思い出だけだよ」
「銀ちゃん。上手いこと言うね」
「何も上手くない」
「ああ。高い音!」
「なんて高い!」
「王手がかかってるぞ!」
 
「ああ。誰か入ってきた!」
 
「立会人だぞ!」
「違うぞ!」
「後がない! 連続王手だ!」
「違う! 観戦記者の人だ!」
「さあ、行くぞ!」
「僕も行くぞ!」
 
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はやとちり

2019-07-31 04:58:00 | 【創作note】
廃れた街角の
おしゃれなカフェが
大きなテーブルを貸してくれる

家の中にいると
思い詰めてしまうけれど
見知らぬテーブルの上に
マイpomeraを置けば
自分のやるべきことが
自然と思い出される

「あの人150超えてるんだって」
たどり着いたここは長寿の町だ

天井から吊り下がったランプ
倉庫だった頃の面影に
謎を秘めたオブジェが並ぶ
後ろ向きのピエロ
ブリキのミニバイク
巨大なホラ貝
直立した招き猫
シロップ漬けの食虫植物
グッドデイと雨粒の落書き
壁に貼られたカードに犬の似顔絵

もしかしてWi-Fiが?


やっぱりただの犬か……
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空白のノート

2019-07-30 04:35:00 | 【創作note】
何を書いていいかわからなくなった
テキストには
思い切って何も書かない
という選択もある

書いていないと不安
つながっていなければ
更新を続けなければ
一日穴をあけたら
何かが駄目に?

時には何もせずに
ぼんやりとするのもいい
何も考えず
何も話さず

沈黙するのは

そんなにわるいことか
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シャドー・ファイター

2019-07-29 23:24:00 | リトル・メルヘン
   誰にも会いたくなかった。
 俺は電灯の下で顔のない男と対していた。
 お前は俺の影。俺の繰り出すジャブもストレートも、お前には届かない。お前は俺ほどにしなやかで、俺にも増して素早い。何よりも従順な練習パートナーとなるだろう。
 俺が立つ限りお前は立ち、俺が倒れぬ限りお前も倒れないだろう。思えば俺の敵はお前だけなのかもしれないな。
 さあ、こちらから行くぞ!
 俺は強くなりたいんだ!
 俺は探りのパンチを繰り出す。フットワークを使い、お前との距離が常に適切であるように心がける。俺はコンビネーションを使い、お前を攪乱する。お前は容易に動じない。抜け目なく間合いを読んで、俺の変化に同調してみせる。先に乱れた方が負けだ。俺は引くべきところで引いて、もう一度動き直す。何度でも何度でも。それが俺のチャレンジだ。俺は自分からタオルは投げない。俺とお前の戦いは、世界に光と闇がある限り続くだろう。どうだ? お前からも打ってこい。度胸があるなら、お前からも打ってくるがいい。そうか。無理か。だったら俺から行くぜ。お前は永遠に俺を超えられまい。もしも超えられると言うのなら……。

 痛い!

 お前のパンチが俺にヒットした。
 (どうせまぐれ当たりだろう)
 それは思い過ごし、あるいは俺の自惚れだった。
 お前のパンチは俺よりも速く伸びしろがあった。
 徐々に正確に俺の顔面をとらえ始めたのだ。

 痛い! いてててて!

 おかしいな…… どうして俺ばかりが打たれるんだ。
 俺のパンチは一切当たらない。なのに打てば打つほどパンチは自分に返ってくる。俺は一方的にダメージを受けた。得意のカウンターは決まらない。俺はついにガードを下げ、一切パンチを出さなくなった。それでも俺の影は攻撃の手を緩めなかった。助けてくれ。俺が悪かった。何がとは言えない。だから許してくれ。(お前を甘くみたのが悪かったのかな)
 俺は命辛々に自分のジムまで逃げ帰った。


「誰にやられたんだ」
「ううっ」
「こてんぱんじゃねえか」
「会長……」

「おー、いったい誰に……」

「俺は自分にやられました」
「お前……」
「……」

「とうとう腕を上げやがったな!」
「何だよ。どういうこった」
「強くなりやがったな!」
「会長。どうして……」

「わかんねえのかよ」

「わかんねえ。俺にはさっぱりだ」

「お前はお前を超えちまったんだよ」

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おやすみクリエイティブ

2019-07-29 21:15:00 | 【創作note】
何も期待せずに始めたから
案外に面白かった

期待することを覚えてから
徐々に難しくなった
こんなものかな……

何か新しいことを始めたようで
同じところをまた
巡っていただけかもしれない

思いつきで始めたのなら
終わらせるのはとても簡単だ

さあノートを閉じるとしよう
僕はどこもクリエイティブじゃない
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スカッと一番

2019-07-29 12:45:00 | ワニがドーナッツ!
「むちゃくちゃのどが渇いたよ」
「どれにする?」
「ファンタでスカッとしたい」
「ファンタね」
「でも、ネクターをがぶ飲みもしたい」

「どっちがいいの?」
「うーん」
「どうしたの?」
「どっちを選んでも後悔する気がする」
「じゃあ、どっちもやめとく?」
「そんな!」
「どっちにするの?」
「どっちも。両方欲しい」

「駄目よ! どちらかに決めないと」
「でもでも、どっちも捨て難いんだよな」
「そうやってワニワニ言ってなさい」
「……」

「ワニがドーナッツになってしまうわよ」
「えっ?」

「大切なのは選ぶこと。いいとこ取りはできないのよ」
「うん」
「これが最後の100円なんだから」
「もうわかったよ。やっぱりファンタにするよ」
「いいのね。ファンタで」


「すみません。ファンタを1つ」
「160円です」
「えっー?」
「160円になります」
「じゃあ、これで半分だけもらえます?」
「お客さん。無理ですよ」
「いや、そこをなんとか」

「ダメダメ! 半分とかないから」
「そこんとこをなんとか」
「姉ちゃんもういいよ。帰ろう」
「ほんとケチな店ね」
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獣のうた

2019-07-29 06:51:00 | 短歌/折句/あいうえお作文
アングラの
ジェットにのって
振り切った
来世へ渡る
イノシシのうた

「アジフライ」


三つ星の
総菜を読み
さばさばと
残高を食う
犬のひと鳴き

「ミソサザイ」


三日だけ
礼を尽くして
人間で
あったムジナを
無視するなかれ

「ミレニアム」


コマネチを
敬う君の
脳内で
トガリネズミが
リンボーダンス

「コウノトリ」

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マックフライ

2019-07-29 06:08:00 | 【創作note】
空を飛ぶのが絨毯なら
あとはただそこに乗るだけでいい

自分一人の力だけでは
どうすることもできないけれど
助け一つがあれば
どうにでもできるような気がする

「魔法のペンを手に入れた」

才能とは一つの出会いに等しかった

メルヘンの法則により
魔法には限りがある
それは一夜の約束だ

バーガーショップの壁にもたれながら
今夜の内に書き尽くさなければ
小悪魔をくすぐる詩 
恋情を揺さぶる詩
妬みを遠ざける詩
働き蟻をはち合わせる詩
オットセイを涼ませる詩
「ネアンデルタール人の詩」

 押入の中から
 「ネアンデルタール人の詩」を見つけた
 宇宙人との交流
 球蹴り世界大会
 夏祭り
 社会生活と人間関係
 昔から
 ずっとテーマは変わらないものだな
 現代人にもわかりやすいように
 所々手を入れて
 僕はブログに上げていく
 「おじいちゃんやったよ!」
 いいねが2つもついたよ!!

あー眠い

紙コップを水滴が伝わり落ちる頃
魔法が薄まり始めている

顔を膨らませた睡魔
もう少し もう少し
ここで悪足掻きしなければ

外には魔物たちの目が光っている
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壊れた夜のnote

2019-07-28 23:47:00 | 【創作note】
好きだった喧噪が
疎ましく感じられる
好きだった窓が
淀んでみえる
好きだった独りが
もどかしく感じられる

「愛したものはみんなうそだった」

きっとあのカフェが
寒すぎたから
みんな平気な顔でくつろいでいた
今夜は
自分の感覚が何も信じられない

こんな夜に
更新するnoteなんて
一つもない
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ルーティン・ルート

2019-07-27 20:21:00 | 短歌/折句/あいうえお作文
エコーある
王道を捨て
窓際を
急いだ猫の
安全歩行

「エオマイア」


夕闇に
記憶を閉じる
ヒヒとなり
よい湯のあとに
美味い牛乳

「ユキヒョウ」


エリートの
脅しのような
鞠を蹴り
1秒置きに
あびる反撃

「エオマイア」


AIの
奴隷になって
死地へ行く
狂ったネット
サーフィンの果て

「江戸仕草」

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なにわの大うけ

2019-07-26 21:18:00 | 短歌/折句/あいうえお作文
かけ合えば勝つや負けるや未知数の一手を守る書面契約
(折句「鏡石」短歌)

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pomera3秒

2019-07-26 10:07:31 | 【創作note】
 
 pomeraにはできることとできないことがある。pomeraはネットが苦手。それはもちろん強さでもある。ネットが苦手だからつながることも苦手。直接「note」などに結びつくこともできない。結びつくためにパソコンなどの力を借りる。たまにパソコンを開くと、酷くよそ者扱いされる。
 出鼻を挫かれて、世の中の不条理さを思い知らされることもあるのだ。
 
スイッチをつけてしばらくして
「再起動してください」
そんな……
今起きた人に
また寝てこいって追い返す?
それと同じでしょう
驚くことにそれは一度だけでない
言う通りにちゃんとしたのに
少ししたらまた
「再起動してください」
そんな……
昼休みを終えて帰ってきたら
またランチ食べてこいって
そう言ってるのと同じでしょう
(腹減ってないよ)
そんなに休ませたいか
お前の作業に意味はないって?
どっか行けって?
外で遊べって?
そこまで言うか
パソコンって酷いや
 
pomeraはそんなこと言わなかった
いつも3秒で
黙って迎え入れてくれる
 
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それはあなた

2019-07-26 07:37:54 | 好きなことばかり
夏は麦茶だ
いや夏は祭りだ
いやー夏はプールだ
いやいや夏はタンクトップだ
いやーやーやー夏はかき氷だ
いやいやいやいやいや夏は花火だ
いやーあー夏っちゅうもんはね……
 
夏とはいったい何なのか
 
夏の正体は
 
人の声に耳を傾けるほどに
遠退いて行くようだった
 
夏?
 
「夏は嫌いだ」
 
あなたはそう言って
ピシャリ
 
pomeraを閉じた
 
 
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うどんおばば

2019-07-26 03:47:39 | リトル・メルヘン

 

 がらがらと扉を開けると帽子の紳士が一人かけていた。私は店の中程に進み広いテーブル席の隅に座った。すぐにおばあさんがお茶を運んできた。
「今から茹でますと25分かかります」
 仕方ない。美味しいうどんのためなら私は待つことにした。お待ちくださいとおばあさんは店の奥へ姿を消した。間を置かず今度は少し若い女性がやってきた。
「今から茹でますので12分かかりますけど」
「あれっ。さっき別の方に言いましたが」
「えっ? 今は私だけですが」
「いやおばあさんが……」
 そんな人はいないと店の人は言った。
 私は中庭を眺めながらうどんを待った。生い茂る草の向こうに二段重ねの石蛙が覗いていた。おばあさんの運んできたお茶がよく冷えていてとても美味しい。
 15分経過。
 うどんはまだやってこない。
「ありがとうございます」
 帽子の紳士が席を立って帰って行く。
 
 
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ブギーボードに詩を

2019-07-25 22:06:03 | 【創作note】
ブギーボードはB5サイズ
思いつくままに書き出せば
すぐにスペースがなくなってしまう
 
コツコツと音がする
紙とも
キーボードとも違う
 
ページをめくることも
データを保存することも
ない
 
ただ一つのボタンは
消去のために
 
どうしてここに詩をかけようか
みんな消えていくさだめなのに
 
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