眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

パワハラ・ラーメン体験記

2021-07-11 10:57:00 | 幻日記
 あれは私が働き始めて間もない頃でした。お昼休みに会社の人に連れられてラーメン屋さんに行きました。近所では割と有名な豚骨ラーメンの店でしたが、私はその時が初めての来店でした。席に着いてゆっくりメニューを見ようとしていると、せっかちな部長がぽんぽんと勝手に皆の注文をしてしまいました。強面の部長ということもあって、誰も文句も言えず従うしかありませんでした。

「お待たせしました。豚骨ラーメン全のせ特盛りでーす」

 思っていた味とは違い、少しあっさりとした豚骨ラーメンでした。けれども、3分の1まで食べたところで、私は苦しくなってしまいました。普段から小食の私には、容量を超えていたのです。店の人にも申し訳なく思い、私は必死で箸を動かしました。食べても食べてもなくならない器の中が、だんだんと鬼の頭のように見えてきて、私はとうとう音を上げてしまいました。

「もう、無理です……」

「俺の注文したラーメンが食えないってのか!」

 部長に凄まれた私はその場で卵のように固まって困っていました。
 その時でした。
 店長さんが私たちのテーブルまでやってきて、壁を指さしました。

(無理な注文をした人には容赦なくお灸を据えさせていただきます)

 部長は貼り紙の文章を見た途端に震え出しました。

「お前たち!」
「へいーっ!」
「見せしめだ! つれて行け!」
「あいよーっ!」

「わーっ、助けてくれー!」

 部長はわめきながら抵抗しましたが、引きずられながら連れて行かれました。
 それ以来、部長の姿を見た人は誰もいません。国外に逃げたという噂もあれば、そんな人は最初からいなかったという声もあります。

 色々あったけど、そのラーメン屋さんが、今の私の大切な職場となりました。悪い人など一人もおらず、私は毎日充実した生活を送っています。
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魔法の言葉

2021-02-21 10:36:00 | 幻日記
 深夜、いつも決まった時間になるとエレベーターが止まる。すぐに連絡をするとまもなく整備員が駆けつける。
「修理に来ました」
 毎日、色んな顔をした人がやって来るが、作業は一筋縄ではいかない。2、3時間で済むこともあれば、夜通しかかることもある。建物自体が古く著しく老朽化しており、エレベーターにしても根本的な修理は難しいようだった。

「直りました!」
 今日は日付をまたいで3時だった。
 彼らは必ず仕事をやり遂げるプロフェッショナルだ。
 直らないとは決して口にしない。
「ありがとうございます!」(またお願いします)
 機械室の鍵を返して颯爽と帰って行く。

 きっと彼らは魔法をかけたのだろう。
 魔法は語る。
 ただ一日一日を、精一杯生きることだと。

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帽子の女(テイクアウト・バス)

2021-02-08 04:46:00 | 幻日記
 夜と照明が硝子を鏡にして、遠くに赤い帽子の女を映していた。ラスト・オーダーが近い店内には、私の他に彼女一人のようだった。きっともう誰もやって来ないだろう。ここにあるのは来た時とは違う空気だ。だんだんと人が消えていくような居場所が好きだった。相棒のPomeraが次のフレーズを見つけられずに、カウンターの上で眠り込んでいた。
 硝子の向こうに突然強い光が射した。到着した路線バスが、一人の女を呑み込んだ。

(彼女だ!)

 帽子の女は、今はバスの中にいる。気怠いため息をついてバスは出発した。バス停の灯りが消えて、私は独りだった。

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カオス・フロア(うそつき店員は誰だ)

2021-02-04 04:23:00 | 幻日記
1F
 それはありそうでなさそうだった。
 僕は2Fに上がってみることにした。


2F
 フロアが広すぎてよくわからない。
 あきらめて店員に聞くことにする。
 広いだけあって店員の数もそれなりに多い。

 店員A「ここにある分だけになるんです。
    それは1Fにあるかもしれないです」

 ここにある分だけになる。
 その台詞、覚えておいて損はない。
 自己主張を控え客観的事実を述べれば反論はしにくい。


1F
 店員B「ここにはこんなものしかないんですよ。
    あとは2Fにあると思います」

 それはきっと2Fにある。
 あると思われるならば上がるしかない。


2F
 店員C「ここにはないですね。
    あるとしたら1Fになります」

 店員の数は多い。それだけ仕事も多いはず。
 仮定の話にかけて僕は1Fへ下りる。
 忙しい店だ。


1F
 店員D「それですか。うーん。それは……
    ちょっとお待ちください。
    もしもしEさんDですけどちょっと教えて。
    それなんですけどあるかな?
    はあはあはいああそうなるほどありがとう。
    お客様わかりました。
    2Fの2番通りに1つあります」

 わからないことはわかる人に聞くのが解決の近道だ。
 僕はようやく真実にたどり着くことができた。


2F2番通り
 「これだ!」
 ついに僕はそれを見つけた。

 1980円? 何か思ってたのと違う。

 そうだ。百均に行こう!

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冬のバンズ・コーヒー

2021-01-21 01:14:00 | 幻日記
 カウンターに着き注文をする。
 店員の顔が強ばっているように見えた。
「申し訳ございません。ただいまホットコーヒー単品での提供はマシーンが壊れているためご注文いただけません」
「あー、そうなんですね」
 店員の顔に笑顔はなかった。きっと笑うところではないのだろう。
 冬はどうしても温かいものが飲みたくなる。そのためだけに出かけたくなることもある。温かさを感じてこその冬だとも思う。いつも簡単に手に入るからといって、それを当たり前のように思ってはならない。理屈ではわかってはいても、失うまでは気づかない私は愚かな人間だ。

「……セットで。お飲物は?」
「ホットコーヒーで」
「かしこまりました」
 隣のカウンターから、かしこまった声が聞こえた。

?   ?   ?   ? ホットコーヒー……

「もしかして、マシーン直りました?」
「セットですと大丈夫なんですが、単品の場合はマシーンが……」
 やはり、そう簡単に直るわけないか。
 一瞬浮かんだ希望はすぐに泡になった。
「もしかして、バンズから抽出されるんですか?」
「そうなんです」
「へー。そうなんですね」
「はい」
 店員は両手を合わせ待ちの姿勢を保っていた。

「美味しいんでしょうね」
「セットにされますか」
 私の欲しいのはコーヒーだけだった。

「直るまで待ってもいいですか」
「いつになるか約束できません」
 彼女の言う通りだった。
 きっと、待ってはならない冬もあるのだ。
 私は笑いながらカウンターを離れた。 

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横丁の異世界

2021-01-20 01:14:00 | 幻日記
 あふれるほどの人混みは突然昔話のようになってしまった。一帯に自粛の要請がかかり、下りたシャッターに無念の言葉が貼り付いていた。廃れた通りは、すっかり過疎化した故郷を思い出させた。みんな家でおとなしく過ごしているのだろうか。
 1人のクライアントに拘るな。チーフの言葉が頭の中を回っていた。1人のクライアントを大事にしろ。いったいどっちなんだ。矛盾の中で爆発しそうな頭を、アルコールにつけて冷やしたい。だけど、提灯の明かり1つ今夜は見えそうもない。雨。予期せぬ事態に傘もない。踏んだり蹴ったりの木曜日。
 ふらふらと逃げるように横丁に入った。いつもは通らない道だった。少し時間を無駄にしてもいい。どうせどこかで道はつながることになっているのだから。雨は上がり、そればかりか月が白く輝いていた。壁の間から現れた黒猫が、音もなく歩いて行くそのあとに私はゆっくりとついて行った。猫は一度も振り返らなかった。美味しそうな匂い。暖簾が風になびいている。こんなところにも秘密の隠れ家は存在するようだ。

「いらっしゃい」
「開いてるんですね」
 大将は怪訝な顔をしてみせた。
「向こうはみんな閉まってたから」
「まだ9時だよ。夜の魔物でも出るのかい」
 ゲラゲラと常連風の客たちが笑った。
「はははっ」
 誰もマスクもしていない。
「何しましょう?」
「ギムレット」
 スピーカーから乗りのいいジャズが流れていた。壁に貼られた夏祭りのポスターは随分前のもので、隣のカレンダーもすっかりぼろぼろになっていた。2月29日。
 そうだ。あいつの誕生日。
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記録するサル

2021-01-09 10:35:00 | 幻日記
 ライオンが歩いてきた。ライオンが歩いてくるとはこのことだ。狐に毛が生えていた。狐に毛が生えるとはこのことだ。まさにこのことよの。のーサルよ。サルよ、おるかー。虫が飛んで日が暮れてきた。虫が飛んで日が暮れるとはこのことよ。まさにこのことよのー、サルよ。サルよ書いておけ。

 もうすぐ雨が降りそうだ。雲行きが妖しいとはこのことよ。俺たちは横断歩道を渡る。横断歩道を歩いて渡るとはこのことよ。疑うまでもないことよの。のー、サルよ。まるで見たままのことよ。疑ってかかるのは愚か者よ。
 まったくよのー。
 そこも誰かが歩いて渡ったところだろう。俺たちはたどったところをなぞっているだけかもしれん。のー、サルよ。面白いのー。みんな書かねばならんぞ。

 ライオンが我が物顔で歩いておる。我が物顔で歩くライオンとはこのことよ。のー、サルよ。税が上がり雨が降り雷さえも鳴り響く。そんな時にライオンは我が物顔で街を歩く。流石のライオンとはこのことよ。のー、サルよ。流石にここは漏らさず書かねばならんのー。忙しいのー。
 サルは誠に忙しいのー。

 なんだなんだ、背中に羽が生えてきた。背中に羽が生えるとはこのことよ。のー、サルよ。
 サルよ、おるかー。
 ちゃんと書いておけ。

 俺たちの記憶はデタラメよのー。
 だから記録して残すべきよの。

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未来予報士の知らせ

2021-01-04 17:31:00 | 幻日記
 今をどのように生きるべきか。過去の経験から学ぶことは大切だが、それでは十分ではない。時代は高速で変化していく。過去の教えが通用しなくなることもある。自分の意志、感情、それもきっと大切だ。他人のこと、世界のことを考える必要はあるが、最終的に人生とはいったい誰のためにあるのか。原点を見失うことは愚かだろう。そして、最も重要なのは、未来を正確に予測することだ。未来を想定することができれば、正しい導きが得られるはず。策を誤ったり、おかしな方向に暴走しないためには、未来をみる目が何より重要なのだ。


心斎橋の明日の天気 晴れ

埼玉県の明日の天気 曇り

吹田市の明日の天気 晴れ

ニューヨークの明日の天気 曇り時々雨

四丁目の明日の夕日 きれい

本町の明日の雨の心配 なし

谷町の明日の夜 くる

香川県の明日の天気 晴れ

二丁目の明日の治安 よし

山口県の明日の景気 良好


「早く早く、この辺の天気は?」

名張市の明日の風 強し

マドリードの明日の風 やや強し

日本の明日の景気 概ねよし

心斎橋筋の明日の風 なし

鶴橋の明日の人出 疎ら時々混雑

西九条の明日の風 心地よし


「この辺、この辺!」

東海地方の明日の天気 晴れ

岡山県の明日の天気 晴れ

この辺の明日の天気 憂いなし


「明日はお出かけだ!」
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くれない12月21時

2020-12-31 02:17:00 | 幻日記
「申し訳ございません。
 ホットコーヒーは売り切れました。
 (アイスコーヒーでしたら……)」
いいえだったら あっはっはっはっ……

バーガーも何も持ち帰らずに
すぐ隣のカフェに近づく

誰も気づかない

一人は夢中で床を磨いている
もう一人は熱心にグラスを拭いている

看板は裏返っていないけど
もう今夜はおしまいなのか

近づいても見つめていても
誰も目を合わせてくれない

そうだね 嫌だよね

振られてから すぐ来るなんて

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あるヨーグルトの夜(がんばったところでがっかりする話)

2020-12-30 19:32:00 | 幻日記
 数あるヨーグルトの前に立つ時には迷いがある。どれでもいいように見えてもそれぞれにこだわりがある。正解のない棚には躊躇いを広げる時間がある。その時々にある気分と理想がある。選択の余地と悩める自由は幸せの内にある。ありふれて見える物の中に目立って高い物を見つけることもある。他とは違う何か、特別に強いパワーみたいなものがあるのだろう。(これにしてみるか)最初は高くつくけれど、頑張ればよいこともあるだろう。ちょっとずつ食べていこう。そして私はある1つのヨーグルトを手に取る。

 家に帰ってヨーグルトの外蓋を開ける。上に張りついた紙をめくる。
「こ、これは……」
 箱に対して7割も入っていないのではないか。
 高いのはいい。それは最初からわかっていたこと。
 しかし、その内容量は?
 私たちはそれをグラム表示で確認したり、手に取った重さで感じなければならないのだろうか。
 腹立たしいのは、頑張ったところでがっかりさせることだ。
 箱を開けてから(がっかりする人)がいないように、ヨーグルトの箱は駅構内のゴミ箱のように可視化してほしい。

 そんな願いを強く抱く夜もある。

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ソーシャルディスタンスの崩壊

2020-12-04 02:26:00 | 幻日記
 1番目の客と適切な距離を取りながら並んでいた。

「どうぞ!」
 2人体制のレジなので流れがスムーズだ。店員に呼ばれてかごを置いた。中身が少ないのですぐにすべてのスキャンが終わった。
「……円になります。少々お待ちください」
 1番目の客はまだ会計が終わらない。ポイントを使うのか、ギフト券か、チャージするのか、ややこしいのか。なかなか済まない。

「どうぞ!」
 だけど、3番目の客が呼ばれスキャンが始まっている。前は渋滞しているのに。僕は終わったけれど、終わってない。そして始まっている。戻れない。進めない。挟まれた。
 詰んだ。
(負けました)
 レジ前の牢獄に捕まってしまったのは何の罰か。
 狭いよ。近いよ。息苦しいよ。

おい!
ソーシャルディスタンスは?-い????
ソーシャルディスタンスどこ行ったー?

 適切な距離を守り並んでいた自分。
 あれはずっと昔のことだったろうか……。

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フェイク・ダウン

2020-12-01 10:42:00 | 幻日記
 夕日があげた天ぷらのように見えたので、落ち葉を拾い集めて小腹を満たした。錯覚は長く続くことはなく、小一時間もするともうお腹が鳴った。今度はもっと本格的な空腹だった。本物の天ぷらはどうやったら口に入れることができるのだろう。
「小銭に変えればいいじゃないか」
 木の裏から飛び出してきた仔狸が助言をくれた。それには落ち葉を侮らず真剣に向き合うことだという。

落ち葉を厳選すること
遠くの落ち葉に目をやること
躊躇わずに拾うこと
迷ったら拾うこと
拾わない時間を持つこと
落ち葉を愛すること

 仔狸は様々な方法を教えてくれた。それから私は小まめに落ち葉を拾い集めた。ため込んだ落ち葉をプラスチック・バッグに詰め込んで、オリジナルのジャケットを作った。羽織ってみればその辺のダウンに負けない暖かみがある。都会の冬くらいなら越せるだろう。
特価……1万4千円!
「一度だけ着ました」
 写真にコメントを添えれば一人前だ。
 流行のネット・サイトに出品して結果を楽しみにする。土曜の夜、ちょうどいい感じで寒くなってきたところだ。
(さあ、早い者勝ちだよ)
 元が道で拾ったものだとは、大きな声で言えないけれど。
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狐のへりくだり

2020-11-25 22:09:00 | 幻日記
「いつもつままれさせていただいております」
 どうぞどうぞと紳士は腰が低く無防備に見えた。
 どうもパワーが出ない。苦手なタイプだ。
 化かしが発動しないと狐は思った。
 ドアのない金庫は破ることもできないのだ。
 どこかにもっと見下してくれる者はいないのか……。
 それならどれだけ自分の力を出せることだろう。

「ちょっと休まさせていただいております」
 人間みたいな言い回しをしている自分を狐は恥じた。
 獣度が日に日に薄まって行く。
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ラーメンを食べよう(日曜クッキング)

2020-11-22 23:44:40 | 幻日記
用意するもの
 ①電子レンジ
 ②器
 ③水
 ④チキンラーメン

1 ②に③を入れ①に入れ1分ほどレンチン
2 ②に④を入れ①に入れ1分ほどレンチン
3 日曜の21時みたいにコショーを注いで完成
4 よくまぜていただきます

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証文の出し遅れ

2020-11-13 01:07:00 | 幻日記
 後ろに待つ者がいないから、それほど落ち着いていられるのではないか。男は金を払う折になって、ポイントカードをさがしている。
「お持ちでしょうか」
 膨らんだ財布に顔を埋めるようにして、幾層に連なるポケットを探っている。ございますでしょうか……。こちらとしては、待つ以外に何もすることがない。純粋な待機。人生にはそのような時間もある。お客様、プロポーズしながら指輪をおさがしですか。よっ、泥縄名人!
「なかったです」
「かしこまりました」
(で、ないんかーい! なんや、ないんかーい!)
 純粋な待機から純粋タイムロス。人生の時間の半分以上は、他人のために消費しなければならない。

 客が去った後に人生の時間を哀しんでいると床を走る物が目についた。中型のゴキブリだった。すぐに隣の部屋の戸棚に行き緑色のスプレーをさがす。ラッカー、ネズミ、556、アリ。違うな。形はみんな似ているけどどれも違う。目当ての物が見つからず、赤白のスプレーを取って現場に戻った。

(ほいっ!)

 既に奴は逃亡した後だった。
(おらんのかーい! 待ってないんかーい!)

 シューーーーーーーーーーーーーーーーーーー♪

 何もいないカーペットに向けて惜別の噴射。
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