プルルルル♪
10分前だ。ちょうどサビの部分だった。いつもいいところで電話がかかってくるのだ。
「延長よろしいですか?」
「あっ、大丈夫です」
「いえ、その、そうではなくて」
どうも店長の様子が変に思われた。
チャカチャンチャンチャン♪
フロントまで行くとスタッフ一同が私を出迎えている。
(いや、どういうこと?)
「もうちょっと歌っていただけませんか?」
「えっ?」
「みなさん喜びますので」
(ギャラもこちらの方から……)
チャカチャンチャンチャン♪
店の前に設けられた即席ステージで、私はマイクを持って歌った。どこで噂を聞いたのか、瞬く間に観衆が集まっていた。1曲歌い終えると大きな拍手。
チャカチャンチャンチャン♪
約束の時間を超えて私はアンコールにも答えた。
やっぱりみんなの前で歌うのは最高だ。
チャカチャンチャンチャン♪