眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

近くて遠いもの

2012-01-18 02:00:00 | 忘れものがかり
永遠と延々ならそう遠くもないけれど
禁煙と喫煙はとても似ているのに
ひどくかけ離れているから
うっかりすると遠いところへつれていかれる

ルパンがそんなこと言うかよ

誰に言われたわけでもなく
テーブルの上では
少し背丈の違うミルクとシロップが並んで
目を見開いてこちらを観察している

一旦組みかけた脚を
もう一度戻したのは
テーブルが当たって邪魔をしたから

「まだ早すぎる」

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箱入り家族 

2012-01-18 01:04:58 | ショートピース
正座をして待った。「礼を欠くことのないように」扉が開く。盆の上、コーラの泡が弾けるのが見えた。机にそっと置かれるグラスを見守った。「ありがとうございます!」扉が閉まり最初にマイクを手にしたのは祖母。新春らしく「We Are The Champions」で始まった。#twnovel

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GO HOME

2012-01-17 23:28:24 | 夢追い
 風で倒れた自転車を片手で起こしたけれど思ったよりも重くて途中で投げ出しそうになった。知らない人の自転車だ。道は工事中のために突然細くなる。働いているのはみんな外国人ばかりだ。「おじいさんは絶対片手で回すの」タオルを頭に巻いた女が言った。あの人は安定を目指さなかった故に……。マスクが必要なくらいに、土煙が舞っている。
 残り時間は僕の方が少なかったが、ある時を境に形勢は逆転した。完全に敵陣を突破してから僕が勝つことはもはや時間の問題のようだった。けれども、彼は時計を操作してきたのだ。逆さまにしたり、針の数を増やしたりした。時計そのものが四つになった時、何が正確な時間だったかわからなくなった。1つの時計は完全に止まっていて、それは押しても叩いてもまるで動かなかった。それから彼は時計全体を黒く塗った。幾つかの針がまだ進んでいたけれど、それを正しく読み取ることは困難だった。「君のがゼロだ」と彼がつぶやく声がした。遥か昔に終わった勝負の話をしているのだと思った。「もういい」叫んでいるのは僕だった。「負けでいい!」僕の負けでいいから。早くひとりになりたかったのだ。僕が持ち場を離れると間もなく彼がシュートを放ち、ボールは誰もいない空間に向かって易々と吸い込まれていった。窓の外を見た。目の前にはエレベーターが停止した状態で、誰かを待っていた。帰ろう……。早く、帰ろう。
 成績優秀者が(すべての参加者の意)順に呼ばれて、壇上を通過する時に好みの景品を取って戻っていく。紛らわしい名が呼ばれて、僕はその場で動けないでいた。やがて、あれはあなただったのではと誰かが言う声に押し出されて、僕も歩き出した。あえてセットになっていない方の石鹸を選んで席に戻る。会長が壇上に上がり、話を始めた。「もう既にご存知の方もいらっしゃるかと思いますが……」同時に皆が帰り支度を始める。鞄を閉めるチャックの音がそこかしこでしていた。

 故郷駅の名を路線図の中に見つけた。それは別の銀河の上にあるようだった。たどり着くためには、幾つもの川を越えなければならない。見たこともない土地の名前が大挙して分厚いバリアを築き上げていた。ピアノの演奏が速まると人々もそれに合わせて駆け足で椅子の周りを回った。順番に切符を手にするために、みんな踊らされている人々だった。ストップ! 音楽が止まって真っ先に中心にたどり着いた人だけが1枚の切符を手にして、輪の中を抜け出していく。落胆の余韻が引いた頃に、またゆっくりとピアノの節が歩き出して、ゲームが開かれる。僕は遠い場所に来てしまった。
 階段はとても狭く、僕らは横に並んで上っていくことはできなかった。上っても上っても下りてくる人々にはねつけられてなかなか順調に進むことはできなかった。「どうしてさ?」2番目の少年が立ち止まって不満を口にした。「ルールでは、左は上ることになっているはずだよ」そうだ、そうだ、と僕たちは心を1つにして階段を上った。けれども、上っても上っても下ってくる人々に厳しくはねつけられてほとんど痛い目に遭い続けなければならなかった。「どうしてさ?」3番目の子がぶつかった大人の1人に言ったけれど、答えているのはそれから数人先の大人だった。その答えは、しかも無言だった。きっと話す時間が足りなかったのだろう。(どうしてさ?)僕はただ言葉を呑みこみながら、先頭を歩いた。苦難の上りが続き、見上げれば道は遥かに遠く、振り返れば転げ落ちてしまいそうだった。もはやそれは当たり前のようになり、誰も疑問を口にすることはなくなった。風が吹き、ついに僕らの体は宙に舞った。転げ落ちる、その時が来た。けれども、近づいたのは空の方だった。優しい女が、僕らを迎え入れ、引き上げてくれたのだった。
「飛び級だよ」
 僕らは一気に何段階ものステップを乗り越えることができた。けれども、女は自分の行き先を見失っていた。
「私、フィギュアだったかな?」
 どうして、助けてくれたのだろう?
「僕たちが探すよ」
 僕らは一緒に彼女を探すことを決断した。

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ゲスト

2012-01-17 02:45:21 | 忘れものがかり
ほら

手の平を開くと
そこに小さな粒が見えた
微かに揺れて
今度は粒が開いた

ダンゴ虫

名を呼んで
男はそのまま
去っていった


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物忘れ

2012-01-17 01:23:22 | ショートピース
やりたいことはいくらでもあるのだし、永遠に生きたい……。そう言っていたのはつい昨日のことだったのに、彼女は私の前に永遠を置いて去ってしまった。彼女の言葉は決してうそではなく、その時の本心から出たものだった。急激に訪れた物忘れが、昨日の彼女を連れ去ってしまっただけ。#twnovel

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begin

2012-01-13 01:43:50 | ショートピース
健全だった世界が壊れ始めたのは私が健在完了形という形に手を出したからで、神様は次々と原形を投げかけて変換を迫った。規則に従わない者は、「begun!」撃たれてしまう。went は当惑した面持で元いた場所を振り返ったが、そこに自分の面影を見出すことはできなかった。 #twnovel

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マヨマニア

2012-01-13 01:24:13 | 短歌/折句/あいうえお作文
幻の
夜明けを待った
枕元
人魚のように
あしあともなく

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木目

2012-01-13 01:09:56 | 忘れものがかり
向こう側に行けば
白煙が充満しているのかもしれないが
大きな画面でサッカーをしている
こちら側には何もなく
ジャズが

あると信じているが
あるのかどうかわからないもの
木目の中では
みんな家具を選んでいる
こちらの色が落ち着く
こちらも光沢があって魅力的
みんなでテーブルを囲んで
みんな
若くて前だけ見てるような
これからの調子で

一瞬足を止めた時
見えたのは稲本選手だった
湘南ベルマーレ対川崎フロンターレ
こないだの

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猫の横顔

2012-01-13 00:48:27 | ショートピース
いかなる時でも警戒を怠らない生き物だった。人が顔を向ければ、あたかもカメラを向けられたかのようにピタリと止まり、しばしそのまま佇んでいた。その一瞬を記憶に留め思い出に残すためではない。静止の瞬間、眠ることができたし、夢見ることもできる、それが猫という生き物だった。#twnovel

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流行のワード

2012-01-12 21:27:19 | ショートピース
試語室のカーテンを開けるとロングワードをまとった彼女に「よくお似合いです」と店員が称える。「重ね語もいいね」次々と新しい語を持ってくる。「飾りすぎじゃない?」彼女はすっかり語膨れしている。「言葉は足りないと冷たい人に映りますから」更に語込ませながら店員は微笑んだ。#twnovel

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浮遊街道

2012-01-12 20:36:11 | 夢追い
 日々歌い続けることで、彼の記憶を呼び戻そうとした。リズムを変えて新しいものも取り入れて、今までにあったものからどこにもなかったものを作り出そうとする中で、毎日が積み重なって、とめどない歳月が川となって流れていった。歌の一つ一つはただ流木となって、誰の心にも留まることなく消えてゆくのだった。ある朝、「ただいま」と彼が口にした。当たり前のように朝がきた、といった調子で言った。その瞬間、彼は僕にとって見知らぬ他人となってしまった。どこから帰ってきたのか、どこへ帰ってきたのか、それさえわからなくなってしまったのだ。

 儀式の一環として金を撒いた。白いビルを男がよじ登って行く。泥棒? その周辺に次々と男たちが加わった。訓練だ。アクロバティックな形を取りながら、互いに絡みつき縺れ合って、進んでいく。危ない! 一瞬、手と手が離れて、落下する、と思った瞬間別の隊員が足を伸ばし、その手に捕まる。一瞬、危険と思わせるところまでもすべては計算し尽くされた訓練の一部なのだった。お金のことはもうあきらめていたのに、「あなたのお金も今は私のもの」と隊員が認めるので、僕はならば返せと迫った。突然、隊員はわからない言葉をしゃべりだした。取り巻きの者たちはボイスパーカッションを始め奇妙な歌が始まると、僕はついに理解し合うことをあきらめた。
 緩やかなスロープを通って自転車のライトが流れてくる。川に反射して輝くタイヤフィッシュを眺めながら、昔だったらこの川くらい自転車で飛び越えることもできただろうと考えた。今では、目の前にあるささやかな手すりさえも、危険な障壁のように見えてしまうのだ。
 適当なライブを見つけられないまま3時も過ぎて、外国人のカップルと乗り合わせたエレベーターを降りてホテルを出た。どこか遠くでサイレンの音が聞こえる道、まだたくさんの人が歩いている道。杖を振り回しながらお婆さんが、奇声を上げながら歩いてくる。決して関わらないように、あるいは余計な接触を避けるように道行く人が用心深くコースを変更する。僕は歩道を越えて、浮遊する。

 今年も残るところあと僅かなので、みんな髪を整えておくようにと先生が言った。残り少ない道の上から野菜たちが転げてくるのを、やり過ごしながらゆっくりと進む。店の前には車が止まっているけれど、それが順番を待っているのか、ただ止まっているだけなのかはわからない。八百屋の中では猫たちがいたずらをして困ると言って主人が愚痴を零していた。「この忙しい最中にまったく!」そこで主人は猫たちに遊び道具を与えることにしたのだった。「さあ、これを持って出て行け!」2匹の猫は、駐車場の片隅で胡坐をかきながら雲に向かって水鉄砲を打ち上げていた。それよりも相手に向けて撃った方が何倍か面白いよと言って教えてあげたけれど、猫たちはそのやり方がとても気に入った様子で、道筋を曲げることはとうとうなかったのだ。
 川の上に浮遊して、余裕を感じたのも束の間、おばあさんもまた杖を振り回しながら浮遊して追ってきたので、僕は更に浮遊して歩道橋を越えた。逃げすぎたのが明確に目標を示すことになったのか、おばあさんは宙に浮いたまま猛然とこちらに迫ってくる。一振りで歩道橋をなぎ倒して、向かってくるのだった。最初に見た時よりも、巨大化しているように見えたのは錯覚だったろうか……。「あれは本当に怖いな」と誰かが、下の方で言うのが聞こえる。

 僕が音楽家を助ける方を選んだため、置いてきた漫画家は少し寂しげでした。それで、痩せた、骸骨の絵ばかりを描いていたのです。


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12月の車輪

2012-01-11 21:47:26 | ショートピース
生身の肉体と鉄の塊との間に挟まれて車輪は鳴いていた。「もう嫌だ」どこにも行き場はなかった。「傷つけるのも傷つけられるのも」見えない車線を越えて、義務でも願望などでもなく、ただ生きるために必要な進化が翼を与えた。「月を越えてまた会おう」その時、自転車は空をつかんだ。#twnovel

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タクシードライバー

2012-01-11 20:58:43 | 夢追い
「どうして東京へ?」とタクシードライバーが尋ね、「テレビが壊れたから」と僕は答えた。そんなところから拾う人は、東京にはいないからねと言う。メーターが上がってしまうからねと言う。「東京駅へ向かう人はみんな迷子です」タクシードライバーは700円と書かれた帽子を頭に乗せていた。僕は東京の空について尋ね、彼は幻想の東京と現実の東京について答える内に、時間の話になり映画の話になった。「2時間というのが迷惑をかけない時間なんだ」迷惑という言葉が妙だった。「姿勢が続かないということ?」タクシードライバーはウインカーを鳴らし、右折レーンに入った。交差点の標識には知らない土地の名前が書かれている。「陶酔の限界なんですよ」限界とは、どういう意味だろう? 「時間を忘れてしまう。そういうのが好きだな」そう言うと彼は日常と陶酔について語り始めた。東京駅へ向かう途中、延々と映画の話が続き、徐々に非日常世界へと入っていくように交通量が減っていった。車線も信号の数も減っていき、人の姿も見かけなくなった。「登場人物が生きているような映画だよ」どんな映画がいいかについての彼の答だった。東京に来た時、彼は俳優を目指していたのだと言う。日が徐々に落ちてきた。
「どうしてやめたの?」余計なこととは思ったけれど、言葉は止められなかった。そして、タクシードライバーは黙り込み、車は細い急斜面を上った。誰もいない道だった。僕はどこへ向かうのだろう。行き先を伝える言葉を誤ったのだろうか。あるいは、出発の理由が既に愚かにすぎたのだろうか。

「どこだ?」落葉の敷き詰められた赤い道の上を車は滑っていた。タクシードライバーの肩を掴んで、僕は叫んでいた。「どこだ?」タクシードライバーはブレーキを踏んで車を止めた。不意に、自分が誘導して車を辺境の地に運んできたような気になると、恐怖がエンドロールのように押し寄せてきた。ドアが開き、落葉の上に僕の足があった。トンネルの奥から、老夫婦が助けを求めるようにして逃げてきた。おじいさんは足を引きずって、おばあさんの肩を借りている。車に戻ろうとした時、運転席にタクシードライバーの姿はなかった。車の後ろに隠れ込むようにして、老夫婦は小さくなった。人間か獣かわからないような影が、トンネルの奥から血の匂いを追って駆けて来る。闇の中から最初に現れた鎌のような金属が、落ちかけた日を受けて輝くと、それは着実に悪意を持った使い手と一体となりこちらに近づいてくる。何かを探し、地面に手を伸ばしたけれど、その手に握られていたのは落葉ばかりだった。凶器を振りかざし、泥だらけの男は、車のすぐ傍にいた。
 その時、何かが車を突き抜けて、僕と殺人鬼の間に立った。人間離れした何かが殺人鬼に体当たりした。「俺の原案のおかげでこの映画は成り立つんだろうが」そう言いながらモンスターが、その大木のように太い尾で殺人鬼の体を容赦なく締め付けると、落葉が風に舞い上がって殺人鬼の顔中に貼り付いた。やがて、赤い土に呑まれるようにして、殺人鬼の身体は沈んでいった。「もう大丈夫ですよ」
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KING

2012-01-11 02:12:48 | 短歌/折句/あいうえお作文
みよあれが噂の餃子の王将だ民が表を占拠しておる

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小犬と雨降り

2012-01-11 01:38:52 | 忘れものがかり
一度も吼えられことのない

戸の向こうから吼えられた
雨降りだったから
雨降りの中を傘などをさして通り過ぎたから
吼えられたのかもしれない
あるいはちょうど夕食時で
それで吼えられたのかもしれない
吼えられたので
犬の匂いがした


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