元総理が信号を待っていた。すぐに青に変わるべきだ。元総理がくそボールを投げてきた。判定はストライクだ。元総理が道を歩いてきた。脇によけて土下座で出迎えます。ふん、ひっかけ問題か。数々のトラップを含むドリルをクリアして、試験に合格した。現場に出ると仕事は想像していた以上に厳しかった。日々の訓練の中で経験を積んで、僕も早く先輩に近づかなければ。この街の治安はかなり悪い。
先輩の鷹のような目が路上の偽ブランドを見つけ接近する。
「前の者、止まりなさい」
女ははっとして足を止めた。
「ちょっとよろしいですか?」
そこから巧みな職質が始まった。
「今日はお一人で? こんな晴れた日に?」
「昨日の昼は何を食べられました?」
「いつから歩いてらっしゃるの? こんな広い歩道を」
「犬派ですか? 猫派ですか?」
「明日の夕食に何を食べられます?」
「今年は何年ですか?」
畳みかけるような厳しい追及に、女はついに音を上げる。
「もうわかりまた!」
女は偽ブランドに関する悪事を自供する。
「ご協力ありがとうございました!」
先輩は満面の笑みで容疑者を解放した。
「しばらく泳がせるぞ」
(この事件は闇が深そうだ)
~雨降り
五年振り
本みりんなら
冷蔵庫
雨上がり
工事現場の
フォルテシモ
元気です
どん兵衛濃くて
ウーロン茶
雨脚や
五輪にかける
テレビマン
「ちょっと涼しかったから遠回りして郵便局まで歩こう思いまして。そしたら遠回りして歩くことがメインになって、途中で反対方向に行ってしまいましたの。ウォーキングしなさいって先生も言うてはったでしょ」
「まあ、悪くはないです」
「そしたら予報では上がる言うてた雨がどんどんどんどん激しくなってきましたのよ」
「それは大変でしたね」
「いや大変なのはこれからよ。ちょっと歩き疲れた頃に、水たまりの中にドボンよ! もう先生どないしてくれる?」
「ほほ、どうないしましょ」
「ほんと水たまり多すぎへん?」
~定番の一着を持っていた
公開直後にはそれなりの人に見られるようだが、徐々に少なくなっていき、その内に人っ子一人いなくなる。寂しいようだが、それが自然な流れなのだろうか。
1日過ぎる毎に限りなく0に近づいていく記事の中にあって、最も読まれているのは『Abema将棋トーナメント』のコラムである。数年前に勢い任せで書いたものだが、#Abema将棋トーナメント の定番に入っている。
Abema将棋トーナメントは現在第4回が放送中で……
~師匠介入
「またさぼっておるのか」
「師匠。今念入りに読んでいるところです」
「だから怠けておらぬとでも? ふん。それは表向きのことよ。お前が汗を流して働いている時、休むことを怠けておるのだ。花に水を遣ること、鳥に話しかけること、山に登ることを怠けておるのだ」
「そうは言っても身は一つですから。仕事だってそうですよ」
「誰が決めたのかの。ふん。人はみんな怠け者よ。お前が指を動かす時、眠ることを怠けておるのだ」
「師匠。眠っていては負けてしまいます。厳しい時代なんです」
「三途の川を渡るつもりが、ポン酢の世話に捕まったか。まあ錯覚に気をつけることだ。もっとよく読むがいい」
棋士の読みの中に師匠の声が介入する。
かわす、取る、取る、取る、握る、遠見の角を放つ、しびれる、鍛える、蹴る、取る、取る、叩き切る、そっと置く、取る、取る、取る、遊ばせる、取る、取る、逃げる、追う、取る、取る、取る、そこでじっと風呂に入る。