眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

ダイスを転がせ

2020-05-31 09:38:00 | 【創作note】
話せば長くなる/書けば楽しくなる


一行書く間に
すっかり歴史は変わってしまう

たくさんたくさん
書くことがあるはずだったのに
端から端へ行く間におぼろげになり
折り返す時に見失ってしまう
3行目で完結
めでたしめでたし
(いや、めでたくない!)

書くことなんて
たいしてないと思っていたのに
キーボードが浮き沈む内にときめいて
折り返す内に見つけてしまう
終わるつもりがあふれかえって
いやになっちまう
(いや、全然いやじゃない!)

モチーフは肌に染み込んでいるようで
星より遠く離れていることもある

さて 今夜はどっちに転げるかな


寝かせておくのも大事
書いてみることも大事

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折句で言葉遊び、朝一短歌

2020-05-31 09:00:00 | 短歌/折句/あいうえお作文
縁は旬おいていくならまたとない
今に輝くあなたのライブ

(折句「エオマイア」短歌)
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女優降臨

2020-05-30 21:21:00 | 夢追い
 コーヒーは冷めてはいたが、まだ半分残っていた。ちょうど話が広がりかけた頃だった。新しい表情を彼女の顔の中に幾つか発見した。店の終わりは突然やってきた。

「当店はこれより回送レストランとなります。どなた様もお食事できません」恐れ入ります。

「どこか行こうか」
 もう一度最初から話を聞こうか。あるいは何か食べながら話すのもいい。彼女は先に店を出た。僕には色々とすることがあったのだ。テーブルの上に広げたノートやファイルをすべて閉じる。夏服を畳んで鞄に詰める。雨用のシューズも忘れずに持っていかなければ。テーブルの隅に彼女のスマホが残っていた。(案外落ち着きのない人なのだろうか)スマホをポケットに入れて店を出る頃には1時間が過ぎていた。荷物の多さを見ればきっと納得してくれるだろう。

 街を歩きながら次の店について考えていた。地下街への入り口が開いていた。あれはいつか来た……。いや似ているだけだろう。地下街への扉はどこも似て見えるものだ。記憶のとは違い何もない廃れた地下街かもしれない。何もない地下街を延々と歩くことの不安。それにも増してハンドルを持つことの不安。不安の中で駐車場に着いた。
 駐車場のすぐ前の食堂に入ることになった。

「お腹が空いたらすぐに食べる主義なの」
 色々と不安があったが食堂は明るく清潔そうだった。
「スマホ」
 レストランから持ってきたスマホを見せた。
「捨てたのよ」
 スマホはもう持たないことにしたと彼女は言った。

「いつ? いつの話なの?」
 もしかして他人のスマホを持ってきたのではと心配になった。一切捨てることにしたけれど、少し前には持っていたらしい。

「これは君の?」
 どうやら彼女のスマホだったものに違いなかった。
 パスタがあり、うどんがあり、ハンバーグもある。隣の席の二人組の男が何がおすすめかを訊いている。店員の女性はニコニコとして愛想がよい。
「今日家にいたらどんな酷い目に遭っていたか……」
 前の店にいた時とは打って変わってディープな話題になった。僕はそれをどう受け止めていいかわからず黙り込んだ。多分おかしな顔をしていたことだろう。

「嫌な女よね」
 そう言って自分を責め始めた瞬間、彼女は十年老いた。
「いやいや。背景がわからないから」
 言い訳ではない。正論だ。本当はもっとプロローグを聞いていたいのだ。それが一番平和な時間ではないか。濃密な話は急速に結末へ向かう。二人組の注文を通した店員が僕らの席にやってきた。彼女はパスタを注文した。

「持ち帰りで!」
 それには驚いたけれど、僕はうどんを注文した。初めての店で肉を噛み砕く自信はなかった。
「僕はここで」
 一人で落ち着いて食べるのもいいだろう。

「うちをみくびっとったらあかんのや!」
 突然の関西弁。彼女は激変を繰り返す。
「実るものも実らへんくなるゆうのがわからへんゆうんかいな!
 狢の通訳は狢に頼みやー!
 上辺だけみとったらあんたらもほんまあかんくなるでー!」
 隣の席の二人組が会話を止めて彼女を見た。主演女優を見上げるような目をして。

「Vシネマだ!」

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短歌だ折句だモーニング(意味ないよ)

2020-05-30 07:31:00 | 短歌/折句/あいうえお作文
駅前を飛ばした猫の新郎が
車こぬ間にササササササッ

(折句「江戸仕草」短歌)
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IoTボイス

2020-05-29 07:25:00 | 短歌/折句/あいうえお作文
お茶碗を抱え込んだらIoT天からゆかり降り注ぐ朝

丼を抱え込んだらIoT言葉なくとも頭大盛り

長椅子に腰を下ろせばIoT「そろそろ体を動かしましょう」

灰皿に灰が落ちたらIoT「あなたの寿命はあと200年」

Tシャツに袖を通せばIoTクローゼットから飛び出すパンツ

うそつきを見つけ出したらIoT「泥棒になる候補がいます」

深海に潜り込んだらIoT君の言葉で「ハローハロー」

怪獣が上陸したらIoT「弱点はハイトーンボイスだ!」

情熱が燃え尽きた時IoT「他にもすべきことがあります」

ちゃぶ台をひっっくり返しIoT「DV発生! 通報します!」


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ナンセンス長官

2020-05-29 06:54:00 | ポトフのゆ
 3番街から19番街まで長い空き地が続いた。壊れたビルの壁の一つに誰かが遠い昔に貼った紙が、そのまま残っている。

この場所で起きたうさぎとカメの決闘を見た方へ
その結果をできる限り詳細な形で
原稿用紙10枚以内にまとめて
最寄りのカラスまで届けてください

 けたたましいサイレンの音が公園を取り囲むようにして、蓋を開けてみれば頑なだった2人の誓いを跡形もなく引き裂くような厳しい寒さと、異端児を悲嘆に暮れる夜の対岸から甘い旋律でスカウトして結集した果ての野望をまだ隠しきれない落ち葉たちの渋滞を後目に迫ってきたのだった。

 春巻きをずっと冬の季語のようにして耳たぶを飾る白い猫が通りすぎるのを、しゅんさんはいたたまれない様子で傾けた帽子の先に見送っていた。月にもうすぐ届くであろう錆びたジャングルジムの先端で、カラスは手紙をくわえて、風の噂に翼をさらしていた。

「この度はとんだナンセンスなことでした」
「また悪い奴らが入り浸っているようだ」
 そのせいで湯加減がずっと狂っているとポトフは嘆いた。
「湯加減修正アプリが出ております」
 湯煙の向こうから業者は言った。
「最新版ですか」
「アプリを起動します」
「うわっ、こつは飛んだカラスアプリだ!」

 チタンコートの中でくたくたになったマタタビの憂鬱を帯びては、再びいたわりの下手くそから成り上がってきたような勇猛な空手家が、瞬きの歌に浸っているような湯が、ふくよかな芝の中から湧き出てくるのではなかったか。
 1人の分身をつなげただけだった2人はメタリックハイグレードのスタジオに入っては、ゆたゆたと破綻しかけた鉈を振り、マタタビの重く詰め込まれた肩に近づきそうな約束を、大気圏から越えてきたままのプレートを塗ったところで、再び、ぷくぷくと大粒の、湯が湧き出てくる。

「自分」
 と裁判館長が声を上げた。
「多分に気分的な詩文をカプセルに包んで栄養分に当てたな」
 その罪の重さについては、一言で要約できるようなものでは、決してない、と言った。

 盆地の中で暖かな春を享受する権利を手放さなければならなかった三輪車に乗ったオンリーワンが、とんちを天地無用の渡り鳥にきかせて心の底から本当に待ち望んだのは他ならぬボンチあげだったというのに、浮ついた南風の気まぐれが年輪の中に入り込んで誘惑すれば、案じるよりもフリーなレンズを帯びた管理者の倫理がくすぶっていく賄賂の中で溶解していく夏の始まりのように、逆さまにされた天性の箱の中には既に、沈黙だけが詰まっていたというわけだ。

 一寸の隙間もなく、一寸の希望もなく、大地に押しつけられた箱の中には、使い手をとっくに失った永遠的な吐息のような沈黙が、詰まっていたので、そこから先の歴史は、抜け道のないセンチメンタルに沈んでしまったというわけだ。

「おまえの罪は地球一玉分よりも僅かに重いが、その点について何かあるなら、この場で答えてみなさい」 
 裁判長官の声に男は背を向けた。背中で語るためである。 

「毛蟹が書いた手紙を読んでもいいですか」
 大海を生き抜いた兄が、カリブの海賊とアプリを交換した時に、船長との度重なる交渉の果てに交換条件として浮上してきたいくつものアイデアとアイテムの中にあって、すっかり誰からも見過ごされていた破れかぶれの網の中から、持ってきてくれた。人生は山あり谷あり島あり鬼あり夢あり、蟹あり。

「そこで私は書き手が蟹であることを知ったのだ」
 毛をむしり取って、面接官に投げつけた。それから就職先では、ただ飯を食うためだけに、自分をつなぎ止めたのだった。なかなかのまかない飯だったな。

「働かなくてもまかない飯は絶対もらうぞ!」
 田舎から7時間かけて赤い車で通うことで得られるべき当然の報酬である。
「労働者の権利だからな!」
 その権利を事もなく踏みにじることができたのは、血も涙もないオーナーだった。
「私はそれでも生き様を変えられなかったのだ」

 しゅんさんは、ポトフのゆの中からいつの間にか追い出されて、すっかり冷たくなっていく自分に、十分すぎるほどの身の危険を感じていた。
「にわかには信じ難いね」
「何だったら信じられるんだ?」
「私は何も信じませんよ。特に最新の歌と科学はね」
「そろそろ自分自身をメンテナンスする時では?」
「どうやってするんです?」
「インストールしてから、自分の中から洗い流すんです」

 しゅんさんは利用規約にざっと目を通した。
・同意する
・今すぐ同意する
・後で同意する
・友達や先生に相談してから同意する
・間もなく同意します
・深く同意します

「同意の仕方なんてどうでもいい!」
 どうせ同じじゃないか。同意する以外の選択肢が、何者かによって、容赦なく削除されていた。

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折句で言葉遊び「短歌でおもてなし」

2020-05-28 21:49:00 | 短歌/折句/あいうえお作文
温暖な森にまかれたテンピンは
習いある雀士の飛び道具

(折句「おもてなし」短歌)
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カムバック・リフレイン

2020-05-28 20:31:36 | MTV
曲の終わりはいつも寂しい
もう少し
繰り返せそうなところで
いつも曲は終わってしまう

「それでは次の曲です」

また新しい曲がはじまる

曲のはじまりはいつもうれしい





Lucky Lucky - a flood of circle
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モーニング折句「その一例を授業のように」

2020-05-28 05:55:00 | 短歌/折句/あいうえお作文
感情の加点にかける蜜月の
一夜に触れた司法問題

(折句「鏡石」短歌)
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音速のトキと3番街

2020-05-28 03:23:00 | ポトフのゆ
 当社比によると増量中とのこと。
「元はどれくらい入っていたのですか?」
「元って、元々もやしなんか入ってないですよ。入れるか、そんなもん、誰が入れるんだって。そう、まさにそれはゼロからの飛躍でした」
 その瞬間、地獄に突き落とされるようだった。

 あたり一帯が抗体のない船体の一部を固い変態に押しつけながら、大層な対戦車砲を浴びて死体となる、と同時に火星パークからのUターンラッシュの中から延滞金に乗ってムエタイファイターが現れると痛いほど打ちひしがれていた向日葵も天体も急に何かを思い出したように、退化と一体となった寝返りを打ち始めたのがわかった。

「あれは地獄だったろうか?」
「地獄に似た何かでしょう。思い出の中の地獄とか……。もしも本当ならば、あなたは戻れなかったでしょうから」
「私は幸運だったのだね」
 推測の滝に打たれるほどの、種は落ち続けていた。

 秋めいていて、まるで高速で流れる鮫の新しい遊技を追いかける快速の船が、深手を負った夜に続こうとしていた。疲れの色が、ムカデの風呂の表面に浮いて見えていたが、見え始めたのはそればかりではなく、挨拶を鼻で笑う辛口のオムライスに突っ込む鹿の角に似た気配を漂わせながらも、それとはまた少し趣の異なる冬の妖気を上唇に塗りたくった骨董品売場の老婆の冗談めかした歌の切れ端についた触覚のようなものがあったのかもしれない。

 あえて触れることもあえて触れないでおくことも、どちらも等しい道につながることを信じたのは、なえてもたえても何かにかえてそれを慎みの水たまりから拾い上げる1つの結論にするには、少し時期尚早であり、テレビと目玉焼きを天秤にかけた朝にはまだ色の薄い雪と通りすがりの猫の関係に近づいていったとしても、耐えることは容易く、それにも増して泣くほどの朝だったのである。そうした出来事の1つ1つを音速のトキが書き留めていた。

「忙しい町ですな」
 駅ビルによって薪割りをしながら。

 
 体罰を苦にタップを踏んだ猫はたいまつを手に暖をとろうとしていたけれど、火中の栗を拾うことを趣味としたシュー鬼の集団の邪魔が入ったところで、母の呼び名が蘇ることを止められなくなった。涙ながらに歌うのではなく、歌いながら海を網で捕らえるつもりだったのに。呼び名を変えたのは、きっとあなたとの別れだった。

 おふくろさん、母ちゃん、お母さん、
 あいつ、あの人、先生、きみ、
 苦しい胸の内をさらすカラスだった。
「涙が止まらない時はもう一度押してください」
 選べるのはオレンジジュースとアップルジュースだけの、寂しいバーだった。コーヒーだってありゃしない。

「ニ択か」
 景気の悪いことで、とカラスは毒づきながらオレンジ側の方を突っついた。途端に夕日の中からポストマンが現れて、ウエストカードを届けた。

「これさえあれば好きな時に好きな馬に乗って、好きでもない銃と似合いもしないテンガロンハットを身につけて、旅立つことができるんだ」
「私は今、ようやくここにたどり着いたところなんだ」
「あてのない旅人よ。待てと言っても君は行くのだな」
「私はどこにも行かない。行くあてなんてないのだから」
「ウエストカードの番号をごらんよ」

 しゅんさんは、旅立ちのカードに記載された番号の中に自分の手相を見た。断絶の相に違いなかった。インターホンは完全に遮断され、それがよいことのようにされてから随分と長い時間が経過していた。誰とも接触する機会は失われていたけれど、時々誰かがプロローグだけの置き手紙を残して逃亡者になった。

「あなたは人をだませるような人ではなかった」
 もしもそうするなら、言葉なんて尽くさずにもっと単純な手段を取るようなわかりやすい馬鹿野郎だったから。けれども、今ではドアが開かないほどの高さを持って、夢を描いた文集が積み上げられている。夢の半分はねつ造だというのに。しゅんさんは、将来から過去に向かって千℃の炎を見舞った。

「おい、小僧」
 誰かが呼ぶ声がした。
「おい、おまえ。おまえじゃない、そっちの象の方」
「私のことか?」
「だめだ。返事をしたら、つれていかれるよ」
 カラスが優しく忠告してくれた。
「わかった。何も答えないよ」
「そう、それでいい。私に全部話してごらんよ」

 しゅんさんは、黒い羽を守護神的パーカーのように受け止めて無防備になった。
「深く掘って、言葉を溜めておいたんです。いっぱい、いっぱい、そうしておくんです。いつか話せる時がくると思って」
「話せる時は来ましたか」
「話せる人はなかなか現れず、時は流れていきました」

「時を恨んだのですか? それとも夢を」
「どうでしょう。ただ幼少期は言葉が混乱していて、すべてが夢の中だったように思います。記憶は確かに残っているのに、言葉でそれを再現しようとすれば、全部夢のようになってしまう」
「悪夢だった?」
「猫がついてきたとか、帰ってきたとか、そういう夢です」
「だったら、まだ残っているようだよ」
 そう言ってカラスが息を吹きかけるとくすぶりの中から夢の切れ端が燃え上がった。

 夢の明かりが街をすっぽり包み込むと犬は尾を垂れて自分の小屋の方に帰って行った。
「ここは天国じゃないんだ」
「うんだ、うんだ」
 警備員が帰った隙に曲線を引き損ねたポンコツのボンゴレ術師が、幾千の仁義なき肉団子を引き連れて闇の混合リレーを催し始めた。

 街は夢とカレンダーに浮かんだ鮮やかな水溜まりに跳ねるバレンタインに染まるようにして、言葉の揺れと一体化する若きヌーの群れの血管がしるしをつけながら走る地の果てを見つめる大陸と化していた。白線を引き続けながら拡大するコートの果て、抑圧された歓待の網を抜け出して引き伸ばされ始めたピッツァを囲むユートピアを追いかけて、削り取られた夢の鎮魂歌、むしり取られていく昨日にあてた反戦歌。その中でウサギと亀の対立は、あまり人々の注意を引かなかった。

「みなさん、道の真ん中にあふれないで!」
「ここは天国じゃないか」
「うんだ、うんだ」
 精細を欠くトングが落選させたボンゴレのかなしみを、その場にいた誰が理解したというのだろう。麺の数は、千本から万本はあっただろうに。天国が消え去った後でやってきた路面電車は、レールを捨てて麺の上を蛇のように走った。麺はどこまでも伸びて、闇を束ねる夢紐のように優雅だった。

「3番のカードをお持ちの方」
 ロングブルーをまとった男が、しゅんさんの元へ近づいてきた。
「3番街を差し上げます」
 突然、街の名士となるとは考えられなかった。

「どうして?」
「素敵な街にしてください」
「身に余る光栄です」
「ふふふ、ご謙遜を」
「いや違う。違います!」

 しゅんさんは街を掴み上げて、烏合の衆諸共放り出そうとした。けれども、思いの他街は自身の肩を強く傷つけることに気がつくと再び、地に降ろした。
「受け取る覚えは、ありません」

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折句「ありがとう」 例によって意味に欠ける

2020-05-27 15:48:00 | 短歌/折句/あいうえお作文
赤熟れた林檎をセルフカットする
トガリネズミのウーバースイーツ

(折句「ありがとう」短歌)
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愛鍵

2020-05-27 10:42:00 | 夢追い
 何かを伝える夜明けの鴉の声をすぐ近くに感じた。ベランダか。硝子戸を開けると雪が冬布団のように積み上がっている。一夜にして大量の雪が降った。視界を塞がれて表の道を見渡すこともできなかった。今日は多くの学校や会社がおやすみになることだろう。鴉の声がまだ聞こえてくる。ベランダいっぱいの雪の中から一つのピースを見つけて抜き取らなければ、鴉の声は消えない仕掛けだ。

「ぼくがお母さんだ。捨てないよ。安心だよ」
 何度も呼びかけて寄り添っている。理想のミルクに近づくように配合を工夫し、失敗を繰り返しながら。おびえても、身を引いても、自分からは逃げないように。大丈夫。その内に大丈夫になるから。
「どこにも行かないよ」
「うそだ! 人間だ。お前は人間だ!」
 違うよ。さあ飲んで。眠って。安心して。裏切らないよ。不安な夜を幾つも乗り越えて、粘り強く、時を待つ。

(鍵は愛なのだ)
「大丈夫。ここにいるよ」


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おいで

2020-05-27 08:05:00 | 短歌/折句/あいうえお作文
プチまずいコーヒー券を持っている心地よくあるひとりに惹かれ


眼光をレンズの奥に秘めながら正座の人が盤上にいる


ひと跳びで三日月にぶら下がるため助走はもっともっともっとだ!


僕の行くあとの世界が美しくなれと願った雑巾レース


納豆の勇者を混ぜて強くなるゲームジャンルは育成その他


いつだって出向いておいでコンビニの隣は君のための交番


ミルクティー眼下に置いて耽る時消えて行くのは己か君か


コツコツと指姫さまが膝を打つ「早く私の方を向かぬか」


棒読みの台詞と共に始まった劇の主題はRPG


酒を飲み真犯人を追いつめるテレビの前が君の逃げ場所






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ロンリー・シチュー(底辺の争い)

2020-05-26 07:34:00 | ワニがドーナッツ!
「パンがない?」
「申し訳ございません」
「え、え、え、まだこんなあるのに、
このシチューの底どうしろと?
どうやって救出しろと」

「ご飯ならございます」
「いらない」
「シチューのおかわりお持ちしましょうか?」
「はあ? うそでしょう」
「申し訳ございません」
「パンじゃなきゃ。待つよ」
「恐れ入ります。パンは明日にならなければ」

ワニがドーナッツ!!

「筆はある?」
「筆ですか」
「もう筆でいいわ」
「逆に筆でどうされるんです?」
「逆にとは何が?」
「筆はありませんけど」
「じゃあどうすればいいの?」
「はあ? 逆にどうしろってのさー!」

ワニがドーナッツ!!

「とうとう本性を現したな」
「逆に何なんすかー。あなたは」
「お前のとこがパンがないのが悪いんだろう」
「あなたシチューの底をごちゃごちゃ何なんすか」
「何だお前、シチューの底を馬鹿にしてるのか!」
「じゃあもう支配人呼びます?」
「呼べ呼べ」
「今日支配人いませんけどー」

ワニがドーナッツ!!

「逆に考えてから言えよ」
「どうさせていただいたら納得を?」
「帰らせてもうらうよ。私がな!」
「ありがたーす!」
「逆にありがとう」
「あっ、出口向こうっす」
「わかってる! 逆に帰るんだよ」

ワニがドーナッツ!!

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ノット・イージー「暗号とロック」

2020-05-25 10:28:00 | 短歌/折句/あいうえお作文
簡単に解読できぬ暗号に守られ生きたアマゾンの森

簡単によくはならない振り飛車はどこに振っても苦労が絶えぬ

簡単にぶつかりはせぬ駒組を午後まで続けいちご大福

簡単に帰りはしないお客様上着を持って再度着席

簡単にフォークが立たぬフルーツに見切りをつけて戻る盤上

簡単に腐りはしない納豆の賞味期限はなきも同然

簡単に解読できぬ暗号が与えてくれた生のアンサー

簡単に目覚めはしない魂に爆音ベビー・ロック・スマッシュ

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