迷子

永遠を
恐れるように
迷い込む
生き物は詩を
愛するものだ

折句 短歌「エオマイア」

透明職人

感情の
通わぬ場所で
身を縮め
いまを葬る
職人の業

折句 短歌「鏡石」

いつもここから

創造の
鼓動を受けて
書き殴る
詩情はいつも
ここにあるから

折句 短歌「そこかしこ」

マジック

伯爵と
過剰な魔女の
錯綜が
別れ話を
霧雨にする

折句 短歌「馬鹿騒ぎ」

みえて届かない

カメムシは
硝子について
道探し
行ったり来たり
「親切はまだ？」

折句 短歌「鏡石」

モンク王

オオカミよ
文句ばかりで
手に負えぬ
なぜ人間を
主役にするか

折句 短歌「おもてなし」

おせっかい

空色の
恋心まで
可視化して
しあわせ着せる
コーディネーター

折句 短歌「そこかしこ」

猛追モップ

追いかける
モップの先で
テノールが
涙を浮かべ
主婦を讃える

折句 短歌「おもてなし」

日々を運ぶ

早朝の
国道を行く
かのものは
芯の通った
言の葉運び

折句 短歌「そこかしこ」

木綿と絹

お豆腐は
木綿がいいと
手が伸びて
なぜは怯えて
尻込んだ絹

折句 短歌「おもてなし」

降ってくるまでは

嗚咽さえ
漏れ出したバス
停留所
長く不義理な
詩を待ちながら

折句 短歌「おもてなし」

踏まえるような踏まえないような

あえてきみ
17音を
踏まえない
「ラフに歌えば
いいんじゃねえの」

折句 短歌「アジフライ」

心の旅

感情が
全方位的
旅をする
チープな街の
温もりを追い

折句 短歌「風立ちぬ」

ディスられた雨をスマイルで受け

ひなげしが
土を被った
ジオラマで
靴を飛ばした
猛獣使い

折句 短歌「羊雲」

終わらない歌

N極の
終わりは遠く
まだまだと
いま思えれば
明日は開ける

折句 短歌「エオマイア」