若すぎる君に一つの忠告を送って行った猫15歳
バリスタがいるカフェにいかなくても
おいしいコーヒーが飲めるのは
コンビニエンスストアがあるから
博多にまでいかなくても
バリカタのとんこつラーメンが食べられるのは
コンビニエンスストアがあるから
12種のスパイスが入った本格カレーを
インドまで飛ばずにいただくことができるのは
コンビニエンスストアがあるから
みんなみんなそれは
コンビニエンスストアがあるから
いつだってどこにだってみんなのために
コンビニエンスストアがあるから
「あとは大丈夫ですから」
ロボホンは自信ありげだった。
「大丈夫か? 新商品のポップは……」
「2号に引き継いでいます」
「そうか」
「休んでください」
大山田は長いこと休んでいなかった。
「本部から人が来るんだが」
「店長。あとのことは僕らに任せてイニエスタでも見てきてくださいよ」
「そんなにゆっくりできるはずないだろ。バルセロナだぞ」
「いいえ。店長。地下鉄で行けますよ」
「何を言っとるんだね君は!」
「チケットはそこに置いてますから」
「まったく。君のパスにはついていけんよ」
水曜の男は
駐車場の前に立っている
ポケットに手を入れたまま
もう一方の手のスマホをのぞき込んでいる
木曜の男は
誘導棒を構え
まっすぐに立っている
視線は車が訪れるであろう
道へ向いている
働く姿勢はまるで異なっている
木曜の男はいつも家にスマホを忘れてくる
待ち合わせですか?
女が待っていたのは自分自身だった。どこか遠い街からやってくる待ち人ではない。約束を交わした愛人を待つのではない。それは自分の奥の深いところからやってくるのだ。
「私が消えて本当の私が現れる」
女はずっと長い間それを待っていた。現れるとは限らない。けれども、現れた記憶なら微かに胸の内に残っていた。それが今日だったらいいけれど……。時は自分では選べないということも女は既に知っていた。自分がありありとしてここに残っている間、それが現れることは決してない。仮の自分と本当の自分が共存するということはないのだ。先に自身が消えて、そこで初めて封じられていた自分が目を覚ましてくれる。
火を貸してもらえますか?
燃え上がる炎に焼かれて虫は消えた。
女は何事もなかったように待ち続けていた。
かつてない
顔のあなたを
認めたら
1億あげる
信用金庫
「鏡石」
かみきりの
係になって
見ず知らず
以前の君の
氏名を壊す
「鏡石」
判定に
ならともしもの
みそをつけ
頭上にあげる
君の王冠
「ハナミズキ」
感情の
ベストキッドが
連打する
倒す相手は
過ぎ去りし日々
「かんべレタス」
「楽にしてください」
「大丈夫です」
「そんなに構えずに。どうぞ縦になってください」
「いえいえ。この方が楽なんですよ」
「えー。無理しないでくださいね」
「いえ本当に。僕はこの方がずっと楽なんです」
「見えにくいでしょう。世界が」
「いえいえ」
「だいたいみんな縦ですよ。人様はそうしています」
「はあ」
「人様は縦型になってくつろぐことが普通じゃないですか」
「人様って。僕はこれで普通なんです。横並びがいいんです」
「そうですか。奇特な方なんですね」
「そうですか。落ち着くんですよね。横並びが」
「並びって」
「横になってるのがいいんです。猫の隣でね」
「猫? どこにいるんです?」
「猫の横で横になってるのが好きなんですよ」
「えっ? いませんよ」
「いるじゃん! なあ。いるよな、ずっと。」