長時間ぼーっとする方大歓迎!
短時間集中して学ぶ方お断り!
がむしゃらに打ち込む時代は終わっていた。人々は与えられた1つのドリンクの前で大人しくするように丸め込まれている。少しでも長居したい。そう考えるなら、掟に反抗するのは愚かなことだ。積極的に何かを始める仕草をみせる者は誰もいない。広々としたテーブル、格調高い椅子、和菓子のようなソファー、どこを見回しても熱情の切れ端は見当たらない。越してきた幽霊のような顔をした人がくつろいだポーズを取っているだけだった。
大人しくしているから不満がないと?
僕はまだ騙されているだけかもしれないぞ。
笑っているから楽しいと?
悪いことをした人が捕まるの?
水槽にいるのは金魚なの?
ピストルが鳴ったら走り出す?
怖がらせるのがお化けなの?
布団に入ったら眠るのか?
缶を開けたらすぐ飲むの?
角道を止めたら振り飛車か?
テレビを壊すとロックなの?
上着を着たからすぐに帰る?
雨が降ったら悲しいの?
離れていたら忘れるの?
玉葱を炒めたらカレーなの?
笑っていれば平気なの?
チョコをくれたから好きなの?
チョコをくれないから好きじゃないの?
そんなことない!
世の中そんなに甘くも単純でもない。
「全くなんて限りない世界だ!」
(手に負えない世界だ)
「早くここを出して!」
鞄の底から魂の叫びを聞いた。
次の瞬間、テーブルの上にはpomeraが乗っていて僕の指は吸い着くようにその上を這っていた。そして間もなく店の人が駆けつけてきた。
「お客様、お勉強の方は……」
「はあ?」
「他のお客様のくつろぎマインドの妨げになりますので」
「えーっ?」
そんなことで僕らの運動が止められるはずないだろう。
「お客様! 退店していただきます!」
ふっ。笑わせるな。
お勉強だって?
そこまでしていったい何を守りたいのだ。
こんなところこっちから願い下げだ。
「チッ!」
最後にpomeraが捨て台詞を吐いた。
ミサイルの飛び交うメインストリートを抜けて、僕らは寛容なテーブルが残された街をたずねて歩き出した。