眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

お笑い裁判

2020-07-31 22:22:00 | ナノノベル
 会見のあとで笑ったのは誰なのか。
 失笑罪に問われたのは猫だった。

チャカチャンチャンチャン♪

「猫は確かに笑いました」
 証人の花が言った。
「猫に間違いありません」
 カブトムシも同意見を述べた。
 やっぱり猫なのか……。
 傍聴席がざわついていた。

チャカチャンチャンチャン♪

 その時、扉が開き新しい証人が登場した。
 ライオンだ。
「それは不可能です。猫は鼾をかいて眠っていたのです」

チャカチャンチャンチャン♪

 ライオンの証言によって猫の濡れ衣は晴れた。

「あの笑いは、季節はずれのヒョウのいたずらでした」

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メイクアップ・アイデンティティ 折句、和歌、短歌、いかがでしょうか

2020-07-31 05:56:00 | 短歌/折句/あいうえお作文
塗りたくり
連続的に
俺である
小さな意思を
馬鹿にするなよ

(折句「濡れ落ち葉」短歌)


あたぼうよ
死んだら食えぬ
タコライス

(折句「あした」俳句)


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【曖昧エッセイ】長い一日(伝説の持将棋)

2020-07-31 05:41:00 | 将棋の時間
 研究通りに50手まで進んで、そこから20手くらい自分の手を指して終わる将棋も多い世の中だ。
 それがあの2人ときたらどうしたことだ。
 昼から深夜まで2局も指して1局は200手を越えて持将棋になり、その次の対局も中盤から最終盤に至るまで形勢は二転三転、やっぱり200手を越える将棋になった。連戦の疲労もあって、「決め手に欠ける」という声もあるだろう。しかしどこまでも魅せる将棋ではないか。どうして、この方々がやるといつもこのような人間らしい戦いになるのだろう。

「長い一日でした」
 勝利者インタビューに現れた勝者はきらきらした目で一日を振り返った。視聴者の質問を拾いながら、
「もう一局くらいできそう」
 と言った。
 それを聞いて私は泣きそうになった。(ああ、本当に好きなんだな)
 感動巨編をみせられたような気分になってしまったのだ。
 一日というのはこれほどまでに充実させることができるのか……。
 個々の指し手よりもトータルで打ちのめされてしまう。

 一口で将棋を指すことはできない。
 人生についてもきっとそうであろう。


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2000年問題(永遠)

2020-07-31 05:30:00 | ナノノベル
「みなさんに言わなければならないことがあります」
 そういう始まりはだいたいよくない話だ。
「2000年先の未来、今ここにいる人たちは誰もいません」
 やっぱりそれはあまりに恐ろしい話だった。

「どこにいないの?」
「どこへ行くの?」
 質問している方にも明らかな動揺がみえた。
「わかりません。でも……
 私たち以外の何かがここにいるでしょう」

「本当ですか?」
「わかりません」
 わからない、わからない、わからない。
 先生の話はいつもわからないばっかり。

「では、歌いましょう。
 この歌の永遠を祈って」
 やっぱり最後は歌うしかない。

 人の未来はよくわからない。
 信じられるのは歌しかないのだ。

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シャドー・ライター

2020-07-31 03:08:00 | ナノノベル
「もう少しだ」
 その先に行けば水がある。
 これで私は助かるのだ。
 力を振り絞って私は目的の場所までたどり着いた。
 グラスを取る。半分開いた口を近づける。グラスをゆっくりと傾ける。水は揺れない。ああ。何もない。
 何も入ってない!

「ここまで来たのに……」
 それはシャドー・ライターの描いた影に過ぎなかったのだ。

 どうせならもっと遠くで知りたかった。
 もっと下手に、うそとわかるように描いてくれればよかった。
 うそを真に見せたのは、シャドー・ライターの技量と私の中にある欲望だ。うそは破れ命の水は消えた。
 しかし、欲望はまだ滅びない。
 私は真のオアシスを目指して歩き始める。


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ヘビーメタル(それがいい)

2020-07-30 23:11:00 | 忘れものがかり
「根を詰めすぎるとよくないよ」
 その忠告は正しいものだ。だけど詰めなければ隙間が空いて余計なものが入り込んでくる。お腹が空きすぎて痛くなったこと。友達が笑いながら裏切ったこと。古書の匂いが奪われたこと。3月の終わりに引き裂かれたこと。コーヒーカップがあふれたこと。邪魔者扱いされたこと。濁った現実と忌まわしい記憶が、呪いのように押し寄せてくることをとめられない。

「根を詰めるのはよくない」(それは何に対して……?)
 その正しさは揺るがないものか……。

 不意に戻ってきた反抗期に導かれて僕は根を詰めはじめる。
 風に向かって歩きながらすべてのテーマは風になる。(余計なものはいない)
 僕は忘れる。何も食べていないこと。友達がいなくなったこと。12月が終わったこと。コーヒーカップが空っぽになったこと。自分がこの世に存在しないこと。既に過去の話になったこと。

 あなたにはわるいけど、きっといまはそれがいいことなんだ。


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4台目の迷い

2020-07-30 22:06:00 | 【日記】原稿用紙を埋めたい人
 ホームの端っこは屋根がない。もしも雨が降っていたら、少しの間だけ傘をさして歩かねばならないだろう。少々の雨なら濡れながら歩くのもいい。開いてすぐに閉じるのは面倒な仕草だ。賢い人は中寄りの車両に乗って、そこから降りるのだ。そうすれば降り立ったホームには屋根がある。そんなこともあって同じ電車でも人のいる場所には偏りがある。土曜日に降り立ったホームはいつもと違って人が少ない。いつも同じ時間に見かけるあの人の姿もなかった。雨はもう上がっていた。

 階段を下りると右から車が続々とやってくるのが見えた。1台目は大型トラックだった。とてもかなわないと思った。大きくても小さくても、生身の肉体にとっては元々かなわないのだが、大型車両を見た時には圧倒的な重量の差を感じてしまう。イオンへ行くためには車道を横切る必要があったが、大型トラックが通り過ぎるまでは車道に近づくことも躊躇われた。私は少し膨らんで歩きながら横断歩道に向かった。

 大型トラックが速度を緩めることなく通過し、続いて3台の車があとを通り過ぎた。4台目の車は少し速度が遅かった。しかし、そのあとにやってくる車はもうない。私はあえて横断歩道の手前まで来たものの、あえてその先に踏み込むことはしなかった。4台目は速度を落としながら近づいてきた。停車する車なのか、それともそのまま進むのか。わからなかった。

 渡るのか待つのか私は少し迷いながら揺れていた。運転手の視線はまっすぐ前を向いていた。しかし、その目には迷いの色が見てとれた。行けるのか行けないのか。止まるのか止まらないのか。そうしている内に、迷いと迷いがぶつかって車は止まった。
 4台目運転手の視線の先には少し離れた場所に停止しているパトカーがあった。運転手は横断歩道の手前で速度を失って、私に横断歩道を渡らせることを選択した。
 しかし、そのブレーキは確信を持って踏まれたものではなく、私とパトカーと、もしかしたら助手席に座るパートナーの声、種々の要素が重なり合ったあとの、最終的な着地に過ぎなかったようにも思える。助手席の女は冷静な顔で背筋が伸びていたように思う。それはその時にはっきりと確認したのではなく、あとから振り返って何となくそうだったのではと思ったのだった。
 横断歩道を渡り私はイオンモールに向かった。

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【折句】我慢の子

2020-07-30 12:32:00 | 短歌/折句/あいうえお作文
ABCどこにも行けぬ週末を
食いしばる紫陽花の魂

(折句「江戸仕草」短歌)



大型のモールの中で店員が
なくしたもてなしのマインドよ

(折句「おもてなし」短歌)



絵に描いたお餅になって待ちなさい
揖保乃糸ゆで上がる1分

(折句「エオマイア」短歌)



雨が降り応接室へ駆け込んだ
ケイトが遊ぶスイッチの海

(折句「アオカケス」短歌)

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グレート・エンジニア(グレート・ブルー)

2020-07-29 10:50:00 | ナノノベル
 これからは点滅している間に渡り切れない人が増えてくる。一方でそんな人たちに手を貸すような人は減りつつある。人情に頼っている場合ではない。(人が渡り切らない限りはそのまま青)であるべきだろう。
 私は取り急ぎ新しいシステムを開発し、試験的に主要な交差点に設置した。これからの時代は、やさしいシステムが人間を守らねばならない。私たちエンジニアの肩にかかる期待は何よりも大きいものだ。

「リーダー。大変です!」
 部下が血相を変えて駆け込んできた。
「何? 九丁目の歩行者信号がずっと青のままだと?」
 どうしてそんなことが起こるのだ。
 何か計算外の事態が発生したのだろう。
「行くぞ!」
 こういう時は、実際に現場に行って確認するのが一番だ。
 私たちは、車に乗り、シートベルトを締め、制限速度をきっちりと守った上で、現場に急行した。

「こ、これは! みんなバッタじゃないか!」
「どうしてこんなところに……」
 歩道の上を大量のバッタが覆っていた。
 残念ながら、これは私の専門外だった。
「ま、まえの博士を呼んでくれ!」

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五円玉拾いますか

2020-07-28 21:19:00 | 忘れものがかり
姉が子犬を拾ってきた

まだ子供の僕たちと
作りかけの家と一緒に
犬は大きくなっていった

いくつもの段ボールと
柱の削りくずと
色んな人の靴を玩具にして

ともに河川敷をかけた
雨に打たれた
けんかしたり仲直りした
父と一緒に山菜を採りに遠出した
謎の洞窟を見つけて潜り込んだ

時々犬は家出することもあった
呼んでも呼んでも帰らなかった
突然さささと足音がして
体中に土をつけて犬は帰ってきた

しばらくすると僕が家を出た
久しぶりに帰ってくると
犬はよそよそしかった
1年も離れれば忘れてしまう
あきらめている内に表情が変わる
突然思い出したように声を上げて
何度も何度もすり寄ってきた

一緒だと思っていたけれど
犬は僕を追い越すように大人になり
おばあさんになり
そして……


犬という大河の中に
僕はどれくらいいたのだろう

もしあの日 姉が犬を拾ってこなかったら
犬はうちにいなかっただろう

あるいは こうも思う
しばらくして姉は
別の何かを拾ってきたのではないか

それはまた別の宇宙の話かもしれない

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孤独系宇宙

2020-07-28 20:18:00 | 忘れものがかり
私があなたを知ることはない
私に知らせる道がない

あなたが私を知ることはない
あなたに知らせる橋がない

私はここにいる
あなたはそこにいる
毎日のように行き違っている

ここには手がかりがない
互いを知らせるシグナルがない

孤独系宇宙の中で私たちは出会わない

偶然と幸運に恵まれない限り


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コイン・パス

2020-07-28 07:46:00 | 夢追い
 更衣室を出たところで気持ちが揺れてすぐに戻った。ロッカーに片づけるつもりだったけど、窓辺に誰かの置いた帽子が見えて自分もそこに置くことにした。コートにまだコーチは到着していなかった。常連の中の声の大きい人が仕切りアップが始まっていた。夏の祭りのような陽気なアップだ。盛り上がる一方、それには距離を置く人も多く見られた。自販機の前に行きアクエリアスを見つけた。小銭入れの中で眠りすぎたせいで、コインのサイズが合わなくなっている。どのコインを試してもアウトだった。

「これを使いなさい」
 謎の老人がコインを貸してくれた。恐縮しながら投入を試みた。最初は駄目だった。先ほどのコインと同じ大きさのように見えた。老人が見守る中、繰り返しチャレンジした。本物、本物、と信じて押し込むことでついに自販機を攻略した。

(ガチャン)
 恐竜の卵が落ちてきた。老人は微笑んだ。



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折句うた「明日へのささやき」和歌、短歌、いかがでしょうか

2020-07-27 18:46:00 | 短歌/折句/あいうえお作文
水色の
奏者になって
ささやけば
幸は薄めの
移動形態

(折句「ミソサザイ」短歌)


揚げ豆腐
しかないされど
誕生日

(折句「あした」俳句)


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蛍の光リフレイン/これから

2020-07-27 04:04:00 | 忘れものがかり
1時間が経って
フードコートの脇から「蛍の光」が零れ始めた

ここも追い出されるのか……

イヤホンを外して身構えていた

蛍の光はいつまでも続く
蛍の光はいつまでも終わらない
もう泣きそうだ

空調の音
弁当に輪ゴムをかける音
椅子を引く音
恋人たちの談笑
ささやき 願い
台車の車輪


プレハブの匂い

何もかも建て替えられる
僕らは過渡期の中にいたのだった

退院してから数年経った頃
施設を訪れた
新しいベッドは角度を変えられる
あの頃 枕は石みたいだったけど
何から何まできれいに整っている

ここにはいじめっ子なんていないのだろう

羨ましくて
くやしくて
少し切なかった


蛍の光は終わり
雑貨店は明かりを落とした

追い出されなかった……

僕は生き残り
今に帰ってきた

ノンシュガーは甘くない

現在地
イヤホンを取り戻してロックオン

夜は これから

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【折句】東京タワー

2020-07-26 09:27:00 | 短歌/折句/あいうえお作文
長官の言葉を呑んで張り込んだ
ツアーは折れて東京タワー

(折句「チョコバット」短歌)



エゴを置きGoTo君は窓辺から
文学と詩の旅人になる

(折句「エゴマ豚」短歌)



若さゆえ旅を外れた静やかに
布団を被り寝溜めキャンペーン

(折句「渡し舟」短歌)



エルニーニョ東京のある7月に
靴を散らして去るのは君か

(折句「江戸仕草」短歌)


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