先日近所の散歩道を歩いたところ本当にちょうどいい感じで、季節が運んでくる風と私とがちょうど一致したようでした。そのように感じるのは1年でもそうはないことに思い当たりました。お便りありがとう。それでは風さんからのリクエストたむらぱんで「ちょうどいいとこにいたい」 #twnovel
「受けてから考えるな」僕は郵便屋さんを迎えに行った。手紙を受け取ると同時にもう走り出している。熟読する時間などないのだから。考えながら走り出した僕とペンは真っ直ぐきみへと向かっていくのだ。その時、背後から物凄い速さで僕を追い越していったのは、赤いポストだった。 #twnovel
「陣形が整ったなう」敵の極秘情報を感知した将軍は、味方武将に向けて一斉に機密情報を発信する。「いざ出陣なう」即座に周りからの返信が集まる。「準備OKなう」そうして決戦の地に到着した時、そこに敵の部隊は既になく、将軍の城が奇襲攻撃されていた。「踊らされてたなう」 #twnovel
願いから望みにパスが通ると願望が望みを追い越しパスが通る。すぐに欲望が追い越し更にそれを追い越した野望へとワンタッチでパスが通る。後から泣きながら追い越してきた切望がパスを要求している。ピッチの中には数え切れない希望が集まり、まだまだあふれ出てくるようだった。 #twnovel
ベランダは小鳥達の集合場所。「じゃがりこは何味?」「何味が一番?」「何味を持ってきた?」「どこで拾ったの?」騒がしさが頂点に達しみんなが一斉に飛び立って学校に行ってしまうと急に静かになる。静かとはこういうことだと思い出す。「おかえり静か」もう一度眠りに入ろう。 #twnovel
読みかけの新聞を閉じて、次の新聞を手に取った。新しい記事に目を通していると、また次の新聞がやってきて私を強く誘う。断っても断っても際限なく押し寄せてくる読み切れない新聞で、部屋はあふれかえってしまった。新聞の多すぎるこの町から、私は今夜逃げ出すことを決意した。 #twnovel
眠れない、眠れないと考えたり声に出して言ってみたりして数時間が過ぎ、とうとう今日も「眠れなかった。」と言葉にした瞬間、過去は過去ものとなり新しい時間が流れ始めた。どこからかゆっくりと規則的な呼吸の音が聞こえ、そう、眠りに入る時は、こういう感じだった。ピピピッ。 #twnovel
体から腕、指そしてその先に伸びた橋を渡って小人たちが一人残らず降り終わるのを待って、いよいよその根本からプチン、プチンと切断して、騒がしい小人たちと縁を切ると安心して眠った。翌朝、私から切り離された爪を滑り台代わりに小人たちは遊んでいたが、もう私には関係ない。 #twnovel
「よかったら広げてみてください」表と裏を読み終え机に置くと女は「中身もありますから」と言うが、そんなことをすると人に当たってしまうのが心配で、「大丈夫ですから」とそれを察したように言うので、思い切って広げてみると街はすっかり雲に覆われて間もなく雨が降り出した。 #twnovel
要請を受けた私はシャキーンと鳴って出動したのだけれど、到着したテーブルで彼女が食べていたのは、お粥、豆腐、ミニトマト、ヨーグルト……、すべてスプーンで食べられるものばかりで、私の唯一できることといったらただ転げてみせることだけだった。彼女は私を、拾うだろうか? #twnovel
銃声のように聞こえるのはバーコードをスキャンするセルフレジの音であり、1つ1つ目にも止まらない速さで商品を滑らせる男の姿は荒野のガンマンのように見えたが、14回目の銃声と同時に彼は倒れてしまった。不正を発見した保安官が迷わず銃を抜いたのだ。銃声は、続いている。 #twnovel
「刀は突き刺してもよろしいですか」早々と突き刺されたお腹からは血があふれ出し匂いを嗅ぎつけたヒョウが早々とやってくるけれど、「違うよ。これは血じゃない」と否定してもヒョウには血の意味がわからない。ヒョウはふと自分の全身を見て、その模様に今更驚いているのだった。 #twnovel
本当にそれでいいのかと何度も念を押した。「もっと載せなよ」と言って銀色の翼を広げた。容量は100ギガ程もあるのだというが、私の言いたいことは小指程のものだった。少し物足りないというような顔をして、鳩はたった一行の言葉を載せ旅立った。「それでは返信を楽しみに!」 #twnovel
もう待ってはいないかもしれないと思った彼女の黒い影をロビーの向こうに見つけ、胸に春風が入り込んできた。蝶結びが上手くできない。身を屈めていると彼女の姿は見えなくなり、一瞬前に見たものは幻だったのではと不安になる。あるいはこの瞬間に飛び立ってしまうかもしれない。 #twnovel
「どうせ誰も見てないんだから」それが何でもかける理由になるというのか、彼はしょうゆから始め情熱、不満、マヨネーズ、ありとあらゆるドレッシング、夢、呪い、願望のようなものをかけ勢いよくかき込み始めた。軽蔑と羨望が空腹の中に満ちてゆく、僕のご飯はまだ真っ白いまま。 #twnovel