眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

あの時の詩

2022-05-16 04:51:00 | 短歌/折句/あいうえお作文
あの時に愛していると言ったこと嘘ではないがあやまりだった

あの時に堪えてみせたかなしみを引っ張り出せば壊れてしまう

あの時に包み隠した本心を渡り切ったらすべて吐きます

あの時に壊した縁が重なって残されたのが独りの私

あの時に晴らせなかった屈辱が時々胸を刺すからブルー

あの時に死んでもいいと言ったこと嘘じゃないけど時がすぎたの

あの時に本気を出せばなれていた自分を追って今から行くよ

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端攻めミスディレクション

2022-05-15 22:36:00 | 将棋ウォーズ自戦記
「王手がかかるのは嫌じゃないか」

 地下鉄飛車ってそもそも嫌だなと思った。
 また、形勢に自信がある終盤戦で逆転負けする時には、よく端が絡んでることに最近気がついた。逆に、形勢がわるい時、居飛穴相手に端攻めすると意外と勝てたりすることもある。特に、時間の短い将棋では端攻めは有効だ。穴熊や美濃囲いの弱点が端であることは間違いない。

(端を攻めただけだ何とかなっちゃう)
(どうかしてしまう)

 中央辺りをみている時に、突然端を攻められたらびっくりするのではないか。視野が狭くなる。(大事なものがみえなくなる。ハンカチが落ちていても見落としてしまう)迷う。(時間を使う)嫌になる。弱気になる。怖くなる。
 恐怖や迷い。これはミスが出る要因になる。

「端攻めって何かよくわからないじゃないか!」

 色々利いている。玉が近い。色んな攻め。色んな受け。謝る手。手抜く手。逃げ出す手。上に逃げる手。下に逃げる手。攻め駒を攻める手。頑張る手。17の歩って何で取るの? どの場合は受かるの? どうならつぶれるの?
 よくわからないから、逆転も起きやすいのは当然だ。

(問題があったら端を攻める)
 というのは正しい。元手がかからないことも大きい。
 端というのは、一番端っこだけど一番複雑かもしれない。端攻めに対する理解を深められたら、確実に香車一本くらい強くなるのではないかな。


~自信がないと(意志が曲がり)返事ばかりになる

「意図、線が通っていることが大事」

 攻めは連動性、一貫性が大事だ。
 さっきはと金を作り、次は桂頭を攻め、今度は飛車を追う。その場その場で適当にみえる手を指していたら上手くいかない。部分部分は正しくても筋が通っていなければデタラメになるのだ。
 行き当たりばったりと臨機応変は違う。
 自信がなくなると自分の手を指せなくなる。常に迷子の中にいるような状態で、前に指した手のことも忘れ、相手の手に返事ばかりするようになってしまう。よい手を指すためには、自分をしっかり持っていることが大事なのだ。

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逆走返し

2022-05-14 05:14:00 | デリバリー・ストーリー
逆走も信号無視も当たり前? 青信号でブレーキ準備!

無音にて心斎橋を通過した AIはまだ君を呼ばない

レジ待ちのローソン列が途切れずに目の前にあるピックが遠い

「こんにちは!」オートロックに呼びかける返事は今日も期待できない

地底よりピックを終えたタコヤキを背負って目指す天空の城

暗闇が恋しくなったミナミから抜け出し君はあびこへ向かう

逆走の念を持たない自転車に心苦しく逆走返し

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隠れ家的ドロップ

2022-05-13 05:04:00 | デリバリー・ストーリー
 ピンだけが正確な人。さりげなくヒントをくれる人。ドアを開けて待っていてくれる人。ピンも住所もデタラメな人。終始無言の人。特徴を詳しく並べてくれる人。呼んでも出てこない人。家から飛び出してくる人。目印を知らせてくれる人。(ガソリンスタンドの横です)コンビニ前で待っている人。親子で手を振ってくれる人。お客さんの受け取り方というのは、実に様々なものがある。

(たどり着いた時が一番怖い)

 時々、家の前まで行って迷子になることがあった。その日の最初の届け先は2丁目にある一戸建てだった。ピンはだいたい合っていた。番地もだいたい合っていた。(ピンも番地も正確である時といい加減な場合がある。そこを見極めるにはある程度の経験が必要だ)
 表札の名前を見て確信した僕はボタンを押した。

「お待たせいたしました……」
「住所みて」
 男の声が短く答えた。

「ご注文いただいてないでしょうか?」
「よくみて!」

 違うとか頼んでないとか、決してそんな風には言わない。短い中にも苛立ちの語気が感じ取れる。
(あとは自分で察しろということだ)
 恐ろしい。だけど、非は間違えてるこちらの方にある。どこで道を間違えてしまったのだろう……。いいやそんなことはない。ちゃんと正しく信号を無視せずやってきた。何より表札が合っている! 名前が合っている! 狂っているのは相手の方じゃないのか。
 取り乱しながら僕はアプリから電話をかけた。

「もしもし……」
「家の前に木があって、あ、今出ますので……」
 しばらくすると木に覆われたところから本当のお客さんが出てきた。

「ああ、こちらでしたか。お待たせいたしました」
 たまたま近くに同じ名前の人が住んでいたのだ。
 そういうことだってよくあることだ。
(名前を過信しすぎても危険である)

 そこは自然の木に覆われた隠れ家的な物件だった。
 表札なんてみえないじゃないか! 玄関だってみえないのだ。
 表面だけをみていてもたどり着けない場所があることを学んだ。ブレイスの下のホルダーからドリンクを抜き取る。2口飲んで気持ちを落ち着かせた。
 配達完了! 
 時給602円。
 まあこんな日もある。

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純粋なものたち

2022-05-11 03:32:00 | ナノノベル
 アリクイがオオアリクイに道を譲るのをアリクイさがしはじっと見届けていた。戻りライオンがくるにしてはゆとりキツネが涼しい顔でいるのはうそつきザルの言うことだからに違いない。雨まち虫の子を哀れみ交じりの目でみていた犬待たせのお腹は少し大きかった。笑い杉につながれた悟り牛の背にはようなし鴉がくっついている。

「海まで行ってもアリクイさがしはいなかったよ」

 アリシラズがぼやいていたのはまだ夏のはじまりだ。
 箪笥預金を食いつぶした犯人を巡って虫々の鼻息でカーテンは揺らいでいた。金食い虫は餅食い虫とつるんで時食い虫を責め、時食い虫は床食い虫の肩を持ちつつもカーディガン食い虫の存在をほのめかすことも忘れていない。

「お前だろ」

「こんなもん食うか」

「他に食うもんないんか」

「なかったらどうなんだよ」

 食い違う主張に歪んだ空間が削り取られていくことをベランダの猫は敏感にキャッチした。

「食い虫ばっかりやな」

 猫はおじいさんの帰りを待っていた。虫わき畑に行ったきりだ。

 絶滅に向かって進むのが世界だろうか……。
 うれい狼は時計の針を気にかけている。

「どちらへ?」

「まずは吉野家まで」

 コメクイムシのリーダーは足を止めずに答えた。
 まだまだ続きがあるという様子だ。

「いい一日を!」

「そちらこそ!」

「あのものたちはいつも純粋でいいね」

 できすぎ虫のつぶやきを聞きすごすと節蝶はアリシラズを乗せて西の空へ飛び立った。

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自転車に厳しい ~どこまでも300

2022-05-11 03:16:00 | デリバリー・ストーリー
2リットル×3本背負ったら3.5キロ300

自転車で小一時間かかるかな9.5キロ300

ごちそうのビルに挟まれ待っていた時間も含め300

反映が正しいものと胸を張る100%300

自転車は所詮自転車お前には300ほどで十分

「1円の適正価格感謝せよ」(300+1円)

前方を漕ぐのは男ふらふらと僕は仄かに受動喫煙

約束はどこ吹く風よ弾けると君が歌った300

トイレットペーバー1つハンドルに吊して目指すタワーマンション

ナポリより上がるピッツァを待っていた1円さえもつかない時間

人力で運べるものの限界に君が断じる300

 

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僕も龍になりたかった

2022-05-06 16:12:00 | 将棋ウォーズ自戦記
 相振り飛車を思い描いて指していると、相手はいつの間にか「こいなぎ流」の右玉陣形になっていた。飛車先が保留されているため、向かい飛車から逆襲することもできなかった。僕は囲いを木村美濃にした。ゆっくりしていて玉頭から攻められる展開は嫌で、左から雀刺しの陣を作って端から攻め込むことを狙った。すると相手は、歩を突き捨て桂をポンと跳ねてきた。単純で軽い攻めなのに、二枚銀の弱点を突かれたようで嫌な感じがした。仕方なく僕は美濃の金をよろけて中央を受けた。(不本意な金寄りだ)気がつくと飛車交換になっていた。軽い成り捨ての手筋をあびて飛車を打ち込まれる。やむなく僕は自陣飛車を打って駒損を逃れる。

「まだまだこれからよ」

 そういう風にみることもできる。駒損をせずに、決め手を与えないようにじっくりと指せれば、チャンスは残せるだろう。しかし、こちらの方が時間がない。予定ではない展開になったことで、勝ちにくい将棋になっていた。

「そういう陣ではないんだよ」

 雀刺しの陣が、世界の隅っこにもの悲しく残っていた。自分から攻め込んでいくつもりだったのに、一方的に受けている展開は辛いものだ。

「僕も早く竜になりたい」

 そうして相手の竜に自陣飛車をぶつけてさばきを狙った手が、敗着になってしまう。(先に相手の角道を遮っておくべきだった)
 決め手の角切りをあびて、自陣は完全に崩壊した。
 辛抱が足りない。しかし、敗着の他に敗因はある。

「相手の角桂が大いばりする展開になったこと」

 雀刺しの陣が不発に終わったことに対して、相手の陣のよいところを最大化させてしまったこと。やはり、それに尽きるのではないかな。




●鍛えるところを意識する ~生き様をイメージする

 筋肉を鍛える時、鍛える箇所を意識して行うと効果が増すという話がある。将棋の上達も同じようなものだ。漠然と勝利を目指してやっていても、なかなか強くなることは難しい。もう少し、日々具体的なテーマを持って戦う方がいいだろう。テーマは、何でもいい。

 よーし右四間飛車を撃破するぞ。よーし、居飛穴を退治するぞ。よーし、相振り飛車で作戦勝ちするぞ。よーし、端攻めを玉で受けて受けきるぞ。よーし、時間で勝つぞ。よーし、自陣角を打つぞ。よーし、手厚く指すぞ。よーし、盤上を制圧してやるぞ……。
 とにかく前に「よーし」とつけて気合いを入れることが大事だ。

「よーし、3回指して3連勝するぞ!」

 そんなテーマだっていい。
 鍛えたいところ、理想や生き様をイメージして指すと、ただ漠然と指すよりもモチベーションが上がり、学習密度もアップするはずだ。
 そうそう勝てるわけじゃない。

(勝ち負けなんて大した問題ではない)

 それよりも、いい手を一手指せるという方が重要だ。

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バグ・ポテト

2022-05-06 03:06:00 | 夢追い
 向こうに行けば会えるのかもしれない。次の瞬間には訪れるのかもしれない。動くことも動かないことも危険だ。多くの者はどうするのだろう。捨てた石が大化けすると思うと捨てられない。最初から宝石は見つからないから拾ってみるしかない。自惚れた待ち合わせは待ちぼうけに変わるだろう。僕は石を積み上げて石垣を作る。
 少し気が緩んだのか。石の隙間にファスト・フードができていた。

「ご一緒のポテトはどのようにおつけしましょう?」

「いいえ、結構」

「それでは私が悪者になってしまいまいます。ピアスのように? 最後の晩餐のように?」

「じゃあ普通で」

「本日はお持ち帰りいただけません」

 店員は申込用紙をカウンターに置くとすべての個人情報を書くように迫った。

「全部ですか」

「行政からの指導で」

 どうも話がおかしいのは、石の組み方が甘かったからだ。ほんの少しでも隙をみせれば、あらゆる方向からツッコミが入る。備えないものは滅びる。四六時中気を抜くことはできず、休日と言えどもオフラインにすることは不可能。生きている限りはオンなのだ。恐ろしき野生の時代。
 他国からのサイバー攻撃によって、注文は大混乱に陥った。
 飛び交うナゲットの中で助かる道を探す。
 午後3時の期待は大型アップデート。

「今回のアップデートによって無数のバグが修正されました!」

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こどもの日の折句

2022-05-06 02:17:00 | 短歌/折句/あいうえお作文
雨音がみぞおちを打つ小説に
安らぎながらカップ焼きそば
(折句「あみじゃが」短歌)


わやわやと魂を揉む詩の上に
歩を並べ置くネイティブ・ナイト
(折句「渡し舟」短歌)


友情が気化した夜明け百億の
夜に熟した梅干しをくれ
(折句「ユキヒョウ」短歌)


宇宙史をタップでめくる井戸端に
ビート激しきトット漫才
(折句「うたいびと」短歌)


映像が奥へと続く街ぶらは
命を拾うあくなき旅路
(折句「エオマイア」短歌)


コーヒーもとうとう尽きたもう一杯
飲むほど富んだ人になりたい
(折句「こどもの日」短歌)


柿色のセロファンだけをタネにして
地球の芯を抜いたマジシャン
(折句「風立ちぬ」短歌)


うそめいて多弁になれた一局を
ひっくり返し弔う二人
(折句「うたいびと」短歌)


ソニックがコードをかけるカテゴリに
小説投げてコーナーキック
(折句「そこかしこ」短歌)


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パーティはスリーコインズ

2022-05-05 03:37:00 | デリバリー・ストーリー
こん棒でスライム叩くコツコツと4.5キロ300

親切な村人たちに泣かされる1.2キロ300

経験値目当てに潜る迷宮の一期一会は300

立ち寄った道具屋筋でカツ丼と風を切ったら300

もう1つ買うと言えないやくそうを頼りに進む冒険の道

村人が行ったり来たり邪魔をする3.5キロ300

選ばれし者たちが住む塔がある噂ではそう北堀江とか

ドラゴンの鱗の下の宝箱6.5キロ300

パークスの角に倒れた勇者たち21時のベホマズン待ち

スケボーの一団すぎたアメ村の硝子に映るふしぎなおどり

パーティをはぐれ紀州街道を5.5キロ300

一度だけ話したほどのことだけどルーラの中に君の微笑み

不意に出たゴールドマンが新町でマッチングして300

ゴーストが名誉をうたい暮れて行く夜を覆ったキメラの翼

タワマンのラスボスが待つ40階たどり着けたら300

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【将棋ウォーズ自戦記】相振り飛車とわっしょい問題

2022-05-04 03:47:00 | 将棋ウォーズ自戦記
 角道を止めると相手は三間飛車に振ってきた。振り飛車党にとって、いきなり問題の局面だ。自分が振り飛車を指したかったのに、角道を止めたすぐ後に振られると、先を越された感がある。先手には、居飛車でいく道と自分も飛車を振る道が残されている。僕はここでしばし指を止めて考えてしまう。(そんなこと最初に考えておけ)それはそうなのだ。僕が気になっているのは角道を止めた一手だ。居飛車にしろ振り飛車にしろ、いずれにしろ、それは作戦の幅を狭めている意味もある。迷った末に、結局僕は四間飛車に振ることにした。

 相振り飛車だ。こちらが駒組みを進める間に、相手は軽快に飛車先の歩を交換してきた。三間から向かい飛車に転じて気がつくと先に2歩持たれていた。(後手番なのにな)相振り飛車というのは、何となく進めていると作戦負けになっていたり、一方的に攻められることがある。主導権を握って戦うことはそう簡単ではない。僕は四間飛車から向かい飛車に振り直した。(これは手損ではないか)でも、振り飛車にはよくあることだ。

 向かい飛車にして飛車先の歩を交換した。すると相手は美濃囲いの頭に歩を打って受けた。飛車の引き場所は4カ所あり、場合によってどれも有力である。ここも相振り飛車で問題になる陣の構想だ。1つ引いて中段飛車は、右辺の攻めを牽制する狙いがあり、また端歩をぶつけて攻めることもある。2つ引いた浮き飛車は、角頭(桂が跳ねた場合の桂頭)をケアし、また角頭の歩を突くことで飛車の横利きを通すこともできる。3つ引くと飛車の横利きは極端に少なくなるが、相手の角筋を避ける意味や桂を跳ねた時に紐をつけるというメリットがある。4つ引くと元の位置に戻り、自陣全体に飛車の横利きが通ってバランスもよく無難である。もしも桂が跳ねている場合には、これに一段飛車という5つ目の選択肢が加わることになる。こういうちょっとしているようで多分大きなところは、慣れてくると感覚的に選べるようになるのだろうか。3分切れ負けのような短い将棋では、考えるよりも感じなければならないことがほとんどだ。

 僕は飛車を元の位置に戻して角道を通した。すると相手は止めたので少し安心した。角がにらみ合っていると何をされるかわからないし、こちらが何をしていいかもわからないのだ。僕は角を66のポジションに運んで、桂を跳ねた。すると相手は右の端歩を突いてきた。僕は左の端歩を突いて端攻めをした。この瞬間、こちらの角のみが働いているので作戦勝ちを超えて優勢になった。美濃囲いに対して1歩持って飛車角桂香の攻めが実現すると単純に数で受からないのだ。

 端はつぶれた。相手はやむなく角道を通して戦線を拡大してきた。僕は角を交換して再度66ポジションに据えた。すると相手は飛車をよろけて石田の構えで桂取りを受けた。その時、僕の持ち駒には桂があり、受けるにしても薄い受けだ。しかし、こういうのはミスディレクションにもなり得る。たくさん隙があっても突けるのは、1つだけだ。

 少し迷った末に、僕は端を置いて飛車取りに桂を打った。B面攻撃だが、既に端を乱しているので右辺を攻めることで迎撃の陣を取る狙いがあった。飛車取りに角を成り込むと相手は世界の端っこから角を打ってきた。99の地点は端攻めによって生じた穴で、飛車が動くと馬をす抜かれる。この筋があることによって、局面はやや複雑だ。(もしも、飛車の引き場所がもう1つ上だったら……)これを結果論とするのは間違っている。端を攻めることも、角交換になることも、その陣からは既に明白な未来予想図として描けるものなのだから。

 僕は馬で飛車を取り、相手は飛車を取って馬を作った。飛車交換となり敵陣に飛車を打ち合う展開となったが、端を壊している分、こちらが優勢だった。以下、馬を引いての抗戦にベタベタと成桂で迫り、数の攻めによって相手の美濃は崩壊に近づいていた。すると相手は桂を取りながら中段に竜を作ってきた。

(寄っているはずだが……)

 残りは互いに30秒ほど。右辺から金銀をはがす。囲いを失った玉は端から逃走を図る。残り20秒。竜が邪魔だ。僕は金を打ちつけて、竜を消しにかかる。同じく竜。同じく歩。そして玉が端から抜けて上がってきた。10、9、8……。駄目だ。詰みがない。

「時間切れ負け」

 竜へのアタックが遅すぎた。
 寄っているようで、時間的に届いていない。もしも、対抗形の戦いで、玉が端から上部脱出を図ってきたとしたら……。美濃の頭の歩を起点にして、すぐに頭金にたどり着けるだろう。

(囲いは寄せの最後の武器になる)

 ところが、相振り飛車の場合、飛車がさばけて敵陣に入っていると玉頭の勢力が手薄になってしまう。本局のように端を攻めたりしたら、攻めた後だからむしろみんないなくなっている。そうした陣では、上部脱出の可能性、脱出阻止の難易度もぐっと増すのだ。それが相振り飛車の終盤を戦う上で、重要なわっしょい問題である。

「寄っているだろう……」

 上部に美濃や銀冠が待っている対抗形の将棋と同じような感覚で寄せを乗り切ろうとすると、するすると上に抜け出されてあれっあれっという結末になってしまうことだろう。「寄せ」には盤面全体の陣が関わってくるものだと思う。







~反省は冷めない内に

 一局の将棋が終わるとすぐに感想戦が始まる。今までは駒を通してしか語れなかったものが、そこでは実際の声を通して語ることができる。後悔、疑問、反省、互いに素直な気持ちをぶつけ合いながら、有力な変化について形勢を議論する。実戦に現れたものよりも魅力的に感じられる展開もあって、許されるならそう進んだ世界もみてみたいと周囲に思わせる。

 感想戦は戦いが終わってからすぐにでも始めなければならない。一度解散してから始まることはないからだ。棋譜としては残ってもその時の心のあり様までは記録されていない。それはその場にいる大局者のみに理解できることであり、心と一体化した指し手の検証こそが重要であるに違いない。

 感想戦には終わりがない。玉が詰んだとしても何度でもやり直すことができるからだ。激しい斬り合いの直後でも、一局終われば互いに棋理を探究する仲間でもあるのだろう。

 将棋ウォーズに感想戦はない。負けて熱くなれば次に進むのが人情だろう。しかし、負けて熱い内にこそみておくべきことはあるのではないだろうか。

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「こんにちは」が言える

2022-05-03 03:11:00 | 短歌/折句/あいうえお作文
「こんにちは!」因みにドコモ? えーとこれ……
ケンタッキーのホットコーヒー

「こんにちは!」ティッシュを取れば話さなきゃ……
桜の下の報恩謝徳

「こんにちは!」餌のティッシュに食いつけば
切れないトークショーがはじまる

「こんにちは!」愛をくれたら返さずに
去るに去れないメルヘン通り

「こんにちは!」差し出した手の誘惑に
今日はきみ足を止めない

「こんにちは!」階段上の微笑みに
「こんにちは!」僕あいさつが好き

「こんにちは!」因みにドコモ? えーとその……
因みに僕はこれから pomera

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