2月21日
田中一村展
久しぶりに絵からほとばしり出る力を感じた展覧会でした。
絵が生き生きと生命感があります。花は画面からさらに外に伸びようとしているくらい、小さな虫は軽やかに飛び跳ねて出てきそうです。洗練されたシャープな線。写真で見るのと実際はこんなに違うのか、まるで音楽でも生で聴くのとレコードを聴くのと同じくらい違います。
まるでモダンアートのように洗練されています。田村一村の名前はよく聞くけれど、本物を見たのは今回が初めて、数年前佐川美術館で大きな記念展があった時に後から気がついて行きたかったと思い、何処かで展覧会をやらないかしらと思っていました。今回まるたけさんのブログで知り、会期が残り少なくなって今日しか日程が取れないと思い飛んで行きました。
ちょうどその頃だったか、多治見に住む父方のいとこが、もう何十年もあっていないのですが、奄美に田中一村の絵を見に1週間くらい行ってくると葉書をもらったことがありました。私も日曜美術館で見て、なんとなく気になる画家でもありました。
省略した線はマルケとかにもあるし、ヨーロッパにも風景画がいろいろありますが、日本にも世界レベルの素晴らしい画家がいると思いました。アンリ・ルソーの絵に似ているようなのもありますが、全然違うように思います。
彼の絵には自然の力を感じます。空想の世界ではないのです。ひな人形までが踊り出しそうでした。生き生きとしていて色もきれいでした。南画の時代も好きですが、奄美大島までの命にあふれる絵を見ることができました。
見ているときに最初は静かなブラームスの間奏曲が私の中で流れました。そのあとで浮かび上がってきたのがトスカの中のVissi d'arte vissi d'amore でした。厳しい状況の中で求め続けた高みにたどりつけたように思いました。
アダンの海辺は手前の小さな砂から遠くの永遠の世界までつながった絵で、じっと見ていると感動で目がうるんでしまいました。すごいインスピレーションのある絵です。彼の集大成なのでしょうか・・・ 絵を見て泣きそうになったのはあまりありません。静かに伝わってくるものが大きくて、他にも常設展や企画展がありましたが、もうこれ以上見れませんでした。
帰りに絵葉書を買って帰ろうかと思って取っていたら、結構たくさんになってしまったので図録を買いました。最近はものが増えるので買わないようにしているのですが、好きな作品を確認したいと思って薄いものだったので求めました。
家に帰ってお気に入りの柘榴の絵のタイトルを知りたくて、図録を見ても、出品目録にもなかったので美術館に電話して伺ったら、直接企画した松尾さんとお話して、特別出品なので図録には載らないし、目録には最後にまとめて出てることを教えていただきました。 タイトルは錦香嚢でこれが柘榴を意味していたのですね。それにしても個人蔵で出品していただいただけただけでも感謝しなければいけないのでしょうが、印刷にもしないなんてこういう素晴らしいものは個人で抱えていないでもっとシェアしていただきたいです。
YouTubeに日曜美術館らしいものがありました。私が見たのはこれだったのか覚えていません。こんな昔だったのかな? 改めて見るとストイックな生き方に驚き、こんな素晴らしい絵が生前ほとんど知られなかったというのが不思議に思いました。
Feb.21 2021 Chiba City Museum of Art