TBSが8月14日(土)に放送するスペシャルドラマ『歸國(きこく)』は、脚本・倉本聰+演出・鴨下信一という巨匠コンビによるもの。
物語は「8月15日終戦記念日の深夜、静まり返った東京駅のホームに、ダイヤには記載されていない1台の軍用列車が到着したことから始まる」という。
大いに楽しみだ。
かつてこの時期、テレビの“風物詩”というか“名物”は、脚本・向田邦子+演出・久世光彦による終戦記念ドラマだった。
向田さんが亡くなって29年。久世さんの逝去は4年前だ。
昭和35年にTBSに入社した久世さんは、後にドラマ界の鬼才といわれることになるが、文筆の才にも恵まれていて(この頃のテレビマンには多い)、小説からエッセイまで味のある作品が多い。
『遊びをせんとや生れけむ』(文藝春秋)は、昨年出版された“最後のエッセイ集”である。
よく晴れた春の朝、高層ビルに姿を変えたテレビ局を見上げると、幻のように現れて消えていった無数のドラマと、そのドラマに日々の情熱を注いで悔やむことのなかった無名の仲間たちの、それは、巨大な墳墓のように見える。白いピラミッドである。
――久世光彦『遊びをせんとや生れけむ』