碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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松尾スズキが赤塚不二夫を語る「こだわり人物伝」

2010年06月22日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

『日刊ゲンダイ』に連載中のコラム「テレビとはナンだ!」。

今週は、NHK教育「こだわり人物伝」の赤塚不二夫篇について書いた。

何より、松尾スズキさんに、赤塚不二夫を語らせたところが面白い。

以前プロデュースしたドラマで、 “カルト的悪漢”を楽しそうに演じてくれた松尾さん。

「こだわり人物伝」でも、いい味、出てました。


見出し:

赤塚不二夫を特集した「こだわり人物伝」は見どころ多し

コラム本文:

気がつけば、最近のNHK教育はかなり熱い。

「ハーバード白熱教室」「〝スコラ〟坂本龍一音楽の学校」など、よそでは見られそうもない好企画が続いているからだ。

よもや教育テレビでYMOの演奏が聴けるとは。

同時に既存番組も意欲的で、現在「こだわり人物伝」では赤塚不二夫にスポットを当てている。

〝語り手〟は演出・脚本家の松尾スズキ。

幼稚園以来の赤塚漫画体験をベースに、松尾流の独断と偏見による解釈(それでいいのだ)が続いて、今週水曜で最終回となる。

前回など赤塚の寿命を縮めた「酒」にも言及。

「漫画を破壊する快楽に追いつくために必要だった」としながら、「まじめ過ぎた」赤塚の素顔に迫っていた。

さらに破天荒な私生活、写真やテレビでの露出も、「自分自身をマンガのキャラ化した」結果と見る。

松尾もまた赤塚と同じく、「ずっとふざけ続けていたい」願望の持ち主だ。

だからこそ、「マンガで得た評価を蕩尽」するかのような赤塚の行動に当惑しながらも、愛さずにはいられないのだ。

そんな「バカバカしいことを本気でやる精神」は松尾にも受け継がれている。

実はこの番組本も笑える。何と太宰治とコラボさせている。

太宰は顎に手を添えたポーズが有名だが、赤塚もこれをマネして、太宰のポーズ写真とともにセットで掲載されている。

女性関係では太宰にも負けないという意味なのだ。

赤塚の面目躍如である。
(日刊ゲンダイ 2010.06.22付)