小説『美は乱調にあり』が書かれたのは、今から45年前の昭和40年。
瀬戸内寂聴さんが、まだ瀬戸内晴美だった頃だ。
先日、この本が著者88歳の米寿記念として、角川学芸出版から“復刊”された。
関東大震災の際、アナーキスト・大杉栄と共に殺害された伊藤野枝の伝記小説である。
伊藤野枝は、「青鞜」最後の編集者であり、亡くなった当時28歳。大杉は38歳だ。
初めて読んだ時、内容だけでなく、この「美は乱調にあり」のタイトルが鮮烈、衝撃的だった。
大杉の言葉を、瀬戸内さんがアレンジしたものだが、このたびの復刊版でも、表紙をめくった扉ページに「原文」が掲げられている。
美はただ乱調にある。諧調は偽りである。
――大杉 栄『生の拡充』