川本三郎さんの新著『いまも、君を想う』(新潮社)を読んだ。
一昨年、57歳で亡くなった恵子夫人(ファッション評論家)のことを綴った一冊だ。
雑誌「yom yom」に連載したものに、書き下ろしが加わっている。
タイトルそのままの内容で、読んでいて、川本さんの切ない気持ちが伝わってくる。
川本さんに初めてお会いしたのは1981年のことだ。
テレビの世界に入ったばかりの新人時代。
番組でのインタビュー取材で、確かテーマは武田麟太郎の小説「銀座八丁」。
同時代作家として、武田とダシール・ハメットとの比較、といった内容だった。
当時、高井戸にあったご自宅にお邪魔したのだが、その時、恵子夫人にも、ご挨拶程度だが、お目にかかっている。
81年といえば、川本さん自身は37歳、恵子さんは7歳下だからちょうど30歳ということになる。
その時の恵子さんについての記憶は、ひたすら「すらっとした美人」であり、我ながら情けない。
川本恵子としての最初の著書『ファッション主義』(筑摩書房)が出版されるのは、それから5年後のことだ。
そういえば、今から33年前、私が学生時代に出た川本三郎さんの一冊目『朝日のようにさわやかに~映画ランダム・ノート』も筑摩書房だったなあ。
『いまも、君を想う』には、若き二人の出会いや、結婚にまつわる回想があり、読みながら「いいねえ」と何度もうなづいた。
そして、その後の何十年間、恵子夫人の存在が、川本さんにとってどれほど大きかったか。
合掌。
おしゃれとは何か。一度、家内に聞いたらこんな答が返ってきた。
「たとえば、近くのポストまで手紙を出しに行くとするでしょ。そんな時でも家にいる時とは違う服に着がえる人のこと」
なるほどと思った。
――川本三郎『いまも、君を想う』