碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

「キネマ旬報」の巻頭特集は『告白』

2010年06月06日 | 本・新聞・雑誌・活字

「キネマ旬報」(6月下旬号)の巻頭特集は、映画『告白』である。


・表紙は『告白』の主演女優・松たか子。

・松たか子、共演の岡田将生、企画者・川村元気、そして中島哲也監督へのインタビュー。

・批評は、北川れい子、田中栄司、宮台真司の3本。


「この役をやることで、『どう思われるのだろう?』といった気持ちもありました。でも次の瞬間、『どう思われてもいいかな』と割り切れたんです」

そう語っていた松たか子の“覚悟”は、しっかり作品に反映されている。

<言葉の備忘録>9 湊かなえ『告白』

2010年06月06日 | 言葉の備忘録

湊かなえさんの『告白』が出版されたのは08年。

気がつけば、その評価は以下の通り大変なものになっていた。

「週刊文春08年ミステリーベスト10」第1位
「ミステリが読みたい09年版」第3位
「このミステリーがすごい!09年版」第4位
「09年本屋大賞」第1位

この4月、映画化を前に文庫化(双葉文庫)され、1か月で7刷と好調だ。


本当に悪いのは誰ですか?
――湊かなえ『告白』

映画『告白』は、早くも今年の“マイ・ベストテン”入り

2010年06月06日 | 映画・ビデオ・映像

映画館で。

最近は、エンドロールになった途端に席を立ち、ぞろぞろと出口へ向かって観客が歩き始めることが多い。

私のように、映画を観はじめた小学生時代から現在に至るまで、館内が明るくなるまで画面を見つめているタイプは、すでに少数派だ。

しかし、今日は違った。

クレジットが映し出されても、ほとんど立ち上がる人がいない。皆、席についたままで、何かを反芻、もしくは再確認するかのようにスクリーンに向き合っていた。

私もまた、「この作品、ちょっと、とんでもないところに行っているんじゃないか」と、そのインパクトに圧倒されていた。

5日の初日に観た映画『告白』である。


松たか子が演じるのは、4歳の娘を殺された、シングルマザーの中学教師だ。

自分が担任であるクラスの生徒の中に、その犯人がいるという。

幼い娘はなぜ死んだ、いや殺されたのか。

誰が、なぜ、どのように殺したというのか。

本当に中学生の犯罪なのか。

もしそうならば、この女性教師は、どうしようというのか。

複数の登場人物の、まさに“告白”のみで構成された、「小説ならばこそ」と思わせる、湊かなえの原作小説。

脚本・監督の中島哲也は、原作に従いつつも、原作を超えて、「映画ならばこそ」を実現してしまった。

女性教師、生徒たち、その親、周囲の教員たち。

彼らの人間像が、それも一筋縄ではいかない人間像が、一筋縄ではない映像と文法で描かれていく。

中島監督特有の“けれん味”たっぷりな、鮮やか過ぎるほどの映像表現が散りばめらていながら、全体は腹にずしんと響く重低音に満ちている。

また、家庭とか、学校とか、社会とかに関して、何か“分かった風”の問題提起や告発もないところが見事だ。

そして、松たか子。

この人の、主に舞台で鍛えてきた演技の凄みが、スクリーン全体を支配している。

ああ、長年、“松たか子礼賛”を続けてきて、よかった(笑)。

今回は、しみじみ、そう思った。

早くも、今年の“マイ・ベストテン”入り確実(なーんてね)。

ほんと、すごい作品が出てきたものだ。