碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

大学生が選ぶ「私のベストドラマ」

2012年10月12日 | テレビ・ラジオ・メディア

授業「メディアと文化(大衆文化論)」の秋学期は、ドラマ研究を行っている。

その中で、履修している2~4年生の学生たちに、アンケートを実施した。

お題は「私のベストドラマ」

これまでの人生の中で(と言っても20年前後だけど)、「私にとっての、この1本」というドラマを、その理由と共に挙げてもらったのだ。

結果は以下の通りです。

全体としては、かなりバラけて、1票のドラマが大多数でした。

そんな中で、7票とトップだったのが、松嶋菜々子、堤真一の「やまとなでしこ」(フジテレビ、2000年秋)


へ~、そうなんだあ(笑)。



大学生が選ぶ「私のベストドラマ」


やまとなでしこ(7)

踊る大捜査線(3)
ビューティフルライフ(3)

花より男子(2)
銭ゲバ(2)
流星の絆(2) 
篤姫(2)
ウオーターボーイズ(2)
僕の生きる道(2)
池袋ウエストゲートパーク(2)
美女か野獣(2)
有閑倶楽部(2)
結婚できない男(2)
ごくせん(2)
リッチマン・プアウーマン(2)
ラストフレンズ(2)
時効警察(2)
相棒(2)
新撰組(2)

お金がない
タイガー&ドラゴン
木更津キャッツアイ
ナースのお仕事
みにくいアヒルの子
ブレイキングバッド
14歳の母
君といた未来のために 
GOOD LUCK!
流転の王妃と最後の皇弟 
マイボス・マイヒーロー
愛という名のもとに
ホ・ジュン
恋のチカラ
龍馬伝
JIN―仁―
野ブタ。をプロデュース
ガラスの仮面
アテンションプリーズ
ライアーゲーム
ROOKIES
BOSS
SP
蒼穹の昴
女王の教室
恋のチカラ
フルハウス
荒川アンダーザブリッジ
マンハッタンラブストーリー 
春のワルツ
Mother
それでも生きていく
鹿男あおによし
プロポーズ大作戦
奥様は魔女
天才柳沢教授の生活
SPEC
HEROS
未成年
3年B組金八先生
妻の幸せ時代 中国
救命病棟24時
TRICK
ボーイズオンラン
官僚たちの夏
1リットルの涙
ユウキ 
ヴォイス~命なき者の声
バツ彼
家政婦のミタ
世界の中心で愛を叫ぶ
明日の光をつかめ


NHK朝ドラ「純と愛」のスタートダッシュ

2012年10月11日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

日刊ゲンダイに連載中の番組時評「TV見るべきものは!!」。

今週は、始まったばかりのNHK朝ドラ「純と愛」について書きました。


人間の表と裏が浮き彫りに
遊川ドラマの真骨頂!
NHK朝ドラ「純と愛」

NHK朝ドラ「純と愛」がいいスタートダッシュを見せている。その原動力は遊川和彦の脚本だ。

念願のホテルに就職したヒロイン・純(夏菜)が、規則を超えて宿泊客の要望に応じたことで上司から叱責される。

最初は我慢していたが、言い返さずにはいられない。「お客さんを笑顔にできなかったらホテルの負けじゃないですか!」「セクションだの経費削減だの、お客さんには関係ないっちゅーの!」。

青臭いと言われても純は真剣だ。しかし指導係の先輩に同意を求めると「犬は飼い主を選べない」とピシャリ。

さらに「自分はいつも正しいと思っている人間は成長をやめたのと同じです」と一喝される。そんなセリフの応酬から目が離せない。

遊川和彦のドラマは、いつも人間の表と裏を見せてくれる。一見ごくフツーの家庭がもつ「裏の顔」を、徹底的に描いてみせたのが「家政婦のミタ」だった。

ともすれば「建前」や「きれいごと」が並びがちな朝ドラ枠で、“本音ドラマ”を展開すること自体がチャレンジだ。

懸念材料はもう一人の主人公・愛(風間俊介)の存在だろう。愛と書いて「いとし」と読ませる青年だ。彼がもつ「顔を見れば、その人の本性が見える」という“特殊能力”を、視聴者がどう納得するか。

いずれにせよ、久しぶりにスリリングな朝ドラである。

(日刊ゲンダイ 2012.10.10)


映画『アイアン・スカイ』は、愛すべき珍品 !?

2012年10月09日 | 映画・ビデオ・映像

いやはや、びっくりな映画だった。

ティモ・ヴオレンソワ監督『アイアン・スカイ』。

あのナチスが、なんと「月の裏側」で生き延びていて、地球に大攻勢をかける、というお話なのだ。

奇想天外というか、大胆不敵というか、最新のVFX技術も駆使しての地球総攻撃である。

ヒトラーも草葉の陰で拍手喝采か(笑)。

全体としてはB級感たっぷりで、笑って見てもいいのだが、役者たちは大真面目で演じているし、見せ場も本気で撮っていて、それがまた奇妙な迫力となり、笑っていいのか、そうじゃないのか、やや迷っているうちに終わってしまったような・・・。




誰にもおススメの作品ではなく、でも、こういうのって後からじわじわ来たりするから、見ておくのもいいよ、とも思う。

なんとも侮れない1本なのだ。

ただ、ちょっとだけ言わせてもらえば、ストーリーが「もっとハネてもよかったんじゃないの?」ということになる。

もしくは、「もっとバカやってもいい」。

いや、「やって欲しかった」。


今年屈指の“愛すべき珍品”であることは間違いないです(笑)。




8日(月)のFM NACK5「夕焼けシャトル」に出演

2012年10月08日 | テレビ・ラジオ・メディア

8日(月)の夕方、
FM NACK5(79.5MH)に出演します。

「夕焼けシャトル」という番組で、
18時10分から
18時30分くらいの中の、
10分間ほどのコーナー
「今日の押さえDOCO!」

お題は
「NHK受信料をめぐって」
だそうです。

どんな
お話になりますか(笑)。

NACK5は
リスナーとしては
長いおつき合いですが、
出演するのは
初となります。

可能な皆さん、
よかったら
聴いてみてください。


映画「ボーン・レガシー」の疾走感

2012年10月08日 | 映画・ビデオ・映像

楽しみにしていた映画「ボーン・レガシー」を見てきた。

「ボーン」シリーズ3部作が大好きだし、ジェレミー・レナーも「ハート・ロッカー」以来のファンなので。

いわばマット・デイモンのシリーズのスピンオフのような、ライバルのような作品だ。

ジェイソン・ボーンに漂う憂愁というか、せつなさというか、情緒みたいなものが、こちらは希薄だったような気がする。

でも、本家とはまた違った魅力があったし、アクションも十分楽しめた。

なにより、前へ、前へ、の疾走感がいい。

世界各地を観光できたし(笑)。

その中のマニラは日本車、というかトヨタ車ばっかり。いっぱい売ったんだねえ。

たぶん、こちらもシリーズになるのだろう。

がんばれ、ジェレミー。





そうそう、映画の帰りに売店で、ついついこんなものを買ってしまった。

「踊る大捜査線」で人気が出たのが「カエル急便」。

そのグッズの一つ、「がま口サイフ型ポーチ」だ。




自分でも、入手してどうするってんだ、とは思う。

映画見て、パンフも買って、さらにフジテレビに儲けさせるのもシャクではある。

でも、欲しかったんだよなあ、コレ(笑)。






今週の「読んで、書評を書いた本」 2012.10.08

2012年10月08日 | 書評した本たち

最近、ずっと気になっていた、井上ひさしさん関係の本が届く。

アマゾン、便利過ぎ(笑)。

2日に1度は注文している。

特に深夜がやばい。

朝になって、冷静になれば、発注しなかったものまで頼んでしまう。

一種の「夜のラブレター」現象ですね(笑)。





今週の「読んで、書評を書いた本」は、以下の通りです。

天野祐吉:編 
『クリエイターズ・トーク~13人のクリエイティブ講義』 青幻舎

朝倉かすみ 
『幸福な日々があります』 集英社

片岡義男 
『洋食屋から歩いて5分』 東京書籍

高橋源一郎 
『非常時のことば』 朝日新聞出版


* 上記の本の書評は、
  発売中の『週刊新潮』(10月11日号)
  ブックス欄に掲載されています。

小熊英二『社会を変えるには』に、拍手!

2012年10月07日 | 本・新聞・雑誌・活字

ゼミの学生たちに、「最近、ハマっているもの」を挙げてもらったので、私も自分のソレを紹介しました。

それは、小熊英二さんの新著『社会を変えるには』(講談社現代新書)。

ここ数年で読んだ本の中でも、ベスト5に入る快著です。

新書なのに分厚く、1300円もします(笑)。

しかし・・・・

いま日本でおきていることは、どういうことか?
社会を変えるというのは、どういうことなのか?
歴史的、社会構造的、思想的に考え、
社会運動の新しい可能性を探る大型の論考


・・・・という、うたい文句に間違いはありません。

私が学生たちに薦めたのは、この本を読むことで、「今、自分がどこ
に立っているのか」を認識することができる、からです。

彼らには、読むだけでなく、ブックレポートが課せられました。

大学のゼミという「場」だからこそ、自分ひとりなら「読む予定のなかった本」を、半ば「強制的に読まされる」という“幸福”を、体験
できるのです(笑)。



<今日の特別ふろく>

2011年7月に、全国の書店で無料配布された、イースト・プレス発行の小さなリーフレットに、小熊さんの次のようなエッセイが掲載されていました。

今回の新著を読んで、あらためて思い出したので、ここに転載しておきます。

読んでみてください。


「生きる」ことと「自由」と

慶應義塾大学環境情報学部教授 
小熊英二

人間にとって「生きるということ」は、なかなかやっかいだ。食べて寝れば、とりあえず生きていられる。動物はそれでいい(よくないという説もあるけれど)。しかし人間は、それだけでは「生きている」という気持ちがしない。

それは人間が、社会をつくって生きている生物だからだ。「社会」というのが、家族であったり、村であったり、会社であったりするのだけれど、他人とのかかわりのなかで役割をにない、他人から必要とされているという実感がなければ、人間は「生きている」という気がしない。

ところが最近、それがむずかしくなってきた。社会のかたちがゆらいできたからだ。家族も、村も、会社も、かつてのようにしっかりした存在ではなくなってきた。社会がゆらいでいるから、人びとはそのなかで、はっきりした役割を感じることができない。それで人びとは、不安になり、いらいらしている。

どうしてそうなるのだろう。それは人間が、自由になりたいと思うからだ。家族や村や会社にしばられたくない。役割が決まっているのなんてまっぴらだ。根を断ち切って翼をもちたい。ほんとうは、根を断ち切ったら「生きている」ことはできなくなるのだけれど。

昔の人は、こういう問題をわかっていたから、人間が自由になることを禁じていた。それで、宗教やおきてで人間をしばったり、身分や性別で役割を変えられないようにしていた。ところが百年か二百年前から、それはいけないことだ、人間はもっと自由にならなければいかない、とされるようになった。

それはなぜだろう。そのほうが豊かになることがわかったからだ。人間は自由になりたいと思ったとき、その願いを燃料にして、とてもよく働く。家族から独立したい。村から出て行きたい。そういう願いは人間の努力をかきたてる。

一生が奴隷の身分だと決まっている人間は、鞭でたたかれなければ働かない。けれど、働けば未来を選べると思っている人間は、自分の意志で死にそうになるまで働く。

だから、どんどん人間を自由にすれば、どんどん世の中が豊かになる。この百年か二百年、そう思って人間は働いてきたし、政府もそれを勧めてきた。それはいまでも続いている。これからも続くかもしれない。人間が自由の不安定さに耐えられなくなるまでは。

こういう流れのなかで、あなたはどう生きたらいいだろう。いまさら誰も、はっきりした答えは与えてくれない。自分で自由に考えるしかない。

自分で考えるためには、本を読むのもひとつの方法だ。いろいろな人が、いろいろな考えや、社会の仕組みを理解するための視点を、本に書いている。いい本を選べば、人が何年もかけて考えたことや、調べたことを、読むだけで知ることができる。私はそのために本を読んでいる。あなたもやってみたらいい。

(「よりみちパン!セ」特別描き下ろしエッセイより)





学生たちの「最近、ハマっているもの」

2012年10月07日 | 大学

またまたゼミの学生たちに、「いま、ハマっている、面白と思っている、興味があるヒトやモノ」をヒアリングしてみました。


今、学生たちのアンテナに
引っかかっているもの
【2012年10月編】
(ランキングではなく順不同)



久石 譲「Summer」

20歳になったら突然来た「年金」のお知らせ

田村ゆかり(声優)

古着屋

スピッツの歌

ドラム(バンドで)

つけ麺(松戸「とみ田」、新小岩「麺屋一燈」がゴヒイキ)

殺陣(を習いはじめた)

ドラマ「ゴシップガール」

ドラマ「グリー」

TSUTAYAのネットレンタル

尖閣問題

インスタグラム(画像共有アプリ)

K-pop PSY(サイ)

桑田佳祐

ミスチル




<このブログで書いた関連記事>

ゼミの光景① 学生たちのアンテナ
2012年06月15日
http://blog.goo.ne.jp/kapalua227/e/209f7b1039a17bb6ddc2a98adb689ab8


学生たちのアンテナ 第2弾
2012年07月06日
http://blog.goo.ne.jp/kapalua227/e/cb3cde2512e909b344a1390dcaef383b



日本テレビ「芸能★BANG」は、視聴者に対する「裏切り」

2012年10月06日 | テレビ・ラジオ・メディア

日本テレビ「芸能★BANG ザ・ゴールデン!」に関して、放送倫理・番組向上機構(BPO)が意見書を出しました。


日テレにBPO意見書
「芸能★BANG」は視聴者裏切り

放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会は4日、日本テレビのバラエティー番組「芸能★BANG ザ・ゴールデン!」が「過剰な演出で視聴者をあざむくなど、放送倫理に反した」とする意見書を公表した。

番組は5月4日に放送され、「オセロ」中島知子(41)と占い師の騒動を特集。新聞のテレビ欄や番組内で占い師本人が登場するかのように告知したが、実際に登場したのは別の占い師だった。

意見書は、この演出が視聴者への「裏切り」だったと指摘。川端和治委員長は記者会見で「視聴者をダシに使い視聴率を稼ごうとした。視聴者に対する愛が根本的に欠けていた」と述べた。

(スポニチ 2012.10.05)



意見書を読んでみると、視聴者に対する「裏切り」「時間泥棒」という表現がある。

また、「視聴者を騙そうとした、そして、そのためにさまざまな演出手法を駆使したのだろう」としている。

日テレ側の説明にある「誤解」や「行き過ぎ」というレベルのものではないのだ。

さらに意見書は、同じ日テレの「news every.」による2件の不祥事にも触れ、「1年余りのあいだに3件の不祥事というのは過去に例がなく」と書いている。

確かに、ちょっと異常だ。

私もこの問題の番組を見ているので、BPOの検証委員の方々の
“呆れた感”、“うんざり感”が、行間に漂っているのがわかります(笑)。

さあ、日テレ側は、どう答えるのか。

さすがに無視はできないでしょう。


代々木で、「広報映像セミナー」

2012年10月06日 | テレビ・ラジオ・メディア

日本広報協会主催「広報映像セミナー」の講師を務めています。

毎年この時期に、代々木の国立オリンピック記念青少年総合センターで開催されているが、なぜかいつも青空だ。



そういえば、風にひるがえる日の丸、ってのも久しぶりで見るなあ(笑)。


参加者は、各地の自治体の広報担当者の皆さん。

午前中は、広報映像に関する座学。

午後は、グループワークによる「広報番組」の企画作成とプレゼン、そして講評。







普段はプレゼンを受ける側なのですが、今日ばかりは必死で企画作りに取り組んでいました(笑)。

今回学んだことが、何らかの形で役に立ってくれたらうれしいです。



週刊新潮で、「ピース又吉」についてコメント

2012年10月05日 | メディアでのコメント・論評

発売中の週刊新潮に、お笑いコンビ・ピースの又吉直樹さんに関する記事が掲載され、その中でコメントしています。


怪人「又吉直樹」が色づく「読書の秋」

うねる長髪に見え隠れする眼光は鋭く、その口元には歪んだ笑みを湛え、時に人の魂を吸う・・・。ハロウインの怪人、ではなく、読書の秋の案内人に引っ張りだこな、お笑いコンビ・ピースの又吉直樹(32)です。

「ピースは2年前にブレイク。当初は、社交的で派手な正統派イケメンの相方、綾部祐二さん(34)に対し、又吉さんは渾名が“死神”で、気持ち悪がられるキャラでした。それが徐々に、太宰治などの小説が好きという、内向的ながら知的な性格、実は美形という隠れイケメンぶりも知られ、人気が出たのです」(お笑い評論家・ラリー遠田氏)

今年8月に綾部が若貴兄弟の母・藤田紀子(65)との熱愛を報道され、“本気で熟女好き”認定されるずっと前に、又吉の読書好きぶりは認められていたのだ。

「08年には『お笑い芸人が古井由吉を好きな理由』を文芸誌『新潮』に寄稿していましたが、出版各社が注目したのはブレイク後。読書エッセイや書評、作家と対談、俳句に小説執筆まで彼の取り合いです。普段本を読まない人も彼をきっかけに買うので、部数が伸ばせるのです」(出版関係者)

10月3日からはニッポン放送の新番組『ピース又吉の活字の世界』(水曜夜8時~)も開始し、ラジオでも作家や小説を紹介している。

「趣味は読書という芸能人は多くても、本を血肉として自分の世界に取り込み、また本について自分の言葉できちんと語れるのは彼くらい。貴重な存在でしょう」(上智大学の碓井広義教授・メディア論)

今年4月からNHK・Eテレの経済番組『オイコノミア』司会に抜擢されたことでも箔がついたという。ただ、老婆心ながら助言を。

「今後もあくまで芸人・ピース又吉の立場で。どこかの芸人のように急に文化人や作家を気取り出すと、引かれてしまうかも」(同)


大衆ゴコロと秋の空。

(週刊新潮 2012.10.11号)


キャンパスの賑わい

2012年10月04日 | 大学

新学期が始まり、キャンパスが賑やかになった。

夏休み中の静かな構内もいいが、やはり大学には学生たちの姿があったほうが自然だ。

テレビセンターのスタジオで、「視聴覚教育」授業開始の記念写真(笑)。


15年続いた、「踊る大捜査線」

2012年10月04日 | 「東京新聞」に連載したコラム

東京新聞に連載しているコラム「言いたい放談」。

先日、「これで最後」を標榜する映画版を見てきたこともあって、放送開始から今年で15年になる「踊る大捜査線」について書きました。


「踊る大捜査線」15年

映画「踊る大捜査線 THEFINAL 新たなる希望」の観客動員が好調だ。ドラマの放送開始から十五年。支持され続ける理由を考えてみた。

まず新しい視点の警察ドラマだったこと。サラリーマンとしての刑事を描き、キャリアとノンキャリア、本庁と所轄など警察内部の対立や矛盾も見せてくれた。

次に魅力的な登場人物だ。織田裕二演じる青島だけでなく、柳葉敏郎の室井、深津絵里のすみれなどが、緩急自在な脚本を得て生き生きと動き回った。

映画版はそれまでの常識を覆して、テレビと同じスタッフが制作を担当したことが大きい。おかげで映画ファンを超えた、より幅広い層を取り込むエンターテインメント作品になった。また、テレビによる大量宣伝とネットの活用も功を奏した。

一方では辛口の評価もある。いわく、作家性を排した軽めの映画が増えた。ヒット自体が目的化した。「地味でも佳作」という映画を追いやった。公共の電波の「私物化」によるプロモーションなどだ。何よりその仕組みだけをまねた、安直な「ドラマの映画化」が横行したことは否めないだろう。

とはいえ、このラスト作品には十五年間の感謝を込めた大ネタ・小ネタが満載で、やはり楽しい。多くの人に「映画館で見る映画っていいじゃん」と思わせてくれたことが最大の功績かもしれない。

(東京新聞 2012.10.03)


この秋も、「授業はライブだ」

2012年10月04日 | 大学

秋学期が始まっている。

「メディアと文化」という授業は、おかげさまで(?)受講希望の学生さんが多い。

少人数教育の上智大において、定員120名と枠をいっぱいにしてあるが、3倍ほどの希望者がいるため、いわゆる「抽選科目」となっている。

なんと私のゼミの学生も抽選で落ちた(笑)。

だから、この教室にいる面々は「運のいい人」たちである。

「運のいい人」と接していると、こちらも運がよくなるので、なんとなく気分がいい(笑)。

例によって、最初の授業では、講義の概要(秋はドラマ研究です)を確認したり、ささやかなルールの説明を行ったりした。

ルールと言っても、別に難しくはない。

時間を守る(遅刻の幅によっては入室を遠慮してもらう)。

挨拶をする(私の授業は礼に始まり礼に終わるのだ)。

私語は慎む(友人・知人と話したいことがある人は外に出てもらう)。

などなど、まあ、当たり前のことばかりだ。

賛同できない人は、必修科目じゃないんだし、履修しなければいい。

「授業はライブだ」がモットーなので、このアナログであるがゆえに成立する貴重な時間と空間と関係性を大事にしたいだけです(笑)。

というわけで、秋学期スタートしました。

Nスペ「草間彌生の全力疾走」は人物ドキュメンタリーの力作

2012年10月03日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

日刊ゲンダイに連載している番組時評「TV見るべきものは!!」。

今週の掲載分では、NHKスペシャル「水玉の女王 草間彌生の全力疾走」を取り上げました。


精神科病院が“自宅”の前衛芸術家に
完全密着した力作

先週28日のNHKスペシャル「水玉の女王草間彌生の全力疾走」。今年83歳になる前衛芸術家を追った、人物ドキュメンタリーの力作だった。

ちなみに、昨年夏のBSプレミアム「世界が私を待っている~前衛芸術家草間彌生の疾走」は、ギャラクシー賞テレビ部門の「選奨」に輝いている。今回の番組はその後の1年半に密着。軸となるのは草間が挑む100枚の新作である。

アーティストが創作する現場を撮ることはかなり難しい。ましてや草間は精神科病院を“自宅”とし、車いすでアトリエに向かう状態だ。精神的にも肉体的にも不安は多い。彼女がカメラという“非日常”の存在を拒否しても不思議ではないのだ。

しかし、番組はほぼ完全に密着する。「私って、どうしてこう天才なんだろう」とつぶやきながら絵筆を握る草間がほほ笑ましい。

また創作と並行して、草間が積極的に関わる「ビジネス」の部分にまでカメラを向けていた。取材対象者と取材する側との信頼関係がなければできないことだ。しかも番組は“天才”草間に媚びてはいない。敬愛しながらも冷静に距離を保って撮っている。この距離感が実に見事だ。

かつて活動拠点のアメリカから志半ばで帰国した草間。今回ヴィトンとのコラボでニューヨークを訪れるシーンは“女王の凱旋”のようだった。疾走はまだ続きそうだ。

(日刊ゲンダイ 2012.10.03)